ヤマトへ入り、色々なトラブルがありながらも、フソウという町を目指す事になり。
一日では到着出来ない為、キャンプをする事になり、夜を過ごしていたのだが。
眠りの世界に誘われていた俺は、不意に現れた一人の女性と桜によく似た少女に飛び起きた。
「……!」
「……っ」
互いに言葉もなく見つめ合う。
何だろうか。
何かを警戒している?
というか、ヤマト国内とはいえ、こんな夜遅くに女性と子供だけで歩き回っているのは危険では無いだろうか。
大丈夫なのだろうか。
「あ、あのー」
「……」
「ここは、ヤマトという国の中なので、一応安全かと思いますが、それでも女性と子供だけで歩くのは危険かと」
「……むー」
それとなく危ないですよ。と警告してみたが、何故か桜によく似た子に睨まれてしまった。
何がいけなかったのか。
実はヤマトの子で、凄く強いのから、弱いと言われたみたいで不快に感じたのだろうか。
いや、しかし。とてもじゃないが強いようにはみえない。
少なくとも鍛えている様な感じではないのだ。
なら、何だ?
「何か気になる事を言ったかな」
「言った!」
一応確認してみようと小さい子に聞いてみたが、真っすぐに言ったと返されて、俺はなるほどと頷いてしまった。
どうやら何か失礼な事を言ってしまったらしい。
あー、そうか。アレか。
子供扱いした事で怒ってしまったのか。
「いや、それは申し訳ない。ヤマト以外の国だと、お嬢さんくらいの子は子供として扱うので、そう扱ってしまった」
「……」
「しかし、どうやらお嬢さんは世間の子供達よりもずっと利発で大人びている。謝罪します。申し訳ない」
「むふー。分かればよろしい」
「ありがたき幸せ」
どうやら満足のいく受け答えが出来た様で、お子様の機嫌は直った様だった。
何よりである。
そして、落ち着いたのならと俺は再び同じ様な警告をしてみる事にした。
子供だろうが、大人だろうが、危ない事は変わらないし。
「しかし、こんな夜更けに美しいお嬢様方お二人で歩いているのは危険ではありませんか?」
「問題はない。ここは、わらわの国じゃ」
「ナルホド」
「楓ちゃん。きっと亮さんが心配しているのはそういう事では無いですよ」
「そうなのか?」
「はい。ヤマトでは確かに楓ちゃんが一番偉いですが、魔物とかには楓ちゃんの言葉は通じないでしょう? それに、天霧蒼龍さんの件もありますし」
「確かにの。じゃが、問題ない! また瞬と時道が助けてくれる」
「まぁ、確かにあの二人なら大丈夫かもしれませんが、二人ともここには居ないでしょう?」
「うーむ。確かにのう。しかし、ここにはセシル様も居るし、何より、お主が居るであろう?」
女性と少女は言葉を交わし合っていたが、不意に少女が俺の方へ視線を向けると、確かな信頼を持って指をさしてきた。
その仕草自体は、失礼ですよ。と女性に諫められていたが、視線自体は俺に向いたままだ。
「俺、ですか?」
「そうじゃ。お主は将来、ヤマトや世界を救う勇士となる」
「それは、いったい」
「未来予知じゃ。お主も聞いたことがあるじゃろう? ヤマトの巫女姫の話を」
「……! では貴女が」
「そう! わらわこそがヤマトの巫女姫。楓じゃ!」
衝撃の発言を受けて、俺は咄嗟に頭を下げた。
セオストでも、リリィちゃんにも、ヤマトの巫女姫様には逆らうなと言われた。
巫女姫様が白と言えば、ヤマトにおいては黒い物も白になるのだと。
そんな暴君には見えないが、危険な事をする必要はない。
ひとまずは頭を下げて、機嫌を損ねない事が大切だ。
「巫女姫様でしたか。私はセオストの冒険者です。此度は、依頼の為に貴国へ足を踏み入れております」
「あー。よいよい。そういう固いのはヤマトの住民だけで十分じゃ」
「……」
「ほら、お主は、そのー。上手いんじゃろ。? 女の扱いが」
