いつもの様子で玉座の間に入って来た桜に、俺も一瞬いつもの様な対応をしようとしてしまった。
が、ゲームの設定を思い出し、コホンと軽く咳払いをする。
「えー。あー。神聖桜花聖国の女王。今日はどの様な用事で来たのかな」
「結婚しよう! お兄ちゃん!」
「……」
ゲームだろうが、何だろうが関係ないとばかりに飛び込んでくる桜に俺は何と返したら良いか考えてしまった。
いや、まぁ桜が嬉しいのなら外交の一つとして結婚を考えるのも悪くはない。
ゲームの中だしね。
だがしかし。
だがしかしだよ。
他の子がどういう動きをしているか分からないが、ここで俺と桜が普段の様な遊びでゲームをやっても良いのか、そこを考えなくてはいけない。
折角楽しくやってたのに! みたいな気持ちになっちゃうと可哀想だからね。
だから、結婚は、互いの国の交流をもっと増やしてからにしようね。と言おうとした。
しかし、俺が口を開く前に、玉座の間の遥か上方にあったステンドグラスが割れ、何かが落ちてくる。
暗殺者か!? と思ったが、暗殺者が昼間にこんな目立つ登場をする訳がない。
あぁ、そうか。目立つ登場。
こういう事をやりそうな子を一人知っているな。
「ふーはーはーはーはー! ジーナちゃん! さんじょー!」
「……やっぱり」
「っ!? ジーナちゃん!? なんでここに!」
ガラスの破片と共に舞い降りたジーナちゃんへ、桜が叫ぶがジーナちゃんは理由を話さないまま棒読みの高笑いを続けていた。
その反応に俺はあっ、と察する事があり、傍に立っている外交に詳しい男に聞く。
「ここ最近滅んだ国はあるか?」
「一つあります」
「名前は?」
「スーパージーナちゃん大帝国です」
「やはりか」
おそらくは誰も何もしていないだろうに滅んでしまったスーパージーナちゃん大帝国の国民に祈りを送りながら、俺はジーナちゃんに問うた。
「ジーナちゃん。自分の国はどうしたの」
「え!? ぴゅーひゅるるーぴゅー」
ジーナちゃんは口笛を吹きながら視線を遊ばせ始めた。
その反応に桜も事情を察したらしく、頭を抱えながら天を仰いだ。
いや、しかし、アレだね。
このゲーム、俺も内政らしい内政はやってないし、割と自由に遊んでるんだけど、まったく衰退する気配がないんだよね。
そんなゲームなのに、滅ぼす事が出来るとは……逆に才能かもしれない。
「ジーナちゃん、もう最下位決定じゃん」
「まだ! まだジーナちゃんは生きてるもん!」
「生きてても国はもう無いんでしょ?」
「それは……そうだけど、ジーナちゃん、天才的なひらめきをしたのだ!」
「天才的なひらめき……?」
「そう!」
ジーナちゃんは満面の笑みで俺の方へ向き、元気よく言い放った。
「リョウ君! ジーナちゃんもこの国に入ーれーて! ねー? お願い。ジーナちゃんがお妃さまになってあげるから」
「はー!? ダメダメダメ! そんなの絶対に駄目だよ!」
「別にサクラちゃんの国じゃないんだから良いでしょ」
「お兄ちゃんのお妃さまには私が! なるの! だからダメ!」
何というか、何というかな争いが始まってしまった。
いや、別に良いんだけど。
とりあえず二名ほど国家を運営するゲームから別のゲームへと移行したようだ。
「陛下。いかがいたしましょうか」
「まぁ、そうだなぁ」
ひとまず桜との結婚話は保留。
国同士が仲良くなってからにしましょうという返事で良いだろう。
ジーナちゃんは、まぁ可哀想だしな。ウチで引き取るか。
頑張ってる他の子の国が潰れるよりも俺の国が潰れる方が良いからな。
「分かった。じゃあまず桜」
「……っ! うん!」
「結婚は前向きに考えるけど、まだ国同士はハジメマシテの状態だから、仲良くなってからね」
「うん!」
「ジーナちゃんは、ひとまずこの国で引き取るよ。あんまり自由に遊ばれると困るので、ちゃんと言う事を聞く事」
