異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第123話『牧場で育てられた魔物(ともだち)

 桜の思惑を知った俺は、なるべくココちゃんを楽しませようと考え、牧歌的なゲームを遊ぶ事にするのだった。

 農場物語、という名のこのゲームは、大人しい魔物を育て、出荷するまでを楽しむゲームである。

 まぁ、無理して売らなくてもゲームを続ける事が出来る為、あくまでも牧場で育てるのがメインのゲームといえるだろう。

 

「まてー!」

「こっちは行き止まりだ。角うさぎ」

「っ! つかまえた!」

「うまいぞー!」

 

 逃げ回る角うさぎを追いかけて、何とか捕まえたココちゃんは、暴れる角うさぎを抱えながら角うさぎの囲いに向き直る。

 ほぼ放し飼いであるこの場所では、角うさぎやら、イエローチキンやら。

 大人しく、それなりに肉が上手い魔物が飼育されていた。

 

 まぁ、大人しいとは言っても、他の凶悪な魔物に比べたらというだけで、こいつ等も十分に危険な訳だが。

 ゲームだし。

 怪我をするような事は無いため、その辺りは安心ともいえる。

 

「じゃあ、この子をお友達の所につれていくね」

「あぁ。頼むよ」

「あい」

 

 それからココちゃんは角うさぎの重さに体を振り回されながらも、何とか角うさぎを囲いの中に連れてゆくのだった。

 そして、仲間の元へ戻った角うさぎは楽しそうに仲間と共に飛び跳ねていた。

 

「お友達と遊んで、楽しそうだね」

「うん。でも、うさぎさんも増えちゃったし、少し狭そう」

「なら、また改築しようか。囲いを大きくするんだ」

「そうだね……でも、工夫しないとまた逃げちゃう」

「うん。じゃあ、次はどうしようか」

 

 俺はココちゃんに微笑みながら問いかける。

 

 実際、俺の中で答えは出ているが、ココちゃんが自分で考えたいというので、俺はあくまで手伝う係だ。

 学ぶ機会を失うのは良くない事だからね。

 なんでも挑戦してみれば良いと思う。

 

「んー、と。えっと。先に柵を外しちゃうと、広げている間に逃げちゃうから、先に外側を囲む、とか?」

「やってみようか」

 

 ココちゃんが不安そうに俺へ視線を送りながら提案した事項に、俺は頷きながら道具を準備する。

 これから柵を広げるのだ。

 

 とは言っても、まぁ、ゲームである為、現実とはやり方がだいぶ違う。

 まずはゲーム内の木箱を操作して、木材を取り出す。

 この時点で、木材は柵に使えるような状態となっている為、これを組み合わせて柵を作るという感じだ。

 簡易的な大工さん体験ゲームみたいなものだな。

 

 そして、柵を外すときも、地面に刺さった柵を引っこ抜くと、柵が木材に戻り、再び保管できるという訳だ。

 うんうん。

 分かりやすく感覚で出来るし、子供向けで良いゲームなのでは無いだろうか。

 なんて、あんまりゲームに詳しくない俺が言うのもなんだがな。

 

「じゃ、まずは周りに柵を作ろうか。どういう感じにする?」

「んーと、じゃあ、じゃあ。今の柵から三歩くらい大きく作る感じ?」

「了解」

 

 俺は今の柵から散歩程外に歩き、柵を地面に埋めた。

 そして、その横に、横にと柵を埋めて広げてゆく。

 しかし……。

 

「うん。これ以上は駄目だね」

「え?」

「もう木が無いみたいだ」

「そうなんだ……また木を取ってくる?」

「それでも構わないけど、新しく木を持ってくると、柵を広げるのはまた何日か後かな」

「うーん。うーん。でも、それだと、ウサギさん達ずっと狭いよね」

「そうだね」

 

 ココちゃんは木材が不足していたという事実に悩み、何か良い案は無いかと考える。

 考えて、考えて……そして、一つの名案を思い付いた。

 

「っ! おにいちゃん!」

「何かいい案でも思いついたかな?」

「うん。ここのね。この柵の端っこからね。向こうの端っこまでつなげて欲しいの」

「分かったよ」

 

 俺はココちゃんに言われるまま、既にあるウサギの柵にくっつける形で柵を地面に埋め、さらにそこから続く様に柵を作っていった。

 今度は前ほど大きくない半円であった為、問題なくココちゃんが指定した場所にくっつける事が出来る。

 

「こんな感じかな」

「ありがとう。じゃあ、後は、ここの柵を抜けば」

「うん。ウサギさんの部屋が大きくなったね」

「うん!」

 

 嬉しそうに笑うココちゃんに、俺も微笑みながら、飛び跳ねるウサギたちを見やった。

 まぁまぁ元気な物である。

 広がった空間で、楽しそうに飛び跳ねていた。

 

「やはり畜産もアリかな」

「ゲームじゃなくても、育てるの?」

「そういうのもやってみて良いかな。って感じかな」

「なら、なら! ココ、がんばる!」

「それは助かるなぁ」

 

 なんて、ココちゃんに笑いかけながら、俺はやはり無理かと心の中で畜産を諦めていた。

 いや、だって。

 このゲームの牧場ですら、ココちゃんは一匹も出荷してないんだよ?

