異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第188話『新しい家族?(楓ちゃん)

 やはり国であるからか、広いヤマト国内を移動する為には夜を明かす必要がある為、俺たちはキャンプをする事になった。

 そんな中、使い過ぎてしまった燃料が燃え尽きるまで火の番をしていた俺は、ヤマトの重要人物である巫女姫様とセシル様に出会い、ちょっとした事から巫女姫様を怒らせてしまう。

 それから、巫女姫様の気がすむまで遊んでいたのだが、意外とアッサリ許してくれ、巫女姫様は地面にあぐらをかいて座っている俺の足の上に座っているのだった。

 昔の桜とそっくりだな……と一瞬思ったが、そういえば最近も似たような事をしていた。

 

 俺は巫女姫様が落ちない様に両手で軽く支えながら、体を軽く左右に揺らすのだった。

 こうすると桜も喜ぶのだ。

 

「時に、小峰亮さん」

「は、はい! どうしました? セシルさん。あ、いえ。セシル様」

「さんで良いですよ。別に呼び捨てでも良いですけど」

「いえ! 流石にそういう訳には! セシルさんと呼ばせていただきますね!」

 

 俺は恐縮しつつセシルさんに返答をし、巫女姫様が桜の様に足をツネって来た為、痛いよーと軽く言いながら頭を撫でる。

 やってしまってから失礼かと思ったが、巫女姫様は特に怒りを示す事なく、体重を俺に預けて、フンと鼻を鳴らすのだった。

 本当に桜とよく似ている子である。

 この位の年齢の子はみんなこういう感じなのだろうか。

 

 と、違う方に思考が流れてしまったが、今はセシルさんの話に集中しなければ!

 俺は気持ちを切り替えてセシルさんの方に視線を向けながら一文字も聞き逃さないぞ! と気合を入れる。

 

 そんな俺を見て、セシルさんはクスリと笑いながら、口を開いた。

 

「実は私、亮さんのファンなんです」

「……? なるほど?」

 

 突然ファンだと言われても困るが……セオストでの戦いの話なんかを聞いたんだろうか。

 俺が有名になりそうな話なんて、新種の魔物との戦いくらいしかないだろうし。

 

 だとしても、やはり気恥ずかしい所だが。

 

「それに『異界冒険譚』も大好きなんです」

「……な、なるほど」

 

 セシルさんの話にとりあえず頷いてみるものの、内容は相変わらずよく分からない。

 そもそも異界冒険譚とは何なのか?

 冒険譚だし、漫画か小説だろうか。

 もしくは絵本か?

 

 駄目だ! 分からん!

 

「ふふ」

「えー! 何ですかね! とても良いと思います!」

「……やっぱり、亮さんも亮さんなのですね」

「え、いや、はい。そ、そうですね?」

「安心しました。亮さんが亮さんであるのなら、これから何が起きても大丈夫ですね」

「……」

 

 何だろうか。

 何か酷く違和感というか、妙な気持ちがある。

 強いて言うのなら、セシルさんがどこかへ消えてしまう様な感覚というか。

 何かを諦めてしまっている様な。

 

 だから、俺は巫女姫様を抱きしめながら立ち上がり、勢いのまま叫んでいた。

 

「俺は! 英雄とかじゃないですけど、セシルさんの事も、守りますからね!」

「っ!」

「出来る事はそんなに多くないですけど、それでも、こうして言葉をかわした貴女を見捨てる様な事はしないです。絶対に」

「……ぷー。わらわは~?」

「あ! 巫女姫様もちゃんと守りますよ!」

「わらわには、楓っていう名前があるんじゃがなー」

「えー、っと、楓様もちゃんと守りますよ?」

「セシル様はセシルさんなのに、わらわは楓様なのか~?」

「楓ちゃんですね。楓ちゃん」

「フン!」

 

 ご機嫌ナナメな楓ちゃんは不機嫌をアピールすると大人しくなった。

 俺はそんな楓ちゃんを抱えたまま、落ち着いた心で地面に座り、楓ちゃんもまた俺に体重を預けてくれるのだった。

 ひとまずは許してくれたらしい。

 

 俺は楓ちゃんを支えたまま正面に座ってくれたセシルさんへと視線を向ける。

 

「えと、色々と話が逸れましたが、言った言葉に変わりはないですよ。セシルさんも、楓ちゃんも、何かあれば守ります。……とは言っても、俺は普段セオストに居るので、状況的に俺の手が届けば、という所ですが」