「何か誤解があるかと思うのですが?」
「そうなのか? 予知では、お主が多くのオナゴに囲まれて、笑っていたが」
「……失礼ながら、巫女姫様の予言も外れる事があるのだなと今理解しました」
「わらわの予言は外れない!」
「しかし、私が女性に囲まれて喜んでいる姿など想像出来ません」
あり得るか? そんな状況。
さっきだって、そういう状況から逃げ出してきたんだぞ。
そもそも俺はそこまで大人の女性が得意では無いのだ。
好みのタイプではあるが、だからと言って話していて緊張しない訳が無いし。
桜たちみたいに、妹と割り切っていれば話もしやすいが、そうでなければどういう話をすれば良いかも分からないのだ。
状況的にあり得ないと言い切れた。
「わらわの予言は外れんぞ!?」
「残念ながら現実的ではありません」
「強情じゃのう。間違いない予言じゃというのに」
「あり得ません」
「むぅ……ここまで強情とは」
「あー、あのー。楓ちゃん?」
「なんじゃ? セシル様」
「楓ちゃんの見た予知の中で、リョウさんはどういった年齢の女性に囲まれていましたか?」
「年齢? あぁ、わらわと同じくらいじゃな」
「あぁ、なるほど。それなら納得しました。大人の女性は居ませんでしたね」
「なんでじゃー!」
お怒りの巫女姫様を流しつつ、俺は何となく状況を理解した。
おそらくだが、桜やココちゃん達か、もしくはミクちゃん達と共にヤマトへ木て、その時に何かしらの事件に巻き込まれるのだろう。
それで解決して、桜たちと喜んでいる所、という事だろう。
しかし、そう考えると、もしかしたら今回ソレが起きる可能性もあるという事だ。
何があっても対処できる様に、常に注意はしておこう。
「ありがとうございます。未来への忠告。確かに受け取らせていただきました」
「さっきまで疑ってた癖に」
「まぁ、私は女性がそこまで得意ではありませんからね。話をするにも緊張するくらいですから。そんな女性に囲まれて笑っているという状況が理解できなかっただけです」
「わらわとは普通に話しているではないか」
「まぁ」
「何が、まぁ。じゃ」
「まぁまぁ」
「お主! まだわらわの事を子供だと思っているのではないか!?」
「その様な事はありませんよ。大人の女性だとしっかり認識しています」
「ふーん。じゃあセシル様と少し話してみぃ」
「セシル様と?」
俺は巫女姫様の隣に立つ女性に目を向けた。
美しい女性だ。
ドクリと心臓の鼓動が高鳴る。
「あー、えと、うん。その、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「はい。私はセシルと申します」
「あ、これは! 丁寧にありがとうございます。自分は亮と言います。小峰亮です!」
「亮さん、ですね。よいお名前ですね」
「光栄です!」
何とか会話を行い、ふぅと汗を拭う。
緊張で体がバラバラになってしまいそうだ。
見た目は同じくらいの年齢か、俺の方が少し上くらいに見えるのに、何故か話していると年上の女性と話をしている様な気分になってしまう。
不思議な感覚だった。
「のぅ。亮」
「どうかされましたか? 巫女姫様」
「……」
「巫女姫様?」
「これが、同じか?」
「……?」
「わらわとセシル様で明らかに接し方が違うでは無いか!」
「まぁ、それは、まぁ」
「やはりお主! わらわの事を子供だと思っておるな!?」
「その様な事はありませんよ。ハハハ」
「ハハハでは無いわ!」
巫女姫様はタタタと軽い足取りで走り寄ってくると、ていやと俺の体に拳をぶつけようとしてきた。
が、当たり所が危ないと、巫女姫様が傷ついてしまうため、俺は巫女姫様の拳を手のひらで受け止める。
これなら痛くないだろうと。
そして、ていてい、と拳をぶつける遊びは巫女姫様も気に入った様で、落ち着くまで繰り返しているのだった。