異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第167話『セオストの人気者(気になる子)

 家が改装されたことで出来たプールでココちゃん達と遊んだ次の日。

 ココちゃん達は相当疲れていたらしく、朝俺が出かける時間になっても起きて来なかった。

 体力を使い果たしたのだろう。

 ぐっすりと眠っていた様だった。

 

 そんなココちゃん達をそのままに俺は冒険者組合の仕事で森へと向かうのだった。

 そして、いつもの様に俺は探索部隊の後ろで何かあった際の人員として待機していた……のだが。

 何人かの冒険者に話しかけられる。

 

「おい。見たぞ。リョウ」

「何をです?」

「とぼけるんじゃねぇ! 昨日フィオナちゃんやリリィちゃん達と水着を買いに行ったそうじゃないか!」

「えぇ。確かに行きましたね」

「いつだ!? いつプールに行く予定なんだ!」

「いつって、昨日行きましたけど」

「嘘を吐くな! 昨日プールに行ってた奴は居たが、誰もフィオナちゃん達が来たとは言ってなかったぞ!」

「そうだそうだ!」

「いや、プールに行ったって、ウチの家の中にあるプールなんで」

「な、なんて奴だ」

「また独り占めかよ! チクショウ!」

 

 俺は騒ぎ始めた連中を冷めた目で見捨てながら、自分の仕事に集中する事にした。

 くだらない話だった。

 付き合って損したな。

 

「な、なぁ……! リョウ。俺達友達だろ? お前の家に遊びに行きたいんだが」

「断る」

「そ、そう言わずに! なぁ!?」

「悪いが、俺の妹たちに下心を向ける奴を家に招くつもりはない」

「ノォォォオオオオ!!」

 

 俺は阿鼻叫喚の地獄と化した現場を放置して、ヴィルさんやアレクさんが待っている場所へと向かった。

 普段は良い友人だと感じているが、こういう事になると非常に面倒な連中だ。

 

「おう。また面倒な事になってんな」

「本当に面倒な事ですよ」

「おうおう。腐るな腐るな。連中だって色々必死なのさ」

「まぁ必死なのは良いですけど、桜たちに手を出そうとするのなら、容赦は出来ないですよ」

「おー。怖い怖い」

「あんまり過保護にしてやるなよ? リョウ。そのままじゃサクラちゃんたちも一生独り身なんて事になってしまうぞ」

「それは、確かに困りますね」

「だろう?」

「でも、俺程度に勝てないようじゃ、桜を守り切れるか分かりませんし。微妙ですね」

 

 俺の言葉にヴィルさんとアレクさんは互いに視線を交わしながら肩を竦めた。

 気持ちは分かるが、俺の気持ちも分かってもらいたい物だ。

 兄という奴はいつだって不安なのだ。妹が幸せでいてくれるかどうか。

 

 妹が幸せに笑ってくれるのなら、何だって出来る。

 兄として。

 それが俺の覚悟であり、兄という生き物が全て持っている願いだ。

 

「そのくらいにしておけよ。ヴィル。リョウの奴も何年かすれば落ち着くだろうさ」

「そうか? 俺にはそう思えんが」

「大丈夫だよ。どうせ何年かしたら妹どもの誰かが好きな人とかを連れてくるだろうから、そこで否が応でも妹離れする事になるさ」

「……連れてくると思うか?」

「可能性って奴はいつだってゼロじゃねぇんだ」

「都合のいい言葉だな」

 

 ヴィルさんはアレクさんの言葉に苦笑してから俺の肩を軽く叩いた。

 やり過ぎるなよ。という意味だろう。

 まぁ、特に反論する気はないので、頷いておいた。

 

 そして、何処からか魔物が近づいてきているという声を聞き、俺たちは気持ちを切り替えて武器を抜くのだった。

 仕事の時間だ。

 

 

 それから、何てこともなく普通に仕事を終わらせた俺は、森を解放する仕事の終わりを感じながら、帰宅した。

 そして、一階のリビングへと入り、誰か居るかな? と視線をさ迷わせたが、生憎と誰もいない。

 俺はそのままキッチンにも顔を出してみたが、やはりそこにも誰も居なかった。

 

 上の階に居るのだろうか、と二階、三階と上がってゆくが、どこにも桜たちは居ない。

 プールに居るのかと四階のプールにも行ってみたが、誰も居なかった。

 

