異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第163話『水着とプールと浮き輪(かぞくのじかん)

 プールを案内したことで、みんなの気持ちがプールへと飲み込まれた。

 その為、今日はプールで遊ぼうという事になり、まずは水着を買いに行く事になったのだが。

 

「まぁ、こうなるよな」

 

 俺は女性物の水着を売っている店の中、椅子に座りながら楽しそうにはしゃいでいる桜たちを見ていた。

 特にやることがない俺は、ただ見ているだけだ。

 俺も水着を買う必要はあったのだが、まぁ店に入ってすぐに終わってしまった。

 だから、今はただ桜たちの買い物を待っているだけという様な状態だ。

 

「ねぇねぇ。お兄ちゃんはどっちが良いと思う?」

「どっちも可愛いと思うよ」

「そうじゃなくて。どっちがお兄ちゃんの好み!?」

「好み……って、言われるとね」

 

 少々派手で、露出の多い水着を見比べて困ってしまう。

 桜はとても可愛いのに、こんなにも可愛くて露出の高い服を着ていたら、変な奴に目を付けられてしまうんじゃないか。

 そんな不安がスッと頭の中をよぎった。

 

 そこで俺はすぐ近くにあった露出の少ない地味な水着を手に取って桜に見せる。

 

「お兄ちゃんはこういう水着の方が良いかな」

「えー。可愛くなーい」

「そ、そうか……」

「でも、これが本当にお兄ちゃんの好みなら私、着るけど。本当に好みなの? 地味だから変な奴に絡まれなくて良いな。とかじゃなくて?」

「……」

「ハァー。やっぱりかぁー。良い? お兄ちゃん。家のプールだよ。家の。プール。誰が覗いてるっていうの」

「それでも、その水着に慣れて外に行った時が危ないだろう」

「心配しすぎだよ。もう」

 

 桜は呆れたように溜息を吐いてから、みんなの所へ戻っていった。

 そして、肩をすくめてからこちらをチラッと見て、再び会話を始めるのだった。

 情けない兄ですまないな。桜。

 

 という訳で再び暇になってしまった訳だが。

 今度は桜の代わりにココちゃんがいくつかの水着を抱えながら走って来た。

 

「お兄ちゃん。みずぎ、えらんで」

「それは良いけど。ココちゃんはどれが良いとか好みは無いの?」

「この中なら、なんでも」

「なるほど」

 

 ココちゃんが持って来た水着は、桜の持って来たビキニタイプとは違い、ワンピースタイプで露出はだいぶ少ない。

 そして、見た目も派手過ぎず、花の模様が描かれた非常に可愛らしい水着であった。

 

「これは悩むね」

「うん」

「いっそ全部買う方が良いんじゃないかな。ほら、気分で色々変えられるだろう?」

「でも……」

「値段とかは気にしなくても大丈夫だよ。全然高くないからね。さっきチラッと見たけど、お姉ちゃん達の水着はココちゃんの水着全部勝った値段より高いから」

「そうなの?」

「そう。みんな良い水着を選んでるからね。だから、ココちゃんが欲しい水着なら全部買っても問題ないよって話」

「……でも、ココだけいっぱいなの、良いのかな」

「俺は、色々な水着を着たココちゃんが見たいけどな」

「ホントに?」

「あぁ、勿論。ココちゃんは可愛いからね。どんな水着も似合うだろうし。見たい気持ちに嘘はないよ」

「そう、なんだ……じゃあ、ほしい」

「決まりだね。じゃあ買おうか」

 

 俺はココちゃんと共にレジへと向かい、そのまま金額を支払って袋に入れてもらった。

 その袋はココちゃんに渡したのだが、大事そうに抱えるココちゃんを見て、俺も微笑む。

 袋を抱きしめるココちゃんは凄く嬉しそうで、楽しいという気持ちが溢れている様だった。

 とても素晴らしい事だ。

 

 店員さんもココちゃんの姿を見て、微笑みながら頷いていた。

 

「ふむ。これでココちゃんの買い物も終わった訳だけれども、どうするか」

「お姉ちゃん達を、まつ?」

「それも良いけどね。だいぶ長そうだから」

 

 俺はまだ集まって楽しそうに騒いでいる桜たちを見据えた。

 まだまだ時間が掛かりそうな空気である。

 俺が役に立たない事は既に証明済みだしな。

 

