異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第143話『思い出した(わすれていた)記憶』

 リリィちゃんと色々な話をしながら野営の準備や、夕食の準備をしていた。

 が、それだけの時間を過ごしてなお、封印書庫のカギは開かず、俺はやはりなという気持ちを奥に隠したままミクちゃん達に話しかけるのだった。

 

「そろそろ日も落ちるし、夕食にしましょうか」

「そうですね」

「あら。さっきのジャイアントベアーを調理してくれたの?」

「まぁ、長引きそうですからね」

「あ、ありがとうございますっ! 私たち何もしてないのに」

「いやいや。カギを開けようとしてくれてたじゃないですか」

「そうそう。リンはちゃんと仕事してたわよ。どこかの誰かさんは何もしてなかったみたいだけどー」

「はぁー!? それを言うのならモモだって何もしてなかったじゃないですかっ!」

「私の仕事はこれからだしー。ここまではどーでも良いのよ」

 

 ミクちゃんと言い争いをしていた少女はニシシと笑うと、地面に手を当てて、何かの力を使った。

 森でジャイアントベアーに襲われていた時に使っていた物と同じ物だろう。

 彼女が降れた地面から巨大な植物が生えてきて、周囲の地面を覆い、植物の枝で出来たテーブルと椅子を作り出した。

 

「どう? 食事をするなら、こういうのがあった方が良いでしょ? 後で簡易的な家も作るから。そこで寝れば安心よ」

「これは凄い……」

「魔術って何でもアリなんですねぇ」

「ま、まぁね?」

「モモ」

「何よ」

「この力はあまり多用しない方が」

「うるさいわねー。便利なんだから良いでしょ」

「それで面倒な人たちに見つかったらどうするつもりですか」

「ここに居る人間が全員黙ってればいい話でしょ!」

 

 と、言いながら少女は俺やリリィちゃんを見る。

 俺は特に周りへ話す理由も無いし、黙っているよと頷き、リリィちゃんも同じ様に頷いた。

 

「ほら」

「まったく! ここに居る人たちが偶然良い人たちばっかりだった! っていう話なんですからね!」

「私だって使う場所と状況くらい見極めてるわよ」

「どーだか! 以前、大草原で力を使おうとして、知らない人に見つかりそうになってたじゃないですか!」

「何百年前の話してんのよ!」

「ちょっと前の話じゃないですかっ!」

 

 再び始まってしまったミクちゃんと、モモちゃんと呼ばれた少女の争いに、俺とリリィちゃんがどうするかと迷っていると、もう一人の少女……リンと呼ばれた少女がテーブルの上に皿を並べて、出来た料理をテーブルの上に運んでいた。

 そして、俺達を見て笑う。

 

「あの二人はいつもこうなんで、放っておきましょう。それよりも、せっかくの料理が冷めてしまいますから」

「ま、まぁ、君がそう言うのなら……」

「リンです」

「あー、これは失礼。リンさん」

「ただのリンで良いですよ。私はミクちゃん達ほど凄い人間ではないですから」

「じゃあリンちゃん。で良いかな」

「はい! それで……」

「あぁ、俺たちも自己紹介をしないとだね。俺はリョウ」

「私はリリィです」

「はい。リョウさんにリリィさんですね。覚えました! これからよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 

 俺とリリィちゃんはリンちゃんと丁寧な挨拶をして、リンちゃんの言葉通り、言い争いを続ける二人を放置して食事を始めた。

 ついでとばかりにリンちゃんから色々な話を聞く。

 

「まぁ! ではお二人とも冒険者なのですね!」

「はい。セオストで冒険者をやってます」

「セオスト……前に何度か行った事があります。とても綺麗な街で、皆さん親切で」

「俺も最近セオストに住み始めたばかりなんですが、確かに良い街ですね。住みやすいです」

「そうなんですね」

 

「そういえば、リンちゃんは世界中を旅していると聞きましたが」

「えぇ。私は癒しの力を持っていますから」

「癒しの力……?」

「はい。いわゆる聖女という奴ですね」

 

 ニッコリと微笑みながら告げられた言葉に、なるほどなぁと頷きながら飲み物を口にする。

 そして、あぁと思い出した様にリンちゃんへ問うた。

 

