先ほどまでの年越しパーティとは違い、椅子の中央に座ったココちゃんは、緊張した様子で図鑑を抱きしめていた。
目の前にはケーキがあり、他にも色々な贈り物がテーブルの上に置かれている為だ。
「ホントはさ。色々とプレゼント用意しようかと思ったんだけど、雪で外に出られなかったから、演出・食べ物を中心にしてみました!」
「……」
「どうかな? ココちゃん」
「うん……! うれしい、けど……」
「けど?」
「ココは、あんまりすごいの用意出来なかったから……」
「え!? ココちゃんも用意してくれたの!?」
桜は驚き、大きな声を上げ、俺の方へ視線を向けた。
俺はそんな桜に頷き、ココちゃんに話しかける。
「大丈夫。ココちゃんのプレゼントは凄いプレゼントだよ。ほら、あんなに大変だっただろう? 見せてあげようよ」
「う、うん……!」
ココちゃんは緊張しながらも、テーブルに図鑑を置き、開いた。
そして、紅い宝石のページで宝石を触り、映像を空中に映し出す。
「わぁ……!」
「すご」
「大きいねー!」
「コレ、ココちゃんが見つけたの!?」
「う、うん。がんばった、お兄ちゃんにも手伝ってもらって」
「と言ってるけれど、俺は灯りを付けてただけだから、ココちゃんが一人で掘ったんだよ」
「すごーい! すごいよココちゃん!」
「え、えへへ」
桜に抱き着かれ、左右に揺れながらもココちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
そんな姿に俺も何だか穏やかな気持ちになりながら、頷く。
ココちゃんがテーブルの中央に浮かせた宝石は、周囲の飾りから発せられた光を四方に反射して、とても美しく輝く。
その輝きは、みんなの誰かを想う気持ちが見せている様で、俺は嬉しくなってしまうのだった。
「さて。じゃあココちゃんの凄いプレゼントも見せてもらったし。みんなのプレゼントも順番に出して行こうかー!」
「おー!」
ココちゃんを抱きしめていた桜が一度ココちゃんから離れ、笑顔のまま周囲に言葉を投げる。
そして、一番最初に応えたのはフィオナちゃんであった。
「私からのプレゼントはー! これ! ケーキだよ!」
「すごい」
「へっへっへ。まぁ、ココちゃんにだけーって訳じゃなくて、みんなになのが申し訳ないけど」
「ううん! ぜんぜん! ココ、すごくうれしい! みんなと一緒で」
「良かった。じゃあ切り分けちゃうから、みんなで食べようね」
「うん!」
フィオナちゃんは満足そうに笑い、キッチンの方へケーキを持って歩いて行った。
そんなフィオナちゃんを見送りつつ、立ち上がりながら声を上げたのはジーナちゃんであった。
「じゃ! 次はジーナちゃんね! ジーナちゃんのはすんごいよー!」
ジーナちゃんはココちゃんを笑顔で見つめ、両手をパン! と勢いよく叩く。
乾いた音が室内に響き渡った瞬間、飾りの灯りと照明の灯りが全て消え、部屋が暗くなった。
「っ!?」
「だいじょーぶ。こわくないよ。もうちょっとで降りてくるからね」
「おりて、くる?」
ジーナちゃんの言葉に俺とココちゃんは天井へと視線を向けた。
そして、ジーナちゃんの言葉の意味を理解する。
そう。天井に小さな光が生まれ、それがふわふわとゆっくり下に降りてきたのだ。
それは雪にも少し似ていて、ココちゃんがテーブルの上に浮かべた宝石の上にも降りてきて、淡く輝いていた。
降りてきた光は、リビングのあらゆる場所に降り積もり、そこで淡く光っている。
が、俺たちが降れたとしても消える事はなく、そのままそこで光り続けているのだった。
「これも魔法?」
「そうだよー。綺麗でしょー。後はー部屋の灯りは消したまま飾りの灯りをつけると!」
「おぉー。ちゃんと部屋の中が見えるね」
「でしょ? ちょーっと暗いけど、これで雰囲気があるのだ!」
「すごい! ジーナちゃん! すごい!」
「なはは! まぁージーナちゃんは天才だからねー」
