異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第125話『彼女たち(みんな)の目標』

 年越しパーティーが始まり、フィオナちゃんの話から何となく来年の話が始まった。

 その為、いい機会だし、俺も来年の目標何かを言ってみる事にした。

 前の世界ではそういう話も年越しの時にしていたし。

 

「じゃあ、ちょうどいいし、来年の目標とか話してみる?」

「それは……もしかして、達成できないと、何かが起きたりするんですか?」

「いやいや。そういう決まり事とか、厳しいルールじゃなくてさ。自分の中に持ってる目標みたいなモンだよ。こういう場所で宣言する事でなるべく達成しようっていう気分になるでしょ?」

「確かに」

 

 ミクちゃんの疑問に応えながら、他に質問がある子は居るかなと周囲を見渡す。

 が、みんな何となく趣旨を理解したようだ。質問は無いようだった。

 

 そして、誰よりも早く桜が手を挙げる。

 

「はい! 私の目標はお兄ちゃんとイチャイチャする事です! 結婚もする予定です!」

「おぉー!」

「けっこん!」

「まぁ、どんな目標にするか決めるのは自由だからね。好きな目標を決めてくれればと思うよ。達成できるかどうかは分からないけどさ」

「まぁ、あくまで目標だもんね」

「達成するもん! 人生の目標です!」

「そ、そう……」

 

 フィオナちゃんが桜の目標に微妙な反応を示しながら頷く。

 そして、グッと両手を握りしめて自分の目標を語り始めた。

 

「わ、私の目標は、冒険者ランクを一つ上げる事! です! そして! いつかは凄腕冒険者になって、英雄って呼ばれる様になって! 空の向こうにいるお父さんとお母さんに誇れる私になる事です!!」

「おー!」

「いいね」

「がんばれー!」

 

 フィオナちゃんが立ち上がり、コップを上に掲げながら叫んだ目標に俺たちは拍手をしながら称える。

 こういう場で大きな目標を言うというのは中々に緊張する事だ。

 それだけに、フィオナちゃんの覚悟は凄い事であった。

 

 そして、フィオナちゃんに続いてリリィちゃんも立ち上がって言葉を続ける。

 

「私は、あんまり目標とか無いけど……来年は、もうちょっと色々な事で一歩進んでみようかなと思います。その、力の話とか」

「力の話? 何の話? リリィ」

「え! あ、その、それは……!」

「それは?」

「えと、その……! 新しい魔術を覚えてみようかなって!」

「へー、そうなんだ! リリィも頑張り屋さんだね。私も頑張らなきゃ!」

「あー、アハハ。ソウダネ」

 

 フィオナちゃんに何も言えず頷くリリィちゃんを見て、来年もまだまだ厳しそうだななんて思ってしまうのだった。

 

 いやいや。

 目標に掲げた以上、頑張れるはずだ!

 リリィちゃんは強い子なのだから。

 

 たぶん! きっと!!

 

「じゃー、ジーナちゃんも思いついたし、もくひょー!」

「……」

「ジーナちゃんはねー。セオスト以外の場所にも遊びに行く事かなー」

「それは楽しそうだね」

「そ! いいでしょー」

「なら、私はジーナさんが各地で迷惑を掛けない様に見張り、災害を起こさない事が目標です」

「えー!? 付いてくるのぉー!?」

「当然でしょう。私がこの家に居るのは半分くらいジーナさんを見張る為なんですからね」

「うぇー。メンドー」

「いつか、貴女が人並みに落ち着いた時、私は離れる事を約束しましょう」

 

 ジーナちゃんの目標に喰いつく様な反応を示したミクちゃんにジーナちゃんは心底嫌そうな顔をした。

 が、まぁそこまで嫌がっては居ないのだろうと思う。

 何となくであるが。

 

 同じ家に住んで、同じご飯を食べて、同じゲームで遊び、同じ様に寝る。

 そういう生活で、いつまでも敵対心を持つ事は難しいだろう。

 だから、二人はもう友達の様な関係になっているんだろうな、と何となく思った。

 まぁ、友達は友達でも、喧嘩友達だろうが。

 

「じゃ、じゃあ、ココは、食堂でのおしごと、がんばる!」

「うん。良い目標だね。応援してるよ」

「うん!」

「お姉ちゃんも応援してるよ! いっしょに頑張ろうね!」

「ありがとう!」

 

