異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第165話『水泳の練習(とっくん)

 ココちゃんと流れるプールで遊んでから、お昼ごはんを食べて、ゆっくりと休んでから、今度はココちゃんと泳ぎの練習を始める事にした。

 子供用のプールへと向かい、ココちゃんが立った時、ちょうど胸の辺りまで水が来る様に調整する。

 

「うん。こんなモノかな。どう? 怖くはない?」

「だいじょうぶ」

「よし。なら順番に始めてみようか」

「はい!」

 

 元気よく返事をするココちゃんに笑いかけながら、俺は学校でやった授業を思い出しつつ練習を進める。

 確か……最初は水に顔を付ける。とかだった気がする。

 

「じゃあ、まずは水に顔を付ける練習からやってみようか」

「水に、顔をつける」

「そう。こんな、感じで」

 

 俺は実際に水に顔を付けながらココちゃんに見本を示した。

 ここの水は水の魔術で常に綺麗な状態を維持しているらしいから、汚いという事はない。

 恐怖さえなければ出来る筈だ……。

 

「……っ!」

 

 そして、ココちゃんは僅かなためらいの後、勢いよく水に顔を付けた。

 その衝撃で軽く水しぶきがあがり、周囲に小さな波が出来る。

 それから、しばらく水に顔を付け続けていたココちゃんは、呼吸をする為に、ハッと顔を上げた。

 

 驚き、目をぱちくりとさせながらも、塗れた顔を手で拭う。

 

「どうだった?」

「え、と。できた……?」

「うん。出来てたよ。しかも凄く長く出来てた。最初からこんなに出来るなんて凄いね」

「へへ、えへへ。ココ、すごい?」

「あぁ。凄いよ。俺も最初はここまで出来なかったなぁ」

「えへへ」

 

 喜んでいるココちゃんを更に褒めつつ、俺は次なる練習へと進む事にした。

 初回で長い時間顔を付けられたココちゃんが、これ以上顔を付ける練習をしても意味が無いと思ったからだ。

 

 という事で、次は……まぁ潜る練習とかかな?

 何となくしか覚えてないから確証はないのだけれど。

 まぁ、危なくなければ色々と試してみれば良いだろう。

 

「じゃあ、次は潜る練習をしてみようか」

「もぐる?」

「そう。今からやってみせるよ。まずはー大きく息を吸います。そして止めて。水の中に頭までドボン!」

 

 俺は言いながら言葉通り実践する。

 そして、少しの間水の中で潜り続けて、水の中で息を吐いてから水の上に戻った。

 

「そして、最後に水の中で息を吐いてから、また水の上に戻ってきます」

「おー」

「じゃあ、やってみようか。怖かったらゆっくりね」

「うん……!」

 

 ココちゃんは緊張した顔のまま、大きく息を吸い込んでそのまま目を閉じて、水の中へ勢いよく降りて行った。

 俺もとりあえずココちゃんの様子を見るべく同じ様に水の中へ潜る。

 

 どうやらココちゃんは水の中で目を開ける事が出来ないらしく、首を左右に振りながら、どうすれば良いか分からないという様な様子だった。

 そして、呼吸が限界になったのか、再び水上へと戻る。

 

「ぷはっあ! はぁ、はぁ」

「大丈夫? ココちゃん」

「う、うん……でも、よく分からなくて」

「あー、まぁ。そうだよね。んー。どうしたもんかなぁ」

 

「ふっふっふ」

「ん? この声は!」

「私だよ! お兄ちゃん!」

 

 どこからか聞こえた声に、俺が振り返ると、そこには大量の買い物袋を持った桜が立っていた。

 更にその後ろには桜と同じ様に自信満々の笑みを浮かべたジーナちゃんとモモちゃん。

 そして、苦笑しているフィオナちゃんやリンちゃん。頭を抱えているミクちゃんと、どこか落ち着かない様子のリリィちゃんが立っていた。

 

 どうやら買い物が終わったらしい。

 そして、桜は一つの輝く何かを俺に向かって投げてきた。

 

「こんな事もあろうかと! 私はこんな物を買っていたのだ!」

「これは……! 水中ゴーグルか!」

「そう! 水の中で目を開けるなんて、お兄ちゃんくらいしか出来ないからね! 人間として当然の装備だよ!」

「いや、お兄ちゃんも人間なんだけどな?」

 

