異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第136話『気高き女王(さくら)に捧ぐ』

 戦争を始める前に、自国の問題を全て解決する事にした俺は、ひとまず吸収した国の姫君を自国へと返した。

 現状のまま桜を受け入れた場合、とんでもない問題になると考えたためだ。

 

「えー。全員返しちゃったのぉー?」

「あぁ。ロクな事にならなそうだったからね」

「ちぇー。ザンネーン。サクラちゃんが見たらきっと面白い事になると思ったのに」

「悪い子だね」

「とーぜん! ジーナちゃんは悪い魔法使いだからね」

 

 嫌な所まで悪い子をやらなくて良いと思いながらも、解決した後だ。

 俺はツッコミを飲み込んで、深く息を吐いてから騎士団長を見やった。

 

「この問題はとりあえず良い。それで? 外の状態はどうなっている」

「ハッ。神聖桜花帝国が動き始めました。おそらくは同盟国を作るためかと思われます」

「同盟国ねぇ」

 

 遂に動き出したかと俺はジーナちゃんと視線を交わしながら頷く。

 これからの行動は既に決まっている。

 

 桜の国を攻めるのだ。

 あんまり気は進まないが。

 

「では、我らの前に同盟など不可能だという事を教えてやろうじゃないか」

 

 あんまりやる気ないけど。

 とりあえずやらないと悪い国になれんし、やるしかない。

 

「では陛下」

「あぁ。三日後、我らの力を見せつけてやろう!」

「ハッ!」

 

 騎士団長のどこか嬉しそうな声を聞きながら、俺は大いに満足だとばかりに頷いた。

 別に満足はしてないけれども。

 

 という訳で、俺たちは三日の準備を終えて、桜の国へと出撃する事になった。

 まぁ、俺はジーナちゃんと共に先行して桜の国へ向かっている訳だが。

 

「とうちゃーく」

「ふむ。ここが神聖桜花帝国か」

「っ! なんだ、貴様らは!」

「まさか」

「そうそのまさかよ! この世界を支配する男だ」

「女王陛下には近づけさせんぞ!」

 

 突如として王城の前に現れた俺たちに、驚きつつも冷静に槍を向けてくる騎士たちを見ながら、俺はふむと頷いた。

 何だかんだと言いながらもしっかりとした騎士が居るじゃないかと。

 ちゃんと王様をやっていたんだな、と少しばかり嬉しい気持ちになる。

 

「素晴らしい忠義だ。しかし、それがどこまで続くか見ものだな」

「抜かせ!」

「女王陛下を守れ! 皆! 気合を入れろ!」

「……思っていたよりも、楽しめそうだ」

 

 俺は腰に差した刀を抜きながら笑う。

 何だかんだ、この世界でも戦いは続けていたが、実戦でしか味わえない空気という物もあるのだ。

 特に、守る物を持った相手との戦いは、心が躍る様な感覚がある。

 

「行くぞ……!」

「ジーナちゃんもー、ごー!」

 

 そして、俺とジーナちゃんは次から次に出てくる桜の国の騎士との戦いに身を投じて、出てくる騎士を次から次に切り裂いてゆく。

 サクラの国の騎士は皆、士気も高く戦いから逃げるような者も居ない。

 まさに命がけで俺たちに挑んでくる最高の相手であった。

 

 だがそんな楽しい戦いも、ある程度の騎士を俺たちが退けた時に終わりを迎える。

 騎士たちの向こうから聞こえた桜の声で。

 

「そこまでだよ」

「……」

「女王陛下! ここは危険です! お下がりを」

「下がる所なんて無いよ。それに私だけがみんなを見捨てて逃げる訳にはいかないでしょ?」

「へ、へいか……!」

「という訳だから、侵略者さん。ここは私の身一つで退いてはくれませんか?」

「……良いだろう」

 

 俺は素晴らしい女王を演じきって儚げに笑う桜に、膝を付いてその手を取るのだった。

 感動的だ。

 何だかんだ言いつつも、桜はちゃんと真面目にやってくれるし。

 本当にいい子だなぁ。

 

 なんて感動しながら、騎士たちの前から桜を攫い、ジーナちゃんと共に転移するのだった。

 

 場所も変わり、我が国の王城に到着し、桜は「つかれたー!」と声を上げながら俺にもたれかかった。

 そんな桜をねぎらいつつ、俺は桜と共に玉座に座る。

 

