異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第150話『(ミクちゃん)と俺の新しい関係』

 色々あったミクちゃんの依頼であるが、雪が解け終わるよりも早くミクちゃんの調べものは終わった。

 そして、俺たちは自分たちが居たという痕跡を全て消し、正面の入り口から外に出て、封印書庫を後にするのだった。

 

「では、後はセオストに帰るだけですね」

「また転移で帰りますか?」

「いえ、実は帰りの転移魔術陣は用意してなくてですね。別の手段で帰る事になります」

「では、書庫の魔術陣を使いますか?」

「んー。それも考えたのですが、止めておきましょう。私たちが居たという痕跡は少しでも少ない方が良いですからね」

「了解です」

 

 そういう事ならどうするかなと、考えるが……まぁ、普通に歩いて帰るという手段もあるし。

 特に意見は出さぬままミクちゃんの提案を待つことにした。

 

「ですので、一度西側諸国の国をいくつか回ってから、どこかの国でポータルを借りて帰宅しましょう」

「西側諸国を回るのは、カモフラージュの為ですか?」

「それもありますが、セオストもまだ雪が残っているかもしれませんからね。時間つぶしの意味もあります」

「なるほど」

「という訳で、私たちは西に向かいますが、モモとリンはどうしますか?」

 

 ミクちゃんは行き先を定めてからモモちゃんとリンちゃんの二人に問う。

 一緒に行動するのかと思ったが、そういえば追われていると言っていたなと俺は思い出した。

 西側へ行けば危ない可能性もあるのか。

 

「いや、私たちはこのままヴェルクモント王国に留まるよ。色々話したい事もあるしさ」

「わかりました。では、気を付けてくださいね」

「分かってるって。じゃ、雪が解けたくらいにセオストには行くからさ。リョウさん。リリィさん。前に言ってた依頼。お願いね?」

「あぁ、分かってるよ」

「はい!」

「ありがとー。じゃ、また会おうねー!」

「では、私たちは先に失礼します」

 

 気軽な様子のモモちゃんと、丁寧なリンちゃんに別れを告げて、俺たちは森の中を歩きながら隣の国を目指して移動をはじめた。

 魔物が出てくる様な様子もないし。

 俺たちを狙う様な人間も居ない。

 

 平和な旅だ。

 

「そういえばミクちゃんもヤマトに行くんですか?」

「いえ、私はセオストに留まります。今回調べた事をより深く調査したいので」

「なるほど」

「なので、まだお家の部屋お借りしますね」

「どうぞどうぞ。いくらでも住んでて大丈夫ですよ」

「ありがとうございます」

「あー、でもジーナちゃんとの喧嘩はほどほどに、お願いしますよ。ココちゃんの教育にも悪いですし」

「分かってますよ!」

 

 笑顔で、やや不服そうな声を上げるミクちゃんに俺も笑みを返しながら、雪の上をサクサクと歩く。

 そして、そんな俺にミクちゃんが語り掛けてきた。

 

「あの、リョウさん」

「ん? どうしました?」

「いえ。その……やっぱり私、ずっと気になってて!」

「はい」

「あの、先日は申し訳ございませんでしたー!」

「先日……? あぁ、例の冗談の件ですか」

 

 先日、ちょっとしたアレで衝突した件だが、まぁどちらかと言えば悪いのは俺だ。

 明確な敵意を向けてからでも十分対処出来たはずなのに、先走ってしまった。

 意識が戦闘の中にあったというのも良くなかったかもしれない。

 ある程度気を抜く事も覚えないとな。

 

「全然気にしなくても良いですよ。むしろ俺の方が過敏になってて申し訳ないです」

「いえ! 本当にそのっ! 私! 普段はもうちょっと気を付けてるんですけど、何かあの時はヘンな事を口走ってしまって」

「……」

 

 ふむ、と考える。

 確かに、ミクちゃんはどちらかといえば真面目なタイプだ。

 しかし、あの時はどこか気持ちがふわふわと浮き上がっている様な様子だった。

 普段よりも饒舌だったし、楽しそうに笑っていたし。

 

 あぁ、まぁ。それもそうか。

 

「ミクちゃんは、モモちゃんやリンちゃんとはかなり仲が良いんですか?」

「え? あ、はい。そうですね。モモとリン……それにユウキとは同じ場所で育ちましたから。家族みたいな存在なんです」

「なるほど、だからですかね」

「え?」

「俺も桜と一緒に居る時は、結構危ない冗談も言ったりするんですよ。リリィちゃんはどう? フィオナちゃんと居る時」

「え!? あ、そ、そうですね。私も同じかもしれないです」

 

