異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第195話『フソウの街(ヤマトの中心)

 やや小高い丘を登り、頂上から見下ろした先には、大きな城を最奥に置いた街があった。

 セオスト程ではないが、かなり大きな街に見える。

 

「アレがフソウじゃ!」

「おぉー」

「後ろに見えるのが、フソウの城で、わらわの家じゃ!」

「白くて綺麗なお城ですねぇ」

 

 楓ちゃんがやや遠くに見える街へ指をさしながらモモちゃんとリンちゃんに伝えた言葉に、二人は楽しそうに笑いながら応えた。

 そんな、既に友達の様な仲になっている三人に頬笑みを向けてから、俺はフソウの街へと視線を向けた。

 

 最奥の城を中心として、町全体が左右対称になっている様に見える。

 そして、街を走る道は網目の様に走っていて、遠くから見ても、かなり綺麗な街だと分かった。

 

「では、早速向かおうぞ!」

 

 それから俺たちは楓ちゃんの言葉を合図として、丘を下りフソウの街へと入る。

 近くへ来ると、フソウは街全体も白く美しい場所である事が分かった。

 モモちゃんやリンちゃんも、街の美しさに驚いている様で、キラキラとした目で入り口から街を見渡している。

 

「では、軽く街を見てから城に向かおうかの」

「そうですね!」

 

 モモちゃんとリンちゃんは楓ちゃんに笑顔で頷きながら、街の中へ入っていった。

 俺もそのまま続いて中に入ろうと思ったのが。

 俺は街へ入る前に、以前雷蔵さんに言われた言葉を思い出し、殺気……では無いのだが、警戒心を抑えながら街の中へ入る事にした。

 

 断じて。

 断じて俺は殺気などは出していないのだが!

 

 フソウの街の中ですれ違う人たちは皆穏やか……では無いけれど、俺に戦いを仕掛けてくる事は無かった。

 

「おい! お前ぇ! 肩がぶつかったぞ!」

「なんだぁ? そんなに痛かったのか。ならセシル様に泣きついてくれば良い。痛かったよぉって、泣きながら行って来いよ!」

「何だとぉ!? この野郎! お前をセシル様の所に送ってやるぜ!」

 

 ……いや、治安悪いな。

 そして、セシル様の名前出てるが、良いのかなと思いながら隣にいるセシル様を見る。

 

「良いんですか? セシル様」

「元気なのは良い事ですし。怪我をしてもすぐに治せますからね。多少ヤンチャなのはしょうがない事かと思います」

「そ、そうなんですね」

 

 心が広いというのか。

 放任主義というか。

 

 いや、別にセシル様は彼らの母親でも何でも無いのだから、放任も何も無いか。

 

「おや。セシル様に楓様。お散歩ですか?」

「えぇ。楓ちゃんが外に冒険したいと言いましてね」

「あらあら。楓ちゃんも中々やんちゃですねぇ。先代様の昔を思い出す様ですよ」

「確かに。そうですねぇ」

 

 通りの途中にある店から女性が出て来てセシル様と話を始める。

 俺はそんな二人の話を聞きながらそれとなく周囲の様子を伺っていたのだが、どうやら女性は甘味処の店員さんの様だった。

 

 何となく話が長くなりそうな予感がした俺は、楓ちゃんを呼び、甘味処で軽く食べて行きましょうと提案した。

 まだ昼には早いが、丘を越えるのにかなり体力を使ったし、ちょうど良い様に思える。

 

「うむ。そうじゃな。わらわも空腹じゃ」

「では」

「ここで食べて行きましょうか」

「そうしよう。おい! 何か食べる物を頼む」

「姫様! 承知いたしました! ご用意させていただきます!」

「うむ。しかし、あまり急がんで良いぞ」

 

 楓ちゃんは店先にある長椅子に座ると、足をぶらぶらとさせながら楽しそうに笑う。

 そして、モモちゃんとリンちゃんも椅子に座ると、楓ちゃんと同じ様に足が地面に付けられないまま軽くぶらぶらと揺らす。

 そんな三人の姿を見ていると、それほど似ていないのに、まるで姉妹の様に見えるのだった。

 

「亮、お前も護衛は良いから、何か食えよ。フソウの街で姫様やセシル様を傷つける奴はいないぜ?」

「分かりました。では、お言葉に甘えて」

「ここの甘味処は甘いモノが主だが、主食も売ってるからな。好きな物を食え。ほら。品書き」

「ありがとうございます」

 

