異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第219話『百合ちゃんとの生活(日々)3』

 余計な事を口走ったせいで、百合ちゃんが俺から距離を取ってしまったのだが、何とか時間をおいて、言葉を尽くす事で百合ちゃんの機嫌を元に戻す事に成功した。

 いや、機嫌じゃなかったな。距離だ。距離。

 百合ちゃんは何も悪くないからな。

 悪いのは俺だ。

 

「気を取り直して、魔物の観察をしようか」

「そ、そうですね」

 

 まだぎこちない百合ちゃんに、俺は必要以上に気を遣わず、軽く流してゆく。

 あまり長く引っ張っても仕方のない話だし。

 悪い話はサクサクと流していく方が良いだろう。

 

「それで……魔物が集まってる理由だけどさ」

「は、はい」

「俺としてはいくつか仮説があって、一つは魔力を探知しているんじゃないかって話」

「魔力を探知、ですか」

 

 百合ちゃんは俺の言葉に、面白そうな話を聞いた、とでも言う様な顔で何度も頷く。

 そして、草むらから隠れながら小さな魔物たちを見据えた。

 

「確かにあり得るかもしれないですね」

「でしょ? 視覚とか聴覚とか嗅覚に頼るのも限界があるしさ。何かしらの特別な探知器官が付いてるんじゃないかって思うんだよね」

「そうですね。あれだけ集まってきていますもんね」

「しかし、そうなると、何かしらの魔力を探す事も出来るのではないでしょうか?」

「魔物を使って?」

「はい。人を探すとか、物を探すとか。そういう事の為にも魔物が使えるのではないかと」

「……警察犬みたいな奴か。確かに出来るのかもしれないね」

 

 俺は百合ちゃんの言葉に、前の世界での事を思い出していた。

 警察犬は匂いで追跡しているが、魔物が魔力で追跡が出来るのであれば、確かに人や物を見つける事が出来るかもしれない。

 

 セオストに戻ったら、魔物をペットにしている人に聞いてみるのも良いかもしれない。

 何なら仕事仲間的に家で飼い始めても良いのか?

 

「ふむ」

「どうしました?」

「いや。もし魔物が本当に魔力探知できるのなら、家で飼うのも良いかもなぁーって思ってさ」

「確かにそうですね。でも、魔物は危険ですから。何かあると危険ですし。飼うのであれば注意は必要だと思います」

「まぁ、そうだね。それはそうだ」

「なので、もし、育てる場合は、私も協力しますね!」

 

 楽しそうなワクワクとした顔で笑う百合ちゃんに、俺はその時が来たらよろしく頼むよ。

 なんて言いながら、もう一個の説を口にする事にした。

 

「もう一個。別の仮説としてはさ」

「はい!」

「ただの偶然っていう説がある」

「偶然、ですか?」

「そう。ほら、ヤマトには多くの小さな魔物がいるって話をしていただろう? そんな風に多くの魔物の中で偶然この近くを通りかかった魔物が、あぁして食べているっていう話さ」

「うーん」

「納得できない?」

「そうですね。あまり納得出来ないです。だって、あんなにいっぱい居るのに、偶然だなんて」

「数はね、実はそこまで重要じゃなくて。俺たちは小さな魔物が集まっているっていう状態を見てから話をしている訳じゃない」

「……はい」

「だから、もう結果から見てしまっているから、可能性が見えないんじゃないかって話」

「えー、っと? ちょっとよく分からないです」

 

 首を傾げる百合ちゃんに、俺はどうやって説明すれば良いかと考える。

 中々説明が難しい話なのだ。

 

「なんと説明すれば良いか難しいんだけど。昨日の時点では、あの魔物の骨や内臓に、小さな魔物が呼び寄せられる可能性と、何も居ない可能性の両方があった訳でしょ?」

「はい」

「それで、今日になって目撃したら、多くの魔物が呼び寄せられていたっていう結果があって。それを俺たちが見ているワケだ。だから、ここから逆に理由を考えても、結果はどうやっても魔物が来ていた未来になっちゃうってワケなんだなぁ」

「あー。なるほど。理解出来ました」

「それは良かった」

「でも、確かに。そうですね。そう考えると、特に理由は無いのかもしれません」

「そこで! だ」

「はい?」

 

 俺は人差し指を立てながら一つの提案をする事にした。

 可能性がいくつもあるのならば、どうするか。

 

