異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第203話『霊刀山で山登り(ハイキング)

 フソウの城から直接神樹のある庭へ転移し、神樹の状態を診たモモちゃんとリンちゃんであったが。

 どうやら神樹が不調の原因は不明との事で。

 俺たちは神樹が不調の原因を調べるべく、フソウの城で楓ちゃん達にヤマトでの事件などを聞いた。

 

 そこで楓ちゃんから聞いたのは、セオストにも現れた魔物が、ヤマトにも現れたという事で。

 俺たちはその魔物が居るという霊刀山へと来た。

 

 そして、霊刀山では幽霊となった侍たちと出会い、彼らからは神刀について聞く事が出来た。

 しかし、そんな彼らからも、神刀の銘を聞く事が出来ず、俺は神刀の銘を知る事は出来ないのかと諦めていた

 だが……。

 

「私は、神刀から銘を聞く方法を知っています」

 

 セシルさんが俺に伝えた言葉は、俺にとって酷く衝撃的な言葉だった。

 

「セシルさん。教えていただく事は可能でしょうか」

「はい。勿論です」

 

 セシルさんは笑顔で頷きながら、ゆるやかな口調で続きを話してくれる。

 

「まず、神刀について話すのなら成り立ちを話した方がより分かりやすいでしょう」

「成り立ち、ですか」

「はい。神刀は元々この世界にあった物では無いのです」

「……という事は異世界から運び込まれたという事でしょうか?」

「いえ、それは正しくないですね」

 

 どういう事だ?

 と俺は疑問をセシルさんに目線で向ける。

 

「ふふ。そう焦らないで下さい。神刀は、異世界から来た方がこの世界で作り出した物なのです」

「っ! なるほど」

「その人の名前は、須藤健二さんという方です」

 

 その名前は俺もよく知っている名前である。

 そう。この世界に来る前に聞いた名前で、この世界でも何度か聞いた名前だ。

 この世界では神として扱われている人でもあった。

 

「彼は、異世界からこちらの世界に渡る時、不思議な力を手にしたといいます」

「それは、魔法の力とか、そういう……?」

「いえ、魔法の力ではありません。そして、魔術やそれに類する様な力でもありません」

「……」

「それは、この世界に存在しない力でした。彼だけが使う事の出来る力。その力で、須藤さんは神刀を作り出し、ヤマトの民に授けたのです」

 

 まさか、そんな事があり得るのか。

 なんて言葉を向けても意味がない。

 

 何故なら、セシルさんはある事が前提で話をしているのだから。

 

「という事は、須藤さんを発見する事が出来れば、銘を知る事が出来るという事でしょうか」

「いえ。残念ながら須藤さんは既に亡くなっているので、須藤さんから情報を聞く事は難しいでしょう」

「……なるほど」

 

 須藤さんから情報を聞く事は出来ない。

 しかし、侍たちも知らない。

 ならばどうやって神刀の銘を知るというのか。

 

「亮さん。全ての物事は繋がっているのです。須藤さんは、異世界で海軍の軍人さんでした。そして、神刀の銘はどうなっていましたか?」

「……どうなって、いた?」

 

 俺は神刀の銘を思い出しながら、須藤さんが軍人であったという事実と繋ぎ合わせる。

 島風、如月、神風……。

 

「俺は、そこまで詳しくないのですが……もしかして、軍艦の、名前、ですか?」

「はい。そうです。須藤さんが作り出した神刀の銘は全て、軍艦の名前なのです」

「つまり、俺が持っている神刀の銘も何かしらの軍艦の名前という事ですか?」

「そういう事です」

「……それが分かったのは確かに嬉しい事ですが、俺はそこまで軍艦に詳しくないですからね。当てられるかどうか……」

「いえいえ。答えはきっと亮さんの中にありますよ」

 

 自信満々に答えるセシルさんに俺はうーんと腕を組みながら悩む。

 いや、本当に分からないのだ。

 軍艦なんて、本当に詳しくないし。

 

 いや、もしかして、俺が知っている軍艦の名前だったりするのか?

