異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第221話『百合ちゃんとの生活(日々)5』

 一日目に餌を置いた場所から二日目に餌を置いた場所までの距離と同じくらい、一日目に餌を置いた場所から反対側に走って行った俺達は、ちょうど良い所に大型の魔物を見つけ、走りながら神刀を抜いた。

 

 そして、俺が先行し、囮になりながらイノシシの様な魔物の肩辺りを斬りつける。

 既に俺たちに向かって走り出そうとしていたイノシシは、その攻撃でバランスを崩し、雄叫びを上げながら横倒しになった。

 そのすぐ後に、百合ちゃんがイノシシの首に神刀を突きさしてトドメを刺すのだった。

 

「じゃ、とりあえず解体して食事にしようか」

「そうですね!」

 

 それから、俺たちはすぐにイノシシを解体し、火の準備をしてから昼食としてイノシシを食すのだった。

 イノシシは中々食べ応えがあり、食べきれない分は持ち帰る用として準備しておく。

 

 そして十分に腹ごしらえをしてから、俺たちは荷物を置き周辺の探索を始めるのだった。

 調べるのは、小さな魔物の生息場所や、どういう魔物が居るか、だ。

 

「……む?」

「いました?」

「あぁ。あの草むらの中で何かが動いた」

 

 俺は百合ちゃんと小声で話ながら身をかがめる。

 そして、草むらに指を差しながら百合ちゃんに、何かの魔物が居ると伝えた。

 

「……あ。確かに動きましたね。ウサギとかでは無さそうです」

「そうだね。もうちょっと大きいな。でも鳥じゃないみたいだ」

「あ。そうですよね。鳥は草むらには居ないですもんね」

「まぁすぐ傍に木があるからね。そっちの枝とかに居るんじゃないかなとは思うよ」

 

 俺は木を見上げながらそんな事を百合ちゃんに言って、百合ちゃんもなるほどと言いながら近くの木々を見上げて、鳥を探している様だった。

 俺はそんな百合ちゃんを見つつ、地面の方を見て、何か別の魔物は居ないかと探す。

 しかし、木の上にも下にも魔物は居ない様だった。

 

「ふむ。居ないね」

「そうですね。あの一匹くらいしか居ないみたいです」

「うーん。そうなると、別の場所に生息してるって感じなのかな?」

「餌を見つけてから集まる、みたいな感じでしょうか」

「そう。そういう感じ。だから大きな餌が出るまでは、基本的に浅く広く暮らしていて、大きな餌が出ると集まってくる。みたいな」

「あー。なるほど」

 

 百合ちゃんと言葉を交わしながら、俺はこれからどうするべきか考える。

 ひとまず何か魔物の生態の尻尾の様な物を見つけた気がするし、これを追いたい気もするのだが……。

 

「どうしましょうか」

「と言うと?」

「ちょうど、先ほど狩った魔物の骨と内臓もありますし。あれを見ながら経過観察するのも良いかなと思っていたのですが」

「百合ちゃんは大丈夫なの? 家に帰らなくて」

「私は別に……。冒険者をやっていた時は外で泊っていく事は結構ありましたし」

「あー、そうか。確かになぁ。じゃあ、今日は夜遅くまで観察してみようか」

「はい!」

 

 という訳で、俺たちは骨や内臓を観察しやすい場所に配置し、そこから少し離れた場所に簡易的な野営地を作った。

 木や草で壁と屋根を作り、雨風はしのげる簡易的な家だ。

 中に寝袋も置いたし。寝ながら観察を続ける事も出来る優れものである。

 

 そして夜間となっても見える様に、骨や内臓の近くで火を燃やして、見える様にしておく。

 これで魔物が近づいてこないという可能性もあるが、その時はまたその時考えるとしよう。

 

 今日、どうにも動きが無かったら、百合ちゃんの家に戻って別の灯りを持ってくるか、もしくは夜の闇に目を慣れさせて、どうにか見るか。

 まぁ、駄目だった時は駄目だった時でまた考えるとしよう。

 

 という訳で、俺は色々と仕掛けの準備をしてから、野営地で百合ちゃんと話しながら夜を待ち、食事を終えてから、息を潜めて骨と内臓を見続けるのだった。

 

「しかし」

「どうしました? 亮さん」

「いや、ちょっと魔物を狩りすぎたかなって心配になってさ」

「心配……?」

「そ。このまま魔物が全滅とかしちゃったら、食料が無くなるしさ。大丈夫かなって思ってたんだ」

「あぁ。そういう心配ですか。それなら大丈夫だと思いますよ」

「そうなの?」

「はい。凄い昔に同じような心配をした方が居て、その方が……あー、その方はドラスケラウさんっていう人なんですけど。凄い魔術や、魔導具を作った方で、転移魔術装置の基礎を作った方でもあるんです」

「へぇ。そんな凄い人も気になってたんだね」

「はい。今から千年くらい前に生まれた方なんですが、何故か千年先の魔物の数まで調べてまして」

「なるほど……頭の良い人はよく分からない事を調べるんだね」

「ふふ。そうですね。それで、調べた結果。ドラスケラウさんが生きた千年前と現代で魔物の数はほぼ変わらない……どころか増えるんじゃないかって予測していたんです」

「うん」

「それで……ドラスケラウさんのいた時代から人類がより魔導具や魔術を進化させて、効率よく狩りが出来るようになったと仮定して……それでも魔物の増加の方が早いという結論を出していました」

「なるほど……でもさ。ほら、仮に魔術とかが進歩しなくても、個人で凄い強い人が現れる可能性はあるじゃない? ヤマトの人たちみたいに、みんな強いみたいな国もあるワケだし」

「ふふふ。それもドラスケラウさんは予測していましたよ」

「ホントに? それは凄いね」

「そうですね。本当に凄い人だと思います。それで、もし、仮に、世界全ての人が達人となったとして、その状態でようやく魔物を殲滅出来るだけの力を人間が得る事が出来る……のですが」

「ですが?」

「それで得た肉や骨などの処理が人類では出来ない為、結局、人類が生きられる量を狩り続けているだけでは魔物を