異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

156 / 436
第156話『(ココ)の新しい仕事』

 先日捕まえたライオンをセオストの解体屋さんに投げた所、相当珍しい魔物であった様で、大層驚かれた。

 だからか、今回は骨は売らずに持って帰ると言うと、酷く焦った様子で止められてしまった。

 しかし、元よりこの骨はココちゃんが家庭菜園をする為に必要な物である。

 どれだけ高値を付けられようと売るつもりは無かった。

 

 そして食い下がる解体屋さんを振り切って、俺は骨と一部の肉を家に持って帰るのだった。

 まだ畑も存在しない為、肉と骨は地下の倉庫へ置きに行き、一部の肉はすぐに調理してみたいというフィオナちゃんに手渡して夕飯とした。

 

 分厚い肉はステーキにするのが良いという事でステーキにして貰い、食べたのだがかなりの美味であった。

 今までに食べた肉の中で相当上位に位置する味だ。

 無論フィオナちゃんの料理が上手いという事もあるだろうけど。

 

「いや、凄い美味しいね。フィオナちゃん」

「んー。これはかなり良いお肉ですねぇ。しかし、肉本来の旨味しか引き出せていない……ダメダメですねぇ」

「それで駄目って評価なんだ」

「当然! 料理というのは食材を最高の状態に引き上げる事を言うのです! ただ食材の味に背負われている物を料理とは言わないのです!」

「中々自分に厳しい子だ」

 

 俺はむー、と眉間に皺を寄せながらステーキを食べるフィオナちゃんを見て、苦笑した。

 そして、残っていたステーキを全て食べ、食後のお茶を飲みながら、いよいよの相談をするのだった。

 

 俺の緊張を悟ったのか、桜が声に出さぬ口パクで応援をしてくれる。

 なんて優しい子なんだろうか。桜は。

 俺は感動に震えながら、お腹いっぱいという顔でホッと一息ついているココちゃんに話しかけた。

 

「そういえば、ちょっと誰かにお願い出来ればなって考えている事があってさ」

「……?」

 

 誰に言っている訳でもない言葉の様に装いながら語り始めると、初めから知っていた桜とリリィちゃんは勿論の事。

 何だなんだと、ココちゃんやジーナちゃん、フィオナちゃん、ミクちゃんが俺の方を見る。

 

「実はさ。去年の末に野菜を買った時に凄い高くてね。結構お金が無くなっちゃったんだよね。それで、家でお野菜を育てようと思ってさ」

「……っ!」

「へー。面白そう―」

「そう。なんだけどさ。結構大変みたいなんだよ」

「うぇー。そうなの? じゃあジーナちゃん無理かも」

「あなたは本当に忍耐力という物がありませんね」

「ぷえー。うるさいおチビちゃんだねー」

「誰が小さいですって!?」

「まぁまぁ二人とも落ち着いて。それで……誰か毎日畑でお野菜のお世話をしてくれる人が居れば嬉しいんだけどなぁ」

 

 俺は全員を順に見る様な顔をしながら、それとなくココちゃんへ視線を送る。

 ココちゃんは少し迷っている様な顔をして、自分の手を見つめた。

 

「……」

 

 重要な使命に、迷っているのだろうか。

 自分でも良いのかと悩んでいるのだろうか。

 

 やりたくない、っていう可能性もあるけど……俺はチラッと桜やジーナちゃんへ視線を向ける。

 二人は俺の視線を受けて、激しく首を上下に振っていた。

 どうやらやる気はあるらしい。

 

 なら、俺がやる事は一つだ。

 

「ココちゃん」

「っ!」

「ココちゃんに、お願いしても良いかな」

「こ、ココで、良いの?」

「ココちゃんが、良いんだ」

「ココが……」

「そうだよ。ココちゃんにお願いしたいなって」

 

 ココちゃんは信じられないという様な目で俺を見ていたが、やがて、そうなんだと安心した様な声で呟いた。

 その顔を見て、俺はこの選択は間違ってなかったと微笑む。

 

「では、ココちゃん。我が家の野菜事情を解決する為に、畑のお仕事をお願いできるかな?」

「はい! ココ! 頑張ります!」

「ちなみに、この計画は五年ほどで完成する事を目指しているので、色々と試しながらゆっくりとやっていこうね。失敗を重ねて、次に繋げるんだ」

「えと」

「簡単に言うと、お野菜が出来なくても良いよって話」

「え、えー!? な、なんで」

 