 でも……それはそうとして、どうやってこの神刀がその名前だって当てるのかという話なワケだが。

 

「うーん。では、俺が出来る事としては、とりあえず知っている軍艦の名前を全て呼んでみる、とかでしょうか?」

「いえ。その必要はありません」

「……?」

「神刀が貴方に銘を託したいと思った時、貴方の中にその名前があれば、自然と呼ぶ事が出来るでしょう」

「なるほど」

 

 つまり、俺が何かをする必要はないという事か。

 というよりは何も出来ないというのが正しいという事か?

 それなら、この話に意味はあったのだろうか?

 

「あれ? セシルさん? 先ほどの話から考えると、俺が自発的に神刀の銘を知る事は出来ませんよね?」

「確かに、そうですね」

「という事は、俺に出来る事は何も無いのでは……?」

「……確かに、そうですね?」

 

 セシルさんは微妙な顔で笑い、俺は何ともどうしたものかという顔で小さく息を吐いた。

 結論、現状で出来る事は無いのだ。

 何とも悲しい事ではあるが、今の俺に神刀の銘を知る事は出来ないらしい。

 

「あ、えと! ですね!? その、こんなつもりではなく! どうか、怒らないで聞いて欲しいのですが」

「大丈夫ですよ。別に怒ってません」

「そ、それは良かったです」

 

 何故か酷く焦った様子のセシルさんを落ち着かせて、俺はひとまず得た自分の考えを告げる。

 そこまで凄く気にする様な事では無いと思うのだ。

 

「セシルさん」

「は、はい!」

「俺は別に、怒ってませんし。気にしても居ませんよ。いや、むしろ良かったとも思っています」

「そうなのですか?」

「えぇ。だって、セシルさんのお陰で、俺はとりあえず時が来るまで待てば良いと分かりましたからね。ひとまず今は別の事に集中出来ます」

「あ……」

「なので、セシルさんには感謝したいと思っています」

 

 俺は不安そうな顔をしているセシルさんに安心して貰おうと笑いかける。

 別に俺が笑ったから。

 とかでは無いだろうが、セシルさんは少しだけ安心した様な顔で微笑むとホッと息を吐くのだった。

 

 そして、セシルさんとの話が終わりに近づいている頃、霊刀山の山頂が見え始めてきた。

 どうやら思っていたよりも高い山では無いようだ。

 

「そろそろ頂上じゃぞー! 後ろは付いて来ておるかー!?」

「一番後ろは付いてきてますよ!」

「はぁ……はぁ……! だ、大丈夫、よ!」

「はい……! 私も、大丈夫です!」

 

 俺は一番後ろから前の方を眺めるが、どうやら楓ちゃんとリリィちゃんは余裕そうだが、モモちゃんとリンちゃんはしんどそうだった。

 セシルさんと話しながら、何も考えず歩いていたが、よくよく考えれば、だいぶ歩く早さが早かった気がする。

 その早さは、モモちゃんやリンちゃんにとってはかなり負担であったらしく、モモちゃんもリンちゃんも息を切らしていた。

 

「うむ……どうやら少々足が早すぎた様じゃの」

「い、いえ……申し訳ない、です。体力が、なくて」

「いや、モモやリンは悪くないぞ。わらわがもっと気にするべきじゃった。普段は瞬や雷蔵らと移動しておるからの。感覚がおかしくなっておったわ。もう少しで頂上じゃから。頂上でゆっくりと休もうかの」

「あ、ありが、とう……ございます」

 

 モモちゃんとリンちゃんは限界寸前という様な様子で、俺は二人を抱えようかと前に向かったが、モモちゃんとリンちゃんは、後少しだから自分で頑張ると、強く地面を踏みしめて山を登って行くのだった。

 俺は二人が倒れた時には支えようと、後ろで注意しながら登る事にした。

 

 それからそれほど時間は掛からずに、俺たちは霊刀山の頂上へと到着して。

 俺はサッと、頂上の地面にレジャーシートを敷き、モモちゃんとリンちゃんが休める所を用意するのだった。

 

 二人はそれを見て、倒れ込む様にレジャーシートの上で横になり、俺は二人が大丈夫か気にしつつ霊刀山から周囲の景色を眺めた。

 

「……かなり、綺麗な場所みたいだ」

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