「えぇ。私はとても嬉しいです。楓ちゃんも」

「フン!」

「あらあら。ご機嫌ナナメになってしまいましたね」

「フーン! じゃ!」

「あ、あはは」

 

 俺は苦笑しながら少しでも機嫌が良くなる様にと体を左右に揺らす。

 それでどれだけ楓ちゃんの機嫌を直す事が出来るのかは分からないが、少しは機嫌が良くなってきたのだろう。

 楓ちゃんは俺の腕を掴んで軽く内側に引っ張る。

 

「なぁ、亮。お前は外の世界から来たのであろう?」

「あぁ、まぁ。そうですね。ヤマトの北側にセオストっていう街がありまして。街なんですけど、国みたいな場所で」

「違う」

「え?」

「セオストの事はわらわも知っておる。そして、お主がセオストの出身では無い事もよく知っておる」

「っ!」

 

 俺はその、楓ちゃんの発言に、話すべき言葉を失った。

 しかし、楓ちゃんは全てを知っていると言わんばかりに言葉を続けるのだった。

 

「セオストの東方にある森はな。ヤマトにも通じておるんじゃ。そして、森の奥には別の世界がある」

「……!」

「国ではない。世界じゃ。そこでは鉄の鳥が空を飛び、大いなる大洋を超えてゆくのだという」

「楓ちゃん、君は」

「ヤマトという国はな。昔、異界より、この世界に来た男が作った国なんじゃ」

「異界から来た男……?」

「そう。その男は異界で、戦争をしていたと言っていた。それも世界を巻き込んだ戦争だと……そして家族を失ったと」

 

 戦争に参加して、家族を失った人という話に、俺は一人の人物を思い出していた。

 西宮院さんの家で見た、資料に書かれた人物。

 元海軍大尉の須藤健二氏行方不明事件――!

 

「その男というのは、まさか、須藤健二さん?」

「そうじゃ。よく知っておるな。知り合いか?」

「いえ。知り合いでは無いです。ただ、須藤さんの行方不明事件は知っていたので」

「そうか。まぁ、男は神となり、この地で最期を迎えたからな。そちらの世界では消えたままという事だろう」

「そうだったのですね」

「そうじゃ。そして……わらわが、このヤマトを建国した神こと、須藤健二の子孫である」

「っ!?」

「どうじゃ? 驚いたか?」

「え、えぇ。かなり」

「そうかそうか」

 

 満足したとでもいう様に、楓ちゃんは俺に寄り掛かって深く息を吐いた。

 少しだが緊張していた様な気配も感じる。

 

「なぁ、亮。向こうの世界の事を教えてはくれんか? わらわには、お前と同じ向こうの世界の人間の血が流れておる。まぁ、だいぶ薄くなってしまったがな」

「わかりました。同じ故郷の出身ですからね」

「おぉ! 良いのか!? それは嬉しいのう」

 

 楽しそうな声ではしゃぐ楓ちゃんに俺は、こっちの世界と向こうの世界で違う所を一つずつ教えてゆくのだった。

 飛行機の話や船の話。

 新幹線や、宇宙ロケットなど、俺が聞いた事のある話は色々と。

 

「そうかぁ。あの空に輝く星にも大地があるのか……異界の人間は何でも知っておるなぁ」

「そうでも無いですよ。俺達が出来ない事が、こっちの世界の人に出来る。という事もあります」

「あるか? そんなこと」

「魔法や魔術。それに楓ちゃんの予知なんかもそうじゃないですか?」

「個人の話ばかりではないか! もっと世界が凄い! という話は無いのか!」

「んー。とは言っても、こっちの世界も基本的には個人が凄いってだけですからね。凄い個人が支援を受けて成功する。みたいな感じですよ」

「そうなのか……夢が無いなぁ」

「まぁ、そんなモノですよ。どこの世界も、きっと」

 

 俺は深く寄り掛かってきて、半分寝ている様な体勢の楓ちゃんに語り掛ける。

 そう。どんな世界でもきっと変わらないのだ。

 一人一人が頑張って、世界を構築している。

 

「そうかぁ……」

「まぁ、だからこの世界も向こうの世界もそんなに変わらないんじゃないですか?」

「うーむ。そうかもしれん。じゃが! わらわは向こうの世界に行ってみたいんじゃ! 連れて行ってくれ! 亮!」

「えぇ……?」

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