 ビックリして周囲を見渡すココちゃんに桜が優しく声を掛けた。

 

「それはね。ココちゃん。私もお兄ちゃんも、そしてココちゃんもみんな完璧じゃないからだよ」

「かんぺき、じゃない」

「そう。私もお兄ちゃんもフィオナちゃんもリリィちゃんも、ジーナちゃんもミクちゃんも。みんな知らない事は簡単に成功しないんだ。いっぱい失敗して、少しずつ上手くなっていくの」

「……!」

「だからココちゃんも、いーっぱい失敗して、お勉強して、それで、最高に美味しいお野菜を作って欲しいな。って話なの」

「……うん。分かった。ココ、分かったよ!」

「ありがとう。ココちゃん」

 

 桜は姉らしい微笑みでココちゃんに笑いかけると、俺に視線を戻した。

 そして、ココちゃんと桜の視線を受けながら俺は笑う。

 

「じゃあ今の依頼が終わったら一緒に畑を作ろうか。それでちょっとずつやっていこう!」

「はい!」

 

 元気よく返事をしてくれるココちゃんに微笑みながら、俺は良かったと心の底から安堵するのだった。

 

 

 それから俺は、まず畑を作るべくヴィルさんから教えてもらった業者に連絡をした。

 家庭菜園をしたいという話と、家の立地。広さ等々だ。

 

「まぁ、やるなら屋上が良いな。敷地内を耕しても良いが、家のセキュリティが働かないからな。小さな子に任せるのなら不安だろう」

「確かにそうですね」

「なら、屋上に作って、そこでやる方が良い。雨も日も当たるし、最適だ」

「なるほど」

「ただし、一つ問題がある」

「問題?」

「あぁ。屋上に畑を作ると、その上に改築するのが難しいって事だ。出来なくもないが、ちょっと面倒な工事になる」

「あー」

「だからもし上に改築する気があるのなら、先にやっておくべきだな」

「ちなみに、改築もお願いできたり……?」

「あぁ、出来るぞ。ウチの職人は皆優秀だからな。何でもできる」

「それは良かった。じゃあお願いします。上に二つ階層を追加して、その上に畑を作ってもらいたいです」

「……」

「あれ、マズかったですか? もしかして周りの家に怒られるとか」

 

 俺は難しい顔をした職人さんに思わず尋ねてしまった。

 そして、職人さんは難しい顔をしたまま口を開く。

 

「いや、技術的にも出来るし、家の外観は魔術で歪ませるから問題ないんだが……小さなお嬢ちゃんが4階まで上がるのは大変じゃないか?」

「それはまぁ簡易転移装置がありますし」

「ありますし。って言っても高ぇぞ? 並の冒険者じゃあ一年分の稼ぎが吹っ飛ぶ事になる。2階分も増築したらな」

「なるほど。ちなみにいくらぐらいで?」

「ちょっと待ってろ。計算する」

 

 それから職人さんは設計図を見ながら、紙にスラスラと何かを書いてゆき、何度か見直してから俺に見せてくれた。

 なるほど、確かに高い。

 中々の金額だ。

 

「これも概算の見積もりだから増える可能性はあるけどな」

「増えるって言っても桁が増える訳じゃないんでしょう?」

「それはそうだが……お前に稼げるのか? お前、Eランクなんだろ?」

「えぇ。まぁ。それは出来ますよ」

「……まぁ、出来るってんのなら俺から言う事はねぇ。払えなかったら家を貰うだけだからな」

「はい」

「その落ち着き。本当に稼げるのか? お前、冒険者の仕事やった事あるか?」

「大丈夫ですよ。去年一年働いてましたし。貯蓄もありますし」

「まぁ、そう言うんなら良いけどよ。じゃ、工事を始める前に前金で半分は貰うぞ」

「はい。大丈夫です」

「分かった。じゃあ家を見せて貰ってから見積もりを作らせてもらう」

「分かりました。じゃあ日程の調整をしましょうか」

 

 俺は職人さんの言葉に頷いて、仕事の日と見比べながら日程を決めるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。