ココちゃんに褒められ、ジーナちゃんは後ろ頭を撫でながらどこか気恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに笑う。
幻想的な光景の中にある、心が温まる様な光景だった。
そんなジーナちゃんの後に続いたのは、やはりというかミクちゃんであった。
「こほん。では、私からはこれを送らせていただきます」
「これは?」
ミクちゃんは一枚の書類をココちゃんに手渡して、頷く。
「えー? 紙一枚? ケチンボだねー」
「何がケチな物ですか。私がこれを用意するのにどれだけの覚悟があったか!」
「かくごー?」
バカにした様に笑っているジーナちゃんをそのままに、俺はよく分からないと渡してたココちゃんの代わりに読む。
「通行許可証及び滞在・居住許可証。世界国家連合議会 災害対策局局長 ミク」
「……?」
「えーっと、だね。つまり、これがあればココちゃんはどこでも行けるし、どこでも住めるって事なんだ」
「それって、すごいの?」
「うん。多分凄い事だよ。世界のどこにでも行けるなんてさ。でも、それ以上に……」
「この紙切れが一枚あれば、もうココさんを誰もイジメる事が出来ないという意味でもあります」
「いじめられない……の?」
「えぇ。もしココさんに意地悪するような人が居たら、私が懲らしめるという意味ですからね。世界の誰も、貴女を害せない」
「えー。でもおチビちゃんが仕返しに来るだけじゃなー」
「何度も言ってますけど! 私は世界でもかなり力がある方の人間なんですよっ!」
いつもの様にミクちゃんとジーナちゃんの口喧嘩が始まるが、俺はそれを流しつつ、大切な紙をココちゃんの手に戻した。
しかし、ココちゃんはどこか不安そうでもある。
「どうしたの? ココちゃん」
「ココ、嬉しいけど、これ、要らないかもしれない」
「そうなの?」
「ぷぇー。言われてんのー」
「貴女は黙っててください! ココさん。別に押し付ける訳じゃないですが、これはただの便利な物ですよ。そんなに難しく考えなくても」
「ちがうの。ちがくて、ココ、お兄ちゃんたちと一緒に居たいから、ココだけどっかに行くのはイヤで……その」
「あぁ、そういう事ですか」
「それなら心配いらないよ。ココちゃん」
「え?」
「この紙はね。ココちゃんがずっと俺達と一緒にいる為に必要な紙なんだ」
「そう、なの?」
「そうだよ。例えば、俺と桜がどこか遠くの国に遊びに行くときにも、これがあればココちゃんも一緒に行けるんだ。家でお留守番してなくても良いんだよ」
「っ!」
ココちゃんはミクちゃんのプレゼントがどれだけ凄いモノか理解し、ミクちゃんへと視線を向けた。
そして、紙をくしゃくしゃにしない様に気を付けながら優しく手で持って、静かに頭を下げる。
「ありがとう……! ミクちゃん」
「良いんですよ。気にしないで下さい。これはココさんが頑張っていたからこそ、手に入れる事が出来たモノですから」
「……うん!」
「だから、これからも正しくあって下さい」
「わかりました!」
「ぷへー。固いのー。あげるー! アリガトー! で良いじゃんね」
「そう考えるのは貴女だけです。こういう空気が好きな人も居るんですよ」
「ハイハイ。ソウデスネー」
ジーナちゃんのバカにしたような言い方に、イラっとしたのだろう。
ミクちゃんは怒りが滲んだまま、やや無理のある笑顔でココちゃんを見据える。
「良いですか? ココさん。決して、こういう人になってはいけませんよ。ジーナさんの様な、いい加減な人には」
「いーい? ココちゃん。くれぐれも、こーんな固い子になっちゃ駄目だからね。自由が一番」
「何が自由ですか! 自由とは秩序の上に作られるモノですよ!」
「自由って言うのは、自由って意味なんだよー!」
どったんばったん。
元気に大騒ぎしている二人に俺はため息を吐いた。
が、それはそれとして、ココちゃんが素敵な贈り物を貰えて良かったと、心からの喜びを得るのだった。