異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第152話『新しい季節(ひび)の予感』

 それなりに長い旅を終え、俺たちはセオストへと戻って来た。

 既に雪は西側諸国に俺たちが行った時と同じくらいの量になっており、歩くのに多少不便がある程度だ。

 そして、秘密裏にセオストの外へ出ていた俺たちは街壁の上を見回る騎士の隙を突いて中に入り込み、無事自宅へと戻る事に成功するのだった。

 

「ただいま」

「あ! お兄ちゃん。お帰り! 今回も長い旅だったねぇ」

「何だかんだ長くなっちゃったね。はい。コレ西側諸国のお土産」

「ありがと。じゃあとりあえずお風呂の準備しちゃうね」

「あぁ。ありがとう。じゃあ先にミクちゃんとリリィちゃんが入りなよ」

「そんな! 申し訳ないですよ!」

「そうですよ!」

「良いから。俺は外で道具の整理とかしてるから」

 

 俺は遠慮しがちな二人を家の中に押し込んで、旅道具の掃除を始める事にした。

 テントに寝袋に、使い終わってからのメンテナンスが大事な道具はいっぱいある。

 ミクちゃんとリリィちゃんがお風呂を出る前に終わる事は無いだろう。

 

 という訳で、俺はテントの本格解体なんかを始めた訳だが……。

 思っていたよりもスルスルと解体する事が出来る。

 前は頭で解体手順を思い出しながらやっていたというのに、今は手が覚えている感覚だけで解体する事が出来るのだった。

 

 何事も経験という事だろう。

 まぁ、勿論経験の前に学習は必要だろうが。

 それでも学習した事を繰り返し行う事で真に学びとなり、経験として蓄積されるという事だ。

 

「うーむ。やはり、体を動かすのが一番という事だなぁ」

「やはりお兄ちゃんもそう思いますか」

「あぁ、心の底からそう思うね。妹よ」

 

 いつの間にか……という訳でも無いが、俺の隣にしゃがみ込んで、ニコニコと楽しそうに笑う桜に笑顔で言葉を返しながら俺は持っていた道具の一つを桜に渡す。

 桜はうむ。と頷くと俺から道具を受け取り、整備を手伝ってくれるのだった。

 

「ミクちゃんとリリィちゃんにはゆっくり入ってきてって言っておいたよ」

「桜は良い子だね。お兄ちゃんはとても嬉しいよ」

「へっへっへ。最高の妹だからね。当然だよ」

「そうだな。確かに。桜は最高の妹だ。間違いないね」

「まねー」

 

 ニシシと笑う桜はとても可愛らしく、俺も楽しい気持ちになり、自然と出てくる笑みを浮かべながら作業を進めた。

 やはりというか、俺はこういう時間が好きなのだなと感じる。

 大切な人と何気なく過ごす、そんな時間が……。

 

「そういえば、桜」

「んー? どうしたの?」

「いやな。実は次の依頼が入っててな。今度はヤマトって場所に行く事になった」

「っ! そ、そうなんだ。ヤマトかぁー、結構遠いの?」

「いや。セオストから街道を南下すれば行けるらしいから、そんなに遠くないんじゃないか?」

「ふ、ふぅーん。長いの?」

「どうだろうなぁ。依頼主次第な所はあるが、まぁそれなりに長いかもな」

「そっか……」

「それでな」

「うん?」

「実は今回旅している間に、一つ思いついた事があって、それを桜に手伝って貰いたいんだよ」

 

 桜は俺の方に顔を向けて首を傾げる。

 そして、可愛らしい顔で、なんだろーと呟いた。

 そんな桜を愛おしく思いながら、俺は言葉を続ける。

 

「実は色々な本を読んでたらさ、魔物の骨を再利用した家庭菜園が結構良いらしくて」

「ほうほう」

「ウチでもやろうかと思ってさ」

「良いんじゃない? お兄ちゃんが魔物を狩って、私が家庭菜園って事でしょ?」

「あー、違うんだよ。そうじゃなくて」

「そうじゃない?」

「俺は家庭菜園をココちゃんにやってもらおうかなって考えてるんだ」

「あー、なるほど。なるほど。そういう事かー」

「これだけで察してくれるとは、流石桜だな」

「へへへ。お兄ちゃんの優秀な妹だからね! お兄ちゃんの考えはいつでもお見通しだよ!」

「それは嬉しい事だ」

 