「今日も別の魔物を狩って、その魔物の骨と内臓を別の場所に置いてみよう。これで何かが分かるかもしれない」

「おー! 確かにそうですね! やってみましょう!」

「そうと決まれば。何か魔物を狩ろうかと思うのだけれども。何か良い奴は居るかね」

「どうでしょうか。この辺りのどこかに現れるかとは思うのですが」

 

 俺は百合ちゃんと共にうーんと考えながら、隠れていた草むらから外に出た。

 そして、百合ちゃんと少し離れた場所まで移動しつつ、獲物を探す。

 

 しかし、獲物は中々見つかる事は無かった。

 

「うーん? 今日は居ないね。もしかして、別の人が狩りに来たのかな」

「だとしても、一匹あれば大抵の人は十分ですし。偶然見かけないだけかなと思いますが」

「ふむ。偶然、か」

 

 これもなんか魔物の習性の一つなのかもしれない。

 しかし、仮にそうだとして、それがどういう習性なのかは謎だ。

 あり得るとすれば、縄張りとか……か?

 

「あのさ。百合ちゃん」

「はい?」

「百合ちゃんは、ヤマトで同じ場所の連日の狩りってやったことある?」

「あー、いえ。無いですね」

「もしかしたら、なんだけどさ。大型の魔物同士で、縄張りみたいなのがあるのかもしれないって思って」

「縄張り、ですか」

「そう。この辺りは、あのオオカミの魔物が支配する場所でさ。ここより向こうの方が別の魔物の支配地域。みたいな事って無いのかな」

「どうでしょうか。そういう話は聞いたことがありませんが……でも、全くないとは思わないですね」

「そうなの?」

「はい。大型の魔物は、侍に狙われますが、基本的に侍も魔物狩り以外の方法で食料を得る手段を多く持ってますから。まったく狩りをしないという時期もあるんです。狩場は基本的に遠いですからね」

「あー。そう考えると、ちょっと分かった事があるんだけど。ヤマトの人たちの町って、基本的に壁が無いじゃない。それなら、大型の魔物に襲われる筈だよね?」

「えぇ。そうですね」

「でも、そんなに何度も襲われているなら、簡易的な障害でも何でも置くのに、全くない。これは魔物が侍のいる場所を危険地帯として理解しているからで。それは魔物同士で縄張りがある。強者には近づかないという意識があるから、じゃないかな!?」

「あー。あー、そうですね。そう言われると、確かに」

「そう考えると、あの大型の魔物がある程度、餌を食べて、寝て起きて、歩き回って。くらいの範囲はあの魔物の縄張りだったんじゃないかな」

「あり得ますね」

「なら、もうちょっと先へ行けば、流石にあの魔物でも遠すぎるくらいの場所になると思う。骨とかに集まってた小型の魔物はいっぱいいたからね」

 

 俺は一つの仮説を打ち立てて、それを立証する為に、百合ちゃんと共に、少し遠くまで魔物を探しに移動した。

 

 そして。

 まだ俺の仮説が正しいと立証されたわけじゃないだろうが、一匹の巨大な魔物を見つけるのだった。

 昨日よりも大型で、しかし、動きはかなりゆっくりなタイプの魔物だ。

 

「見つけたね」

「そうですね。では、まずは狩りましょうか」

「そうしよう!」

 

 俺たちはそれぞれ神刀を抜きながら、大型の魔物へ向けて駆けて行った。

 それも昨日同様。そこまで強くはなく。俺たちは容易く魔物を討伐する事に成功した。

 

 そして、昨日と同じ様に解体作業をして、肉を鞄に詰め込んでから、骨と内臓をそれぞれ別の場所に置く。

 

「これで、明日。確認しに来た時に、魔物の動きで真実に少し近づけるかもしれない」

「はい。では、また明日も来ましょうか」

「あー。でもさ」

「はい?」

「あぁ、いや。流石にもう肉は要らないかなって思って」

 

 俺は大量に肉が詰まった鞄を見ながらそんな事を呟く。

 今は春だし。魔物が捕まらないという事も無いだろう。

 ならば、これから先は狩り以外の方法で調査がしたいところだ

 

「そうですね。では調査を主として、明日以降は活動しましょうか」

「良いの?」

「はい。私は問題ありませんよ」

 

 笑顔でそう言ってくれる百合ちゃんに感謝しつつ、俺たちは家に向かって帰宅するのだった。

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