「もー。ようやくお兄ちゃんに会えたよー」

「お疲れ様」

「へへ。ありがとー」

 

 桜は猫の様に俺にすり寄って甘える。

 現実世界では毎日会っているのだが、何だかんだゲームで過ごしている時間が長いからな、寂しく感じるのもしょうがないだろう。

 

「うにゅうにゅしてるのは良いけど、ちゃーんとお仕事したの? サクラちゃん」

「とーぜん! 私はやる事やってから甘える女だよ。私が投降する前に、子供達の国とかヴィルヘルムさんの国に騎士を逃がして、私の国が攻められた事を伝えてもらったからね」

「おー。やるぅー」

「へへへ。ドヤ!」

 

 しっかり仕事をしていた桜を褒めつつ、俺とジーナちゃんは次なる戦争の準備をする事にしたのだが。

 その前に桜からストップが入る。

 

「ねぇねぇ。お兄ちゃん。この城に色々な国のお姫様が居るって聞いたんだけど」

「……さて。何の話かな」

「あー! 誤魔化すんだ! 誤魔化すんだー! 良いのかなぁー!」

「誤魔化すも何も。もう国の中にお姫様は居ないからね。今は関係ない話さ」

「今は、って事は前は居たんだ……! 悪の王様だからってハーレム作ってキャッキャウフフしてたんだ!」

「してないしてない」

「うー!」

 

 俺の話は信じず、威嚇してくる桜にどうしたものかと考える。

 戦争よりも大変だ。桜をなだめる事は。

 

「桜。俺は何もいかがわしい事はしていないんだよ。ほら、このゲームは子供達も遊んでる健全なゲームなんだよ? そんな変な事をする訳が無いだろう?」

「じゃあどこまでやったの?」

「どこまでって、どこまでもなにも。俺は何もやってないよ。桜に誓おう」

「……」

「桜。信じて欲しい」

「……ジーナちゃん」

「うーん。嘘は言ってないよ。だってリョウ君からは手を出さなかったもんね。夜お布団に忍び込んでた。みたいな事はあったけど」

「っ! ジーナちゃん!」

「うー!」

「ジーナちゃん、しーらない!」

 

 とんだいたずらっ子のお陰で、俺はゲーム開始以来最大のピンチを迎えていた。

 桜の瞳は険しく、まるで野生動物の様だ。

 今にも俺の首元に噛みつきそうである。

 

「お兄ちゃん!」

「あぁ、分かった。お兄ちゃんが全部悪かったよ。ゲームが終わったら桜のお願いを可能な限り聞くから」

「ホントね!? 約束ね!」

「あぁ、約束だ」

 

 起った桜をなだめる手段は少ない。

 俺はその少ない手札の中の最大の威力を持つ札を切った。

 なるべくなら切りたくはなかったが、今の桜を抑えるにはこれくらいの対価は必要だったのだ。

 

 そんなこんなで桜の色々なお願いを聞く事で桜の機嫌も何とか直り、俺達はいよいよ計画の第二段階へと進む事になった。

 

「来たぜ。リョウ」

「えぇ。待ってましたよ。アレクさん」

 

 今日はアレクさんが宣戦布告をする為に、俺たちの国へとやってくる日だ。

 表面上は、桜の国を併合する為に手間取っているという事になっており、その間にアレクさんとヴィルさんを中心として、連合国家が誕生したという様なシナリオだ。

 アレクさんと共にいる何人かの子供たちは、やや怖がっている様子だが、玉座にいるのが俺と知り、少し安心した様である。

 まぁ、見た目まで悪い王様をやるつもりは無いからね。

 

 あくまでゲーム的に悪い王様というだけだ。

 俺だって子供に嫌われたくはないものな。

 

「上手くやったもんだがな。リョウ。お前の計画はここまでだ」

「いえいえ。まだまだ終わってませんよ。俺の作った超大国は強いですからね」

「ほー。中々の自信じゃないか」

「そりゃあそうですよ。頭は一つの方が動きやすいですからね」

「さて。どうかな。人ってのは一人より、複数人の方が強いんだぜ?」

「なら……証明しましょうか」

「あぁ。良いだろう」

 

 俺は悪の王として、アレクさん達に宣戦布告をする。

 来月から超大国は、超大国以外の全ての国に対して進行を開始すると。

 アレクさんはニヤリと笑いながら、頷いて戦争を受けるのだった。

 

 いよいよ長かったゲームの終わりが近づいてきていた。

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