 俺がここにいる役割は財布としてだけだが……。

 

「ちょっとお姉ちゃん達に相談してくるよ。待ってて」

「うん」

 

 水着の入った袋を抱きしめているココちゃんをそのままに、俺は桜たちの元へ向かった。

 一応お伺いを立てる為に。

 

「あー、桜?」

「どうしたの。お兄ちゃん」

「いや、な。そのー。買い物はまだまだ長く続きそうだよなと思ってな」

「うん。そうだね。お兄ちゃんが選んでくれたらすぐにでも終わるんだけど」

「うっ」

「でも、お兄ちゃんは待ってるのが退屈だから、ココちゃんの買い物が終わったし、ついでとばかりに家に帰ろうとしているんでしょ?」

「ぐっ!」

「あーあ。お兄ちゃん帰っちゃうのか―。悲しいなぁー」

「……あー、あのな」

 

 桜に何か言わなくては、と頭を必死に回転させていた俺であったが、桜はフッと笑うと、冗談だよ。と軽い調子で言ってくれた。

 

「冗談だよ。ごめん。ちょっと意地悪言っちゃった」

「いや、俺も桜たちに良い事言えなくてごめんな」

「まぁ、お兄ちゃんは昔からカワイイより、アブナイを優先する人だって分かってるから大丈夫だよ。カワランナー。っていう安心感があるとも言う」

「……桜」

「なので! 私たちの事は良いから、ココちゃんと一緒に遊んでて。多分すごーく長くなるからさ。待たせるのも悪いし」

「あぁ。分かったよ。ありがとう。桜」

「ううん。じゃ、あんまりにも遅かったら先にご飯とか食べちゃってね!」

「分かった。じゃあ、桜たちも気を付けてな」

 

 俺は桜に財布を預けて、足りない分は後で払うからと店員さんにも言っておく。

 店員さんには冒険者の証明書を見せておいて、納得して貰った。

 Eランクだけど、特に問題は無いらしい。

 

 まぁ、前にも大きな買い物したし。信用されているという事かな。

 

 

 という訳で帰宅した俺は早々に新しい水着へ着替え、プールの横で水着のついでに買ってきた浮き輪やボールなどを膨らませていた。

 本来は魔力を使って膨らませるらしいが、俺は魔力が使えない為、人力である。

 店員さん曰く、魔力を持っていないという人は居ないので、コツを掴めばすぐに出来る。ということだったが。

 

 残念ながら持っていない人間もここに居るのだ。

 そんなこんなで、どうしても出来ない場合の方法も聞いていた為、今実践中というワケである。

 

 空気穴から空気を入れて、指で押さえる。

 空気穴から空気を入れて、空気を入れる口を塞ぐ。

 

 まぁまぁな重労働であるが、これもココちゃんの笑顔の為だと思えば容易い物である。

 

 俺は酸素不足で、少しクラクラする頭を休ませるために、プールサイドで仰向けに倒れた。

 そして、そのまま目を閉じて、ココちゃんが来るのを待っていたのだが。

 さほど時間をかけずにペタペタと歩く小さな足音が聞こえてくる。

 

「お兄ちゃん」

「ん」

「おはよう」

 

 俺はココちゃんの声に体を起こして、その声がした方へ顔を向ける。

 そこには小さなオレンジ色の花がいくつか描かれた水着を着たココちゃんが居て、両手を前で組みながら少し恥ずかしそうにしていた。

 

「似合ってるよ。可愛いね」

「……そ、そうかな」

「うん。俺は嘘をつかないよ」

「そう、なんだ。良かった」

 

 えへへと笑うココちゃんは可愛らしく。

 ここまで喜んでもらえるなら水着を買って良かったなと思うのだった。

 

 そして、水着を着たからには遊ばなくては!

 という事で、まず俺はココちゃんを流れるプールに連れていく事にした。

 

「じゃあ、まずは流れるプールで遊んでみようか」

「うん……!」

 

 浮き輪を持って、まだ不安があるのか、俺の手を握るココちゃんに軽く握り返しながら流れるプールへと俺は向かうのだった。

 そして、俺が先にプールの中に入り、浮き輪をかるく抑えながらココちゃんを抱えて浮き輪の上に座って貰った。

 さぁ、楽しい流れるプールの始まりだ。

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