異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第155話『狙っていた獲物(ほね)

 セオストに最も近い魔物の住まう森を少しずつ切り開いてゆく仕事だが、まぁまぁ順調だ。

 特にこれといった問題は発生していないし。

 被害も出ていない。

 また、日程も普段より少々早いくらいの様だ。

 

 という事で、俺は組合の人に許可を貰って、魔物狩りを少しばかり行う事にした。

 無論目的は魔物の骨を手に入れる為である。

 

 やるからには色々な種類の魔物の骨が欲しいものだ。

 

「んで? どれくらいの奴を狙うんだよ。イエローチキンか?」

「まぁイエローチキンも欲しいですね。ただ、他のも欲しいです」

「おーおー。強欲だねぇ。じゃあとりあえず見つけた奴を順に捕まえていくか」

 

 そんなこんなで、俺はヴィルさんやアレクさんと共にまだ開かれていない森の中を進んでゆき、獲物を探す。

 良い獲物は居ないかと探すのだが、それらしい物は中々見つからなかった。

 

「しかし、ありがとうございます。わざわざ」

「別に気にすることはねぇよ。俺らも退屈してたしな」

「それにここで少し間引いておけば、明日が少し安全になる」

「なるほど。確かに」

「しっかし、本当に獲物が居ねぇな。何か異常でも起こってるんじゃないだろうな?」

「どうだろうな。今年は普段以上に雪が多かったし、その影響と言われればそんな気もするが」

「雪が多いと面倒なんだよな」

「まぁ、歩きにくいですからね」

「それだけじゃねぇんだ。この雪はな溶けてからが本番なんだよ」

「と言いますと?」

 

 俺は隣を歩いていたアレクさんの方を見ながら問う。

 そしてその問いにはヴィルさんが答えてくれた。

 

「ここに降り積もってる雪には大量の魔力が含まれてるんだよ。だから、これが溶けて色々な場所に流れ込んで、そこの魔力が濃くなるんだよ。そして、それを食べた魔物の魔力が多くなるっていう話なんだ」

「毎年の事だが、おそらく夏頃だな。去年よりもヤバい魔物がうじゃうじゃ出てくるだろうぜ」

「その場合は、冒険者で対応するって感じなんですかね」

「そりゃそうなる。だが、よっぽどデカい奴や危険な奴が出たら、俺らが対処しなきゃいけなくなるからな。呼び出しがあるぞ」

「なるほど……」

「しかもそれだけじゃねぇぞ。春の辺りは、森での調査依頼も増えるからな。大型の魔物が危険行動をとる可能性があったら狩れ、みたいな依頼も出るし。そうなると俺らもよく呼ばれる事になる」

「ほら。去年、リョウやサクラちゃん達と森で会った時も、俺たちはジャイアントボアを追ってただろ?」

「あぁ、ありましたね。アレは無力化って言ってませんでしたか?」

「そりゃお前。まだ小さい子供が居る前で殺す。なんて言えるかよ」

「お気遣いありがとうございます。桜もお友達が殺されたらショックですからね」

「まぁな。という訳であの時はあぁ言ったし、見逃しもしたが、いつもそうじゃないって話だ」

「分かってますよ。俺もセオストに来て一年経ちますからね」

 

 俺は二人と出会った時の事を思い出し懐かしい気持ちになった。

 が、まぁたったの一年である。

 随分と長い間セオストに居たような気もするが、たったの一年。

 いや、相当に濃い一年であった。

 

「一年か……」

「どうしたんですか? アレクさん」

「いや、まだ一年しか経ってなかったんだなって思ってな」

「確かに。そう言われると不思議なもんだ。もっと長く一緒に居たような気がしてたよ」

「そうですね。俺も同じ様な気持ちでした」

 

 俺たちは顔を見合わせながらハハハと笑い、そして遠くから聞こえてきた音に顔をそちらへ向けた。

 どうやらデカい獲物が現れたらしい。

 先ほどまでの和やかな空気はどこかへ消え、俺は意識を鋭く保ちながら気持ちを戦闘状態に切り替える。

 

「音からして、かなりデカいな」

「四つ足かな」

「どこに向かってるか分かるか?」

「ちょっと待て」

 