 空気を読んで肯定してくれるフィオナちゃんに感謝しつつ、俺は質問と同時にリリィちゃんへ向けていた視線を再びミクちゃんへと戻す。

 そして、笑った。

 

「だからまぁ。きっとミクちゃんの中で、俺も含めて、あの場に居たみんなを、何となく家族みたいな関係だと思っていてくれたんじゃないかなって」

「ぁ……」

「でもまぁ、そう考えると、俺が一番悪い感じになるんですけどね。冗談に本気で怒った、悪いお兄ちゃんですよ」

「っ、ふふ」

「なので、ミクちゃんはもう気にしなくても大丈夫ですよ。俺もミクちゃんは結構ないたずらっ子だという事を覚えましたからね。まったく悪い妹だ」

「ざ、残念ですが! 私はリョウさんより年上なので!? 私がお姉さんです」

「それは無理があるでしょう。こんなに小さいのに」

「身長は関係ないじゃないですかっ!」

 

 と、ミクちゃんは笑ったまま、ていっ、ていっ、と俺の体に拳をぶつけ、怒りを示す。

 しかし、当然ながらそれはじゃれ合いの様な物で。

 俺も攻撃とは言えない攻撃を受けながら笑うのだった。

 

「もー! 怒りました! 私がちゃんとお姉さんらしい所を見せてあげます!」

「おー」

「これから西側諸国を巡りますが、私がとっておきの観光名所をご案内しましょう! お姉さんらしく!」

 

 胸を張りながら堂々とそう宣言するミクちゃんに、俺はお願いしますねーと肩を叩いた。

 そんな俺の仕草が気に入らなかったのか、ミクちゃんはまた飛び跳ねながら文句を言う。

 

「なんですか! その態度は! 私の方が年上で! お姉さんなんですよ!? もっと敬ってください!」

「あー、はいはい。じゃあそろそろ行きましょうか。寒くなってきましたし」

「むー! むー!!」

 

「そうして頬を膨らませていると、ジーナちゃんみたいですね」

「なっ!? なぁー!?」

 

 俺はミクちゃんを置き去りにして、歩みを進める。

 まだまだ遠いが、微かに建物が見えているし、おそらくはあそこに向かうのだろうと。

 

「ま、待ってください! 私が案内しますから! お姉さんらしく!」

「それはありがたいですね」

「そう言うのなら止まってください! きゃっ」

 

 俺はすぐ後ろから聞こえた声に急いで振り返り、雪の上で転びそうになっていたミクちゃんを支える。

 ちょうど後ろからもリリィちゃんがミクちゃんを支えようとしていた様で、二人でミクちゃんの上半身と下半身を持つ事になってしまった。

 

「ちょうど良いし。このまま運ぼうか。どうやらミクちゃんは足元が怪しいようだ」

「え? あ、はい! 分かりました」

「え!? このままって、こんな荷物みたいな!?」

「ご不満でしたら、リリィちゃん、貰うよ」

「はい」

 

 俺はリリィちゃんからミクちゃんを預かり、そのまま抱きかかえた。

 

「私は子供じゃありませんよ!」

「ほら、暴れない。子供じゃないんですから」

「う、ぐっ! 子供じゃないのなら、下ろしてください!」

「しかし、一人で歩いていると転んで危ないですからねぇ。特にこの辺りは地面がデコボコしてますし」

「それは……そうかもしれませんが!」

「なら、問題なしですね。それとも、まさか大人の女性がジタバタと暴れて文句を言うのですか? まさか」

「それは……その、しないですけど」

「なら問題なしと。じゃ、街までちょっと急いで行こうかリリィちゃん」

「そうですね。日も傾いてきましたし」

「急ぐなら、下ろして……ひゃっ」

「大人しくして無いと舌を噛みますよ!」

 

 俺は地面を強く蹴り、木の枝に飛び移って、そのまま次の木に跳躍する。

 後ろを確認すればリリィちゃんも当然の様に同じ道で付いてきていて、安心感を覚えるのだった。

 

「ひゃっ! なんで、こんな! 道!」

「急いでますからね」

「ゆっくり行けばいいでしょう!?」

 

 叫ぶミクチャんの声を流しつつ、俺たちは街を目指して一直線に駆けてゆくのだった。

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