 

 現実世界で畜産したい理由は食べる為だし。

 

「えへへ。ゲームだけじゃなくて、みんなに会えるかも……うーちゃん、ぴょんちゃん」

 

 ウサギの近くでしゃがみ込んで、嬉しそうに、楽しそうにウサギへ話しかけているココちゃんの前で解体なんて出来ないだろう。

 しかもそれを食べさせるって、どんな拷問なんだ。

 これはなし。

 

 畜産計画はなしだな。

 あまりにも人の心が無い。

 

 が、まぁ……なんかペットは飼ってみても良いんじゃないだろうかという気持ちだ。

 ココちゃんが魔物とは言え、小さな生き物と触れ合う事に喜びを感じている様だし。

 情操教育とかに動物は良いと聞くし。

 

 なんか安全そうな魔物が居るかどうか確認するかな。

 という気持ちと、とりあえずこのゲームは定期的に遊ぶかという気持ちを同時に感じながら俺は次の囲い拡張に備えて、近くの森林に木々を伐採に向かうのだった。

 

「じゃあココちゃん。俺は向こうの森林に木々を取りに行ってくるよ。もうだいぶ数も少なくなってきてるしね」

「っ! なら、ココも行く! みんなのご飯を取りに行く」

「そうだね。じゃあ一緒に行こうか」

 

 それから数日、俺とココちゃんは一緒に森林へと向かい、木の伐採や、地面に落ちている植物を拾って農場へと戻る。

 という生活を繰り返し、角うさぎだけでなく、別の魔物の囲いも広げてゆくのだった。

 

 ここでこのゲームの素晴らしい部分に気づいたのだが、魔物を一切出荷せず、育て続けている場合、野生に返すという選択肢が選べるようになったのだ。

 この時点で、ココちゃん牧場は、食用の肉を育てる場所から、魔物の個体数を管理する世界国家連合議会直下の農場へと変わり、森へ返す個体数によって、出荷した時以上の金を貰える様になった。

 

 これで、安定した金銭が得られる様になり、別の魔物を飼ってみたり、という様な事も出来る様になったのである。

 残酷な事が出来ない子供でも遊び続ける事が出来るという、心優しいゲーム開発者によってココちゃんの心と、農場の財政は救われることとなった。

 ありがたい事だね。

 

 しかし、まぁ。

 それはそれとして、どうやっても別れという物は来てしまうため、それは仕方のない事の様に思う。

 

「ココちゃん」

「……うん。わかってるよ」

「無理しなくても良いんだよ」

「でも、みんな、外で暮らす方が良いんだもんね」

「まぁ……そうだね」

 

 ココちゃんは今日、森に返す予定の角うさぎを抱きしめたまま寂しそうに地面を見つめる。

 まぁ、こんな状況でも角うさぎは一切ココちゃんに懐くことなく暴れている訳だが……。

 

 それでもココちゃんにとっては心が張り裂ける様な悲しい別れだ。

 最後のぬくもりを十分に感じてから、角うさぎを地面に下ろした。

 

 何とも涙があふれてしまう様な光景だが……角うさぎは何の感傷もなく飛ぶような速さで森の中へ駆けだして行くのであった。

 もう少しなんか無いもんか。

 あれだけココちゃんが心を砕いていたというのに。

 なんて、思いながらも、まぁ現実もこんなもんかと俺は切り替えて、ココちゃんに帰ろうと話しかけた。

 

「うん……ぴょこちゃんも元気でね」

 

 ココちゃんは、名残惜しそうに森へ背を向けて歩き出そうとした。

 が、その瞬間、地面を駆ける足音が聞こえ、二人同時に振り返る。

 

「ぴょこちゃん?」

「花かな」

 

 角うさぎは、ココちゃんの目の前に素朴な花を一本落とし、ココちゃんが拾ったのを見ると、また凄い勢いで森に駆けだしてゆくのだった。

 

「ありがとう……! ぴょこちゃん……!」

 

 何とも分からない物だ。

 生き物という奴は。

 

 しかし、ココちゃんが涙を流しながらも、嬉しそうに笑っていたのはとても良い事だと思う。

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