 アレクさんは近くにあった木に飛び移り、そのまま上の方へ勢いよく登ってゆく。

 いや、登ってゆくというよりは、飛び上がってという方が正しいか。

 

 そして、しばらくしてから降りてきた。

 

「まずいな。セオストの方に向かってるぜ」

「速さは?」

「そこまでじゃない。こっちの方が早くぶつかるよ」

「じゃあ、さっさと行くか」

「方向はどっちですか?」

「向こうだ」

「では、俺が先頭で行きますね」

「頼んだ」

 

 俺はアレクさんが指し示す方に向かって走り出した。

 後ろからは少し距離をあけてヴィルさんが、さらにその後ろにはアレクさんがピッタリと付いてきている。

 まぁ、二人なら何も心配は要らないだろう。

 

 という訳で、俺は疾風の様にかけながら、木々をよけ、不意に現れた魔物をかわしながら先へ進んでゆく。

 そして、森の木々が一瞬消え、開けた場所に出た瞬間現れたその魔物へまずは接敵するのだった。

 

 そいつは、ライオンの様な見た目をした魔物であるのだが、デカさがジャイアントボアと同じくらいある。

 つまりは俺よりもデカいライオンという訳だ。

 

 ならば、と俺は雪の降り積もった地面を強く踏みしめ、そのまま上空へと飛び上がった。

 と、同時にライオンが俺に向かってその巨大な手を振り上げてくるが、それを神刀で流しながら回転し、近くの地面に着地する。

 

 そして、四つ足のライオンが一つの足を振り上げているという隙をヴィルさんが見逃す筈もなく、そのまま接近して体を槍で斬りつけた。

 しかし、ライオンは相当にタフな様で、それだけでは倒れずに今度はヴィルさん目掛けて足を振り下ろしてくる。

 が、ヴィルさんへとライオンの意識が集中している間に、アレクさんがライオンの目を銃で撃ち、俺は今まさにヴィルさんへ振り下ろそうとしている足へと刃を走らせるのだった。

 

 片足を失っても、なおまだ暴れようとしていたライオンであったが、至近距離で十分に力を込めた槍をヴィルさんが突き出した為、完全に動きを止めてしまった。

 我々の完全勝利である。

 

「じゃあこのままセオストまで運びますか」

「おぅ」

「しっかし、相当デカい獲物が手に入ったなぁ」

「普段より森が静かだと思っていたが、コイツが居たからかな」

「かもしれないな」

「なら、どのみち相手をしなきゃいけなかった魔物ってわけだ。運よくここで倒せて良かったよ。向こうじゃ無駄に挑みたがるバカも居るから面倒な事になってたかもしれん」

「確かに」

 

「んー」

「どうした? リョウ」

「いえ。どういう風に分配しようかなと思ってまして」

「随分と気が早いな」

「そりゃそうですよ。今日は魔物の骨を手に入れる為にここまで来たわけですからね」

「へーへー。やる気いっぱいでようござんした」

「とりあえず大きさから考えて、頭、胴体半分、下半身という様な感じですか? いや、しかし、頭蓋骨の方が大きい、か?」

「あー。言っておくが俺らは骨なんぞ要らないぞ」

「そうなんですか? 勿体ない」

「孤児院にそんな代物持ち込んだらアホな連中に襲われるからな。価値の分かりにくい肉の方が良いんだよ」

「分かりました。では肉多めで分配しますか」

 

 俺は本で学んだ分解方法を実践するべく、解体を始めた。

 が、ライオンは他の魔物とはまた違った構造をしているらしく、解体は中々難航してしまうのだった。

 

 そんな俺を見ていられなかったのか、ヴィルさんとアレクさんも手伝ってくれ。

 詳細な分解はセオストでやるという事になり、とりあえずの三等分だけして、セオストを目指すのだった。

 

 それから。

 セオストの解体業者に渡したライオンは無事肉と骨に解体され、内臓の部分は引き取って貰う事にした。

 どうやら内臓は内臓で使い道があるらしい。

 今度時間があったらそっちを調べてみるのも面白いかもしれないな。

 なんて俺は考えるのだった。

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