「もしかして、ミラさんと同じ?」

「はい。一応はそうなりますね」

「……」

 

 一応。という言葉に引っかかりを覚えながらも、俺はそうですかと頷いた。

 まぁ色々と事情があるのだろう。

 あえて話さない事情なら、あえてこちらから聞く事もない。

 

「なるほど、それで『楽園』に追われている……ん?」

「どうかしましたか?」

「あー、いや。ちょっとよく分からない所があるんですが、『楽園』は何故聖女を追っているのかなと思って……信仰しているのであれば、やっている事が合っていない様な」

「それは……」

「予言があったからよ」

「予言?」

 

 俺とリンちゃんの会話に、モモと呼ばれた子が乱入し、リンちゃんの後ろから手を伸ばして肉の一切れを指でつまんで食べる。

 

「はしたないですよ! モモ」

「はいはい。分かったわよ。マーマ」

「誰がママですかっ!」

 

「その、予言というのは」

「大いなる大破壊。八番目の大災害により、世界は闇に覆われる。という予言です」

「……ミクちゃん」

「無論、私たち災害対策局も未然にこの災害を防げる様にと動いています。しかし……」

「もし、災害対策局が防げなかった時、自分たちだけでも助かろうって動いてるのが『楽園』ってワケよ。聖女を信仰だ、なんだって言っても……結局は自分たちの事しか考えてないってワケ」

「なるほど。世界が闇に覆われるという予言に対して、何か起きた際に傷を癒せる聖女様を独占しようと、そういう考えですか」

「そ。結構鋭いね。キミ」

「人を指ささない。というかソースを手とか口に付けたまま話さない」

「細かい事ばっかりうるさいわねー。ホント」

「どこが細かい所ですか! 人として大事な事でしょうが!」

 

 ミクちゃんとモモちゃんの言い争いを聞きながら、俺は聞いた話について考えていた。

 

 そう、酷く聞き覚えのある話なのだ。

 どこかで聞いたような気がしている。

 どこだ? どこで聞いたんだ?

 

 大いなる大破壊。

 八番目の大災害。

 世界が闇に覆われる。

 

 どこだったか。

 セオストじゃない。

 もっと昔……。

 

 そう。桜と初めて会った時の……っ!?

 

「っ! どうしたんですか!? リョウさん」

「予言。そうだ。予言だ」

「え?」

「どうしたの」

「リョウさん?」

 

『やはり、世界は運命から逃れる事が出来ない様ですね』

『ですが、異界への道が繋がった事は、桜の運命を変える一手となるかもしれません』

『あなた』

 

『異界より、こちらを見ている貴方』

『我が子、桜を貴方に託します』

『いずれ運命は貴方と桜をこの世界に呼び寄せるかもしれません』

『世界中から希望が消え、願いは闇に葬られ、大いなる災いが、世界の全てを破壊しつくしても……光が残れば、未来は繋がる』

『託します。未来への希望を』

『呼び起された第八の災害が世界を滅ぼす前に、世界が闇に覆いつくされる前に』

『どうか……』

 

 そして、彼女は言葉と桜を俺に託して、炎の中に消えていった。

 俺はボロボロの体で腕の中に生まれた小さなぬくもりを抱きしめたまま、僅かに生まれた力で叫んだんだ。

 

「……か! だれ、か!」

「おい!! こっちから声が聞こえるぞ!」

「生きてる! 男の子と女の子だ!!」

「急げ! 助けるんだ!!」

 

 あぁ。

 そうか。

 あの時か。

 

「……なるほど」

「大丈夫ですか? リョウさん」

「あぁ、大丈夫。ちょっと昔の事を思い出してて」

「昔の事?」

「うん。実は俺もその予言を聞いた事があってね。それで……ちょっと懐かしい話を思い出していたんだ」

「まぁ色々な場所で広まってますからね

「しっかし、セオストの方まで広がってるとは。どうなってるんですかー? 災害対策局! 局長殿!」

「まーたバカにした言い方して! 私だって頑張ってるんですからね!」

「頑張っててもなぁ。結果が出てないとなぁ」

「きー!」

 

 ミクちゃんとモモちゃんの争いを聞きながら、俺はどこか頭に引っかかった記憶に思いを馳せるのだった。

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