いよいよ始まったアレクさん、ヴィルさん率いる連合軍であるが、戦いに慣れていない子供達の騎士団はお世辞にも動きが上手いとは言えず、我が国の騎士団に圧倒されていた。
まぁ、俺が国内の争いごとを全て騎士団に解決させていた為、それなりに練度が高いのもある。
仕方ないと言えば仕方がないが、このまま押しつぶすしてもしょうがないし、適度に騎士を動かしてバランスを取るのだった。
無論、違和感を持つ子が出てこない様に大きな声で叫びながらだ。
「そうそう簡単に負けてはくれませんね! ヴィルさん!」
「この世界は現実とそれほど変わらないみたいだからな!」
「仕方ない! 援護だ! 援護をこちらに寄越せ!」
とまぁ、こんな風に叫べば、子供達もなるほどと思うワケだ。
子供達にとってヴィルさんもアレクさんも無敵の英雄。
ならば、どれだけ騎士が居ても足りないと俺が叫ぶ事に何も違和感は無いだろう。
「っ! ヴィルさん」
「……あぁ。アレク!!」
「めんどくせぇな!」
俺はヴィルさんの槍に刀をぶつけながら接近し、アレクさんに騎士を減らしてもらう様に頼む。
多くを語らずとも、こちらの思惑を察してくれるアレクさんは遠距離からこちらの騎士を傷つけ、撤退させた。
流石というか何というか。正確な動きだ。
実にうまくバランスが取れている。
今、俺の国は非常に劣勢だ。
数で押し切ろうとしているが、子供達には耐えられてしまい、ヴィルさんとアレクさんは突破できない。
そういう風になっている。
実に完璧な調整と言えるだろう。
そして、俺はこれ以上は戦えないと撤退するのだ。
「駄目だ! 退け! 退け―!」
しかし、俺たちが帰るべき場所は既にない。
何故なら、この撤退を予め知っていたココちゃんが背後に陣取り、国を制圧しているからだ。
まぁ、がら空きの国で、桜の手引きがあるのだ。
それほど苦労はしなかっただろう。
だが、それでもだ。如何に侵入が簡単であろうが、タイミングを見極めるのは難しい。
そこはココちゃんの頑張りという訳だ。
「お兄ちゃん。ココたちの勝ちだよ」
「あぁ。みたいだね」
「これで、降参?」
「国としては、降参かな」
「国として、は?」
俺はニッコリとココちゃんと桜に微笑み、撤退する間に納刀していた刀を再び抜いて、笑う。
そう。この世界は現実の世界ではないのだ。
せっかくだから、遊んで行こうじゃないか。
俺は進撃中の敵軍に向かって走る。
「なにー? また遊ぶのー?」
「あぁ。こういう機会でも無いと、本気のヴィルさんやアレクさんと戦えないからね」
「リョウ君も好きだねぇ」
「強くなる機会を見逃さないってだけさ」
「じゃあしょうがないから、ジーナちゃんも協力してあげる」
「それは心強いね」
向こうも二人。
こっちも二人だ。
面白い戦いになるのでは無いだろうか。
俺は迫りくる騎士達へ刀を振り下ろしながら走り続ける。
流石というか、なんというか。
ヴィルさんやアレクさんの鍛えた騎士は非常に強いが、それでも足りない。
この程度では足りない。
どんな相手にも負けず戦い続ける為に、俺はもっと強くならなきゃならない。
「見つけた!」
「っ! リョウか!」
「ヤンチャな奴だ!」
「はーい、アレクシスの相手は、このジーナちゃんだよっ!」
「そりゃ丁度いい。お前とはやってみたかったぜ!」
アレクさんはジーナちゃんに銃弾を放ちながら、背中に付けていたナイフを引き抜いてジーナちゃんへと振るう。
しかし、ジーナちゃんはアレクさんの前で転移をして、俺はジーナちゃんが消えたのを確認してから刀をアレクさんに向けて振り下ろした
「ちっ!」
「アレク!」
「はーい。ヴィルヘルムの相手は、ジーナちゃんだよっ!」
「後ろから!」
俺の振り下ろした刃をやけに固い銃で受け止めたアレクさんに、驚きながらも、そのまま押し切ろうとする。