 俺は拳を作って桜の拳と軽くぶつけ合った。

 そして、最高の妹である桜と未来の話をする。

 

「まぁ、ココちゃんの事は私も気になってたからね。何か重要だけど、重大じゃないお仕事があればなーって思ってたんだよ」

「そう。まさにそういう仕事なんだよ」

「やっぱりねー。うん。良いと思うよ」

「それは良かった」

「うんうん。そういう話なら良い話があるんだよ、お兄ちゃん」

「うん?」

「お兄ちゃんがちょうど出かけてる時にさ、冒険者組合の人がウチに来てさ」

「ほう」

「冬が終わって、雪が解けると食料とかを求めて暴れ出す魔物が増えるから、それの討伐をお願いしたいってさ」

「それはちょうどいいね。次の依頼に行くまでの依頼としてはちょうど良いかな」

「うん。その依頼で手に入れた魔物の肉で新年祭もするみたいだから、それに出てからヤマトに行けば良いんじゃないかな。きっとまだヤマトは雪がいっぱいあるからさ」

「あぁ、それも良いかもなぁ」

 

 俺は西側諸国に居た時ミクちゃんから聞いた話を思い出して頷く。

 魔力濃度によって雪の量は変わるとミクちゃんは言っていた。

 そして、話に聞くヤマトはそれほど魔導具も多くないし、魔術師も居ないと聞く。

 

 その分魔物が凶暴だったりするようだが……そういう状態なら雪も多い事だろう。

 なら、セオストよりも雪が多く振っている可能性はある訳だ。

 

「じゃあ、明日辺り冒険者組合に行ってみるかな。とりあえず依頼を受けてくるよ」

「うん、分かった。じゃあ今夜はのんびりって事で良い?」

「あぁ。そんな感じだね」

「じゃ、私も夕食の準備とかしてくるよ」

「助かるよ。久しぶりに桜のご飯を食べられるのは嬉しいからね」

「ふふ。じゃあ今日のお夕食は頑張って作ろうかな!」

「それは楽しみだ」

 

 俺は綺麗に掃除した道具を整理しつつ、桜と共に玄関へ向かった。

 ひとまず軽く掃除は出来たし、本格的な整理は明日の依頼を聞いてからでも良いだろう。

 最悪はそのまま壁の向こう側で何日か生活する可能性もあるし、すぐ使える様に準備しておく必要はある。

 

「んー? あぁ、もう二人はお風呂出たみたいだね」

「ゆっくりしてて良かったんだけどなぁ」

「無理だよ。二人ともお兄ちゃんが外で待ってるって思ってたらゆっくりなんか出来ないでしょ」

「まぁ、二人はそうだろうね」

 

 俺は苦笑しながら玄関から中に入って、お風呂を出たばかりなのに肩で息をしているミクちゃんとリリィちゃんに目を向けた。

 

「あ、まだ外に居たんですね! もう出たので!」

「はい!」

「分かったよ。じゃあ俺も入ろうかな」

 

 それから俺は少し懐かしい風呂に入り、十分にリラックスしてから風呂を出て、桜が作ってくれた料理を食べて満足しながらゆったりと眠る事が出来た。

 そんな久しぶりの自宅をのんびりと過ごした俺は、気力体力を十分に取り戻した状態で朝食を食べてから冒険者組合へと向かう事にした。

 

 何だか久しぶりに来た冒険者組合は人で賑わっていて、数日前まで静かで時が止まっている様な空気だったセオストとは大違いである。

 

「おぅ。リョウ。初めての冬ごもりはどうだったよ」

「だいぶノンビリ出来ましたよ。桜たちともゲームで遊べましたし。俺も十分に楽しめました」

「あぁ、ゲームか。確かに子供が多いとゲームも楽しいかもなぁ」

「えぇ。ただ、次の冬ごもりでは体を鍛えたいので、家を少し拡張しようかなと考えてますよ」

「はっはっは。お前ならそう言うと思ったぜ。ウチの訓練施設を拡張してくれた職人を紹介するよ」

「それはありがたいですね。じゃあ依頼が落ち着いたら改めて話を聞かせてください」

「おう。また声をかけてくれや」

「わかりました」

 

 そして、俺は冒険者仲間といくつか会話をしてから受付に行き、桜から聞いた依頼について話を聞く事にするのだった。

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