 そして、ココちゃんが先ほどの話から繋がる目標を語り、いよいよ俺の番となった。

 まぁ、俺の目標は決まっているんだけれども。

 

「俺は、神刀の力を今よりもずっと強く使う事だね」

「力?」

「そう。どうやら神刀にはそれぞれ名前があるらしくてね。その銘を知って、もっと強くなりたいんだ」

「……良いと思う」

「私はそこまで賛成できないけど、お兄ちゃんの目標だし。反対はしないよ」

「リリィちゃん、桜。ありがとう」

 

 神刀に詳しそうな二人に肯定され、俺は安心しながら頷いた。

 

「じゃあ、これでみんなの目標も言い合ったし。それぞれが目標に向かって頑張りながら、他の子も困っている人が居たら話を聞いたり、手伝ったりしていこうか」

「「はーい」」

 

 そんなこんなで真面目な話も終わり、俺たちは焼き鳥サンドを食べたり、ジュースを飲んだり、唐揚げを食べたり、お肉サンドを食べたりした。

 

 しかし、お肉サンドか。

 こっちは種族の名前じゃないんだね。

 まぁ、桜たちが付けた名前に不満なんか無いけれども。

 

 そして、俺たちはかなり種類と量のあるテーブルのご飯を食べていたのだが……ふと、例のアレがない事に気づいた。

 

「あれ? フィオナちゃん。そういえばケーキは出てないけど、大丈夫?」

「ふふふ。問題なーいですよ。あれはご飯を食べ終わってから出すつもりだったので!」

「そっか。なら良いんだけど……みんなのお腹具合は大丈夫かな。結構量あるけど」

「あ」

「どうせだったら無理して食べるんじゃなくて、美味しく食べられる時に食べた方が良いよね」

「た、確かに! ちょっと準備してきまっす!」

 

 キッチンに走ってゆくフィオナちゃんを見送りつつ、それとなく桜へと視線を向ける。

 それから声には出さない様にしながら、視線で例のアレは? と問うた。

 

 桜はすぐに察してくれ、何度か頷いてくれたため、俺はココちゃんへと向き直る。

 

「じゃあココちゃん。部屋に行って取ってこようか」

「取ってくる? ……? っ! う、うん!」

 

 ココちゃんは一瞬何のことを言われているのかと分からない様子だったが、すぐに思い出し大きく頷いた。

 そんなココちゃんと共に俺は図鑑の置いてある二階へと向かう。

 

「悪いね。俺たちもちょっと忘れ物があったから少し外すよ」

「わすれものー?」

「そ。忘れ物。大切な、ね」

 

 首を傾げるジーナちゃんに笑いかけてからココちゃんを追いかける。

 そして、二階にある俺の部屋に入ると、テーブルの上に置いてあった図鑑を手に取った。

 

 ココちゃんは図鑑を開いて、紅い宝石のページを開くと、宝石の絵を指で触って空中に映し出すのだった。

 

 何度見ても凄い技術だと思うが、紅く大きな宝石は、洞窟の中でココちゃんが掘り起こした時の大きさのまま空中に浮かんでいる。

 触れることは出来ないが、その美しさを鑑賞する事は出来る為、ゲームが終わってからも楽しめる素晴らしい物だなと思うのだった。

 

 良い買い物をした。

 

「どう? 大丈夫そう?」

「うん、。きれい」

「良かった。じゃあ下に行って、みんなにも見せてみようか」

「うん!」

 

 ココちゃんは図鑑を大事に抱きかかえて、ゆっくりと慎重に歩き始める。

 部屋を出る時も階段を降りる時も、本が傷つかない様に。

 

 そして、俺が開いたリビングの向こう側に足を踏み入れた瞬間、天井から大量の花がココちゃんに降り注いだ。

 俺はココちゃんがビックリして図鑑を落とさないかどうか見ていたが、無事抱えたままであった。

 

「わ、わわ……なに?」

「ココちゃん。実は黙ってたんだけど、今日はね。年越しのパーティだけじゃなくて、ココちゃんへのありがとう会も一緒に開く予定だったんだよ」

「ありがとう、かい?」

「そう。今年、ココちゃんにはいーっぱい手伝ってもらったから、お礼を伝えたいなって思って、色々と用意したの」

 

 桜の言葉に頷き、キッチンからフィオナちゃんが大きなケーキを持って現れた。

 ケーキの上には先ほど桜が言った年越しパーティとココちゃんありがとうの文字が描かれていた。

 

 パーティ本番が始まる合図である。

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