が、アレクさんはわざと体勢を崩しながら刀を受け流して、俺に向かって銃を放とうとするのだった。
だが、距離はある。
俺は放たれる銃弾を全て刀で受け流すと、そのまま静かに構えてアレクさんに向き直った。
「不意打ちたぁ、とんだ悪ガキどもだ」
「作戦って奴ですよ。驚いたでしょう?」
「あぁ、あぁ。驚いたよ。だがな。その程度じゃまだ足りないぜ。リョウ」
「……」
「ヴィル! やるなら本気で相手をしてやろうか!」
「そうだな。それがお望みの様だし」
「へっ、リョウ。元祖悪ガキの力を見せてやるよ」
「……悪ガキはお前だけだろ。アレク」
「うるせぇな! 行くぞ! ヴィル!」
「あぁ……!」
アレクさんの言葉を合図として、ヴィルさんが槍の先を地面すれすれに走らせながら、俺たちに迫る。
アレクさんはそんなヴィルさんの後ろで、静かに動きながら隙を伺っている様だった。
「ジーナちゃん。アレクさんの方を頼む」
「りょーかい!」
「俺は……!」
迫りくるヴィルさんに向かって刀を構え……様とした瞬間、アレクさんから銃弾が飛んできた。
それを刀で弾き飛ばすが、今までよりも加速したヴィルさんが俺に向かって真っすぐに槍を突き刺し……ギリギリで避けた俺の方へと薙ぐ!
避けられることを前提とした二段構え。
そして、さらにアレクさんがジーナちゃんの猛攻の隙に俺の方へと銃弾を撃ってくる。
「っ! 厄介だな!」
「コンビネーションってのはそういう物だ。リョウ」
「それはごもっとも!」
「一対一をそれぞれやるだけじゃ、コンビネーションにはならないぞ!」
ヴィルさんの言うことはもっともだ。
実にその通り。
だが、言われてすぐに出来る様なら苦労は無いのだ。
俺はひとまずジーナちゃんを自由にしようとヴィルさんを見据えるが、隙が無い。
アレクさんの方へは向かわせないという強い意志と力を感じる。
そしてアレクさんもまた、ジーナちゃんにはあまり反撃せず、こちらの様子を伺っている様だった。
最初の目標は俺という訳か。
そりゃ各個撃破する方が効率が良いのだから、当然と言えば当然の話だ。
しかし、狙われているというのなら、出来る事もある。
俺はヴィルさんの槍をギリギリでかわし、内側に入り込むと、超近距離の接近戦を始める。
この距離ならアレクさんの援護もしにくいし、槍もそこまで自由には動けない。
そう考えての行動だったのだが……。
ドン
という至近距離から聞こえた鈍い音と。
「リョウ君!」
と叫ぶジーナちゃんの声がどこか遠くに聞こえた。
その時、俺は初めて自分が撃たれたという事を察した。
どうやったのか。
俺は周囲に視線を走らせるが、方法は分からない。
分からないが、ヴィルさんの槍が奇妙な位置にあったから、それを利用したんだという事が分かった。
跳弾か?
分からない。
が、多分近い位置にある答えの様な気がする。
「これで終わりだな」
「みたいですね」
俺はそのまま振り下ろされる槍によってゲーム内における俺の命は失われる事になった。
何とも悔しい事だ。
しかし、課題は視えた。
個人としての限界。
連携で戦う為に必要な事。
考えなければいけない事。
それらは、どうやら俺の知らない道の先にあるらしい。
「……いい、学びになった」
「ったく末恐ろしい事だ」
悔しいが、どこか満足した心で、俺はヴィルさんに見られながら笑ってゲームオーバーとなった。
それからさほどせずに、俺は孤児院に戻され、体をほぐしている間に、子供達やヴィルさん達も戻ってくるのだった。
「あ! リョウ兄ちゃん!」
「最後のヴィル兄ちゃんたちとの戦い凄かった!」
「格好良かった!」
「アレクはちょっと汚かったけどなー」
「なんだとクソガキ!」
「わぁー! アレクが怒った! にげろー!」
「待てコラー!」
わいわいと楽しそうにはしゃぐ子達を見て、かなり良いゲームだったなと俺は頷くのだった。