 そこで俺はあぁ、と気づき四階の上に向かって階段を上がってゆくのだった。

 辿り着いた我が家の最上階で、俺は扉を開き飛び込んできた光の向こう側へと目を細めた。

 

「あ、お兄ちゃん。おかえりー!」

「あぁ。ただいま。みんなどこにも居ないから、どこに居たかと思ったけど、ここに居たんだね」

「うん。昨日は遊んだけどさ。今日はココちゃんの畑を手伝おうと思って」

「そっか、桜たちは優しいなぁ」

 

 俺はシミジミと呟きながら、畑仕事をしている桜の元へと近づいた。

 

「どんな感じ? 畑は」

「良い感じだよ。とにかく広いからさ。色々出来るんだ」

「へぇ」

 

 桜はよっこいしょと言いながら立ち上がると、指をさしながら場所の説明をしてくれる。

 桜の指を目で追っていくと、それぞれの場所で作業をしている子達が居るのだった。

 

 区画を分ける様に簡単な柵や、看板などがあり、どこで何を育てているのかがすぐに分かる様な状態になっている。

 

「なるほど。ココちゃんが野菜関係を育てていて、ミクちゃん達が薬草。そして、桜が花かぁ」

「そ。実用性ばっかりじゃ面白くないからさ。綺麗だったり、可愛かったりするのも欲しいじゃん?」

「確かにね」

「ここで綺麗な花が出来たらさ、家の中も華やかになるってワケよ」

「うーん。桜は凄いね。いつも俺が気づかない事を見つけてくれる」

「えっへん」

 

 腰に手を当てながら嬉しそうに笑う桜の頭を撫でながら、俺は桜が持っていた花の種を見て、ふむと呟いた。

 どういう花が咲くのかサッパリ分からないが、種は何やらキラキラしている様に見える。

 なんだろうか。これは、桜の可愛さが種にまで影響を与えているのか。

 

「何か光ってるね。種」

「あぁ、そうそう。お兄ちゃんが取ってきてくれた骨あったでしょ。骨」

「うん」

「あの骨をすっごい細かく砕いてさ、水に溶かして、それを軽く種にかけるとなんか種がキラキラ光る様になったんだよ。野菜とか薬草もそれでキラキラ光っててさ。何か凄い事になりそう!」

「へぇ。骨にそんな使い方があったんだねぇ」

「モモちゃんが良いんじゃない? やってみれば。って言ってて、じゃやってみようか。みたいな感じでやってみた」

「思い付きからの実行が大変早い。良い事だ」

 

 俺は面白いモノだと思いながら種を元の場所に戻し、ココちゃん達の元へも向かう事にした。

 畑を踏み荒らさないように、おそらくは通路として用意されている場所を歩く。

 

「ただいま」

「あ、リョウお兄ちゃん。おかえりなさい」

「おかえりなさいー」

 

「この辺りがココちゃんの畑って聞いたよ。楽しみだなぁ」

「うん。がんばる」

「今日もすっごい頑張ってたんだよねぇ。ねー。ココちゃん」

「うん。がんばった!」

 

 フィオナちゃんの言葉に頷いて、自信満々の顔で頷くココちゃんに俺は微笑みながら周囲の畑を見渡した。

 細かく種類が分けられてて、更にその中でも育て方や肥料の有無などで場所を分けている様でもあった。

 かなり本気で農業をやっているようだ。

 

 正直、もう少し手探りな感じで始まるのかと思っていたから、ここまで本格的だとは思わなかった。

 

「ここがね。一番大きな骨の肥料を使ってて、こっちが、大きいのと小さいの骨のあわせた肥料」

「ココちゃん的にはどれが一番良さそう?」

「ココは、たぶん、この色々混ざった場所。モモちゃんが一番手伝ってくれた」

「そうなんだ。じゃあ期待しちゃうね」

「うん」

「あー……ココちゃん。もしかして、もっと骨欲しかったりする? 色々な種類の」

「欲しいっ! あ、いや、うそ、嘘だよ」

「うん。分かったよ」

「あ、あのね。違うよ。こんなに色々貰ったのに」

「大丈夫だよ。野菜は俺からココちゃんに頼んだことなんだからさ。我儘じゃなくて、ココちゃんのお仕事に必要な事なんだ」

「……」

「だから、本当に必要な事なら遠慮なく言って欲しいんだよ」

「……うん」

 

 俺は次の仕事でまた色々な魔物の骨を集めてくるかと考えるのだった。

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