「はぁーい」
「えー」
「不満そうな声を出さないの。桜。一人で放り出したら可哀想だろ?」
「ぶー。分かったよ」
「うん。ありがとうな」
不満を漏らしながらも頷いてくれた桜に感謝しつつも、俺はこの場での話し合いを終わらせた。
そして、事件はこの一ヵ月後に起こる。
ジーナちゃんがある日突然騎士団を率いて、隣国を攻めよう! と言ってきたのだ。
そんな朝ご飯は卵ご飯にしよう! みたいな気軽さで言う言葉ではない。
しかし、騎士たちはやる気に満ちているし、まぁ、その辺の国なら負けないだろう。
という訳で、俺達は領土としては同程度の大きさである隣国へと向かう。
戦争をするにしても準備が必要だからだ。
「えー? とりあえずエイヤー! って攻めないの?」
「それをするとジーナちゃんの国みたいに周りの国にボコボコ殴られちゃうから」
「ナルホド」
「だから、外交をするんだよ」
俺は隣国の王へと不平等なんてもんじゃない条約を叩きつけた。
まぁ、政治に詳しい人たちが受ける訳がないって言ってた、とんでもない奴だ。
当然こんな条約を見た、隣国さんは怒りのままにこれを拒絶。
その場で俺達を殺そうとしたが、逆に俺とジーナちゃんで制圧する事となった。
武器の持ち込みをどれだけ制限しても、向こうの国の騎士が武器を持っている以上、それを奪えば良いだけの話だからね。
そして、俺とジーナちゃんと武道大会を勝ち抜いた精鋭で、玉座を制圧し、開戦から数分で終戦となるのだった。
国民にはあんまり犠牲を出したくないから、これ以上ないベストな方法だ。
「はい。これで終わりだ」
「えー!? おわりー!? つまんなーい」
「もう十分暴れたでしょ。あんまり国民を追い詰めちゃ駄目だよ……って、そうやってイケイケってやってたから国が滅んだんじゃないの?」
「あ」
「……」
「う、今日はこの辺にしておきます」
「よろしい」
俺は国が滅んだ原因に気づいてしまいショックを受けてしまったジーナちゃんと共に母国へと戻るのだった。
そして、何の前触れもなく隣国を勢力下に置いてしまった為、内政を担当している者たちからお説教を受ける。
「戦争をするのなら、戦争をすると何故言って下さらないんですか?」
「一晩明けたら領土が増えてるとか聞いた事無いんですけど」
「管理する土地が倍になったら、負担も倍になると想像出来ませんか?」
「「大変申し訳ございませんっ!!」」
俺とジーナちゃんは内政担当の者達にお説教をされながら頭を深く、深く下げた。
いや、お説教の内容はまったくの正論で何も言い返す事が出来ない。
しかし、何故俺達はゲームでお説教されているのだろうか。
ゲームとは?
「聞いているのですか? 陛下」
「申し訳ございませんっ!」
それから長いお説教がされ、突然の侵略はしないという誓約書まで書かされた。
いや、ゲームとは?
だが、しかし。
俺達が隣国を攻め落とした翌週、俺達は攻め落とした隣国とは反対側に位置する隣国から宣戦布告される事になる。
「かの国はァ! 隣国との争いで疲弊しているハズだ! 今こそ好機! 一気に攻め落として、我らの領土を増やす!」
俺は戦場で内政担当の者にチラッと確認をする。
ジーナちゃんも同じ様に無言でチラッと内政担当の者を見た。
「まぁ、攻められている状況ですからね。これは仕方ないでしょう。はぁ……また仕事が増える」
「いよーし! やろうか! ジーナちゃん!」
「さんせーい!」
「愚かなッ! 我らの軍勢に対してたった二人!? 舐められたものだ!」
俺とジーナちゃんはひとまず二人で突撃すると騎士達を後方に置き去りにしつつ大軍に向けて走り始めた。
現実では絶対にやらない行為だが、まぁゲームは楽しんでこそだからな。
「じゃあ、ジーナちゃん! 楽しもうか!」
「はーい!」
そして。
俺達はこの日、新たなる領地を手に入れたのだった。