 俺は雷蔵さんからメニュー表を貰い、どういう物があるんだろうと確認する。

 中身は、まぁセオストとそれほど変わらない。

 本当は名前が違ったりするんだろうが、

 しかし、まぁ。俺から見ると何も分からない為、とりあえず当たり障りのない物を頼む。

 

「茶でも飲むか?」

「あぁ、お願いします」

「茶も頼む!」

「あいよ!」

 

「……」

「しかし」

「うん? どうしたんですか?」

「いや。俺も少しばかり間違えていたかと思ってな」

「何の話ですか?」

「ほら。お前と会った時に言っただろう? お前が殺気を振りまいているから、狙われるのだと」

「えぇ。聞きましたね」

「そう思ったんだが、どうも違うらしい」

「え?」

 

 俺は雷蔵さんの言葉に周囲を見て、あぁ、と深いため息を吐いた。

 そこには前の街でも見た光景が広がっていた。

 

 そう。幾人もの侍が俺を見ながら刀に手をかけているのだ。

 

「おぉ! 旅人! 姫様と聖女様の護衛をしていたと聞いたぞ! その腕前確かめさせてもらおうか!」

「いや、俺は」

「えぇい。俺との戦いよりも食事を優先するというのか!? ならば食事が終わるまで待つが!」

 

 戦わないという選択肢はないのか。

 ヤマトの住民は戦う事が好き過ぎなのでは無いだろうか。

 と、思いながらも俺は立ちあがり、神刀を抜いた。

 

「やるのは良いが、あまり暴れたくはないんだ。ジタバタ暴れずに終わってくれ」

「フフン。姫様と聖女様の護衛をするだけの事はある。言うじゃないか。ならば、一瞬で終わらせてみろ!」

 

「おー! いくのじゃー! 亮ー!」

「亮さん! 怪我はさせても良いですが、殺しては駄目ですよー!」

 

 ワイワイ、ヤイヤイと騒いでいる外野の中から楓ちゃんやセシルさんの声も聞こえてくる。

 が、俺は返事をしないまま流した。

 どう返事をすれば良かったのか分からないという話もある。

 

 そんな訳で、俺は男の刀をかわしながら、男から刀を弾こうとしたのだが。

 最初の街の侍とは違い、弾くことは出来なかった。

 

 そして、「舐めるな!」と言いながら刀を更に振り回し、俺に迫るのだった。

 その剣戟は、そこまで鋭いという物ではないが、荒々しく、少しでも気を抜けば斬られてしまう様な物だった。

 

 さらに刀を勢いも増しており、巻き起こる土埃は楓ちゃん達の食事を汚す可能性もある。

 そろそろ食事も出来上がるだろうし。終わらせる方が良いだろう。

 という事で、俺は多少傷つくのは仕方ないかと、刀を振り下ろした隙に、刀を持つ男の右手に刃を刺した。

 

「ぐっ!」

「刀を握れなければ、勝負あり、だろう?」

「舐めるな! 片手であろうと!」

「片手じゃ、握りで勝てないぞ」

 

 左手のみで刀を振り下ろそうとした男の腕を捕まえて、俺は首に神刀を付きつける。

 斬ることも刺す事もしないが、走らせれば首が切られる事は分かるだろう。

 

「っ! こ、降参だ」

「それはどうも。腕は治してもらった方が良いですよ」

「あ、あぁ。分かったぜ」

 

 俺は神刀の汚れを布で拭ってから納刀し、甘味処へと戻る。

 そして、ちょうどやって来たお茶を受け取りながら長椅子に座って大きな溜息を吐いた。

 

「お疲れさん」

「えぇ。ありがとうございます」

「いや。すまんな。どうやらお前の殺気以外にも原因はあるようだ」

「そうですね。俺が思うに、ヤマトの侍が好戦的過ぎる所も原因だと思いますよ」

「確かになぁ」

 

「むむ? 強い旅人の侍が出たという話を聞いたが、ここか!?」

「我とも勝負だ! 勝負ぅ!」

「なんだ!? まだ食事中か?」

 

「亮さん。怪我の事は気にしなくても大丈夫ですよ」

「亮! 頑張るのじゃー!」

 

「はぁ……ひとまず応援もあるし。頑張りますか」

 

 俺はお茶を飲み終えてから、再び立ち上がって神刀を抜くのだった。

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