 とは言いつつだ。

 俺は会話らしいピンクの水中ゴーグルをココちゃんに手渡した。

 そして、長さを調整して、水が入ってこない様にする。

 

「これで水の中でも目を開けていられるよ」

「ホント?」

「気になるよね。試してみようか」

 

 俺はココちゃんに先ほどと同じ様に潜って貰い、そして、目を開けて貰った。

 水の中でココちゃんは恐る恐るという風な様子で目を開き、水中ゴーグルごしに見た水の中の世界に目を輝かせた。

 どこまでも広がる蒼の世界は、ココちゃんに初めての衝撃を与えたらしく、何かを話そうとして口を開いてしまった。

 その結果、大量の水を飲み込む事になってしまい、俺は慌ててココちゃんを水上に引き上げる。

 

「ココちゃん!」

「ごほっ、ごほっ!」

「おちついて、ゆっくりと呼吸をするんだ。怖くないから」

「はぁ……はぁ、お兄ちゃん!」

「大丈夫!?」

「す、すごい! みずの、なか! 水がいっぱいで、びっくりしちゃったけど! 凄くて、すごい!」

「あー」

「ごほっ、ごほっ、ここ、こんなに、すごいって、おもってなくて!」

「うん。そうだね」

 

 俺は苦しそうにしながらも楽しそうに話すココちゃんの頭を笑顔で撫でた。

 危ないと慌ててしまったが、どうやらココちゃんは俺が思っているよりも強い子だったらしい。

 ホッとしたような、どこか寂しいような、複雑な気持ちだ。

 

「ココちゃん。もう一度見てみるかい?」

「うん。やってみたい」

「そっか。じゃあ今度はビックリしても、水の中で息を吸い込んじゃ駄目だよ。苦しくなっちゃうからね」

「はい!」

 

 ココちゃんの呼吸が落ち着いて来た頃、俺はココちゃんの状態を確認しつつ、再度の挑戦をするかと問う。

 当然の様にココちゃんの返事は肯定で。

 俺は、ココちゃんと共に再び子供用のプールに潜るのだった。

 

 先ほどの事があったからか。

 ココちゃんは水の中で興奮しながらも、落ち着いた様子でゆっくりと周囲を見ていた。

 俺とも目を合わせて、俺が差し出した手を握ってみたりもする。

 

 普段とは違う世界にココちゃんは笑顔のまま水の中を楽しんでいた。

 どうやら少しずつ息を吐きだしてゆくという事を教えなくても理解していたようだ。

 ココちゃんの口の端から小さな気泡が上に流れていった。

 

 良い感じだなと思いながらも俺はひとまず水上に上がろうとココちゃんに提案して、再び水の上に戻る。

 

「ぷはぁっ!」

「うん。凄いね。まさかもうここまで出来る様になるなんて」

「えへっ、えへへ」

 

 呼吸は荒いながらも、先ほどの様にせき込む事はなく、ココちゃんは落ち着いたまま笑う。

 なんて教えがいのある子なのだろうか。

 さて、次は……なんて考えていたらちょうど着替えが終わったのだろう。

 

 桜たちが俺たちを呼んでいる事に気づいた。

 

「お兄ちゃーん! ココちゃーん!」

「ん? 桜が呼んでるね。一度このプールから上がろうか」

「うん」

 

 俺はココちゃんを水の中から抱き上げて、プールサイドへ上げた後、自分自身もプールサイドへと上がって、色とりどりの水着を着た桜たちを迎え入れる。

 実に華やかな事だ。

 そして、やはりというか、ビキニタイプである為、非常に露出が高い。

 

 お兄ちゃんは心配だ。

 

「来たよ!」

「あぁ。思っていたよりも早かったね」

「まー。色々悩んだけど、また気になったら買いに行けば良いしさ。とりあえずはこんなモンで良いかなって」

「うん。まぁ良いんじゃないか?」

「はいはい。露出が多くて気に入らないのね。分かったから」

「いや、それは確かに気になるけど、可愛いと思っている事は確かだよ」

「本音と本音なのに、なんか複雑だわ。まぁ良いけどさ」

 

 桜は苦笑しつつも、楽しみが隠し切れないという様な様子でプールの方へと視線を向けた。

 みんなもワクワクしている様で。

 俺はとりあえず、もう一度各プールの説明をしてから、好きな様に遊ぼうと言って、遊び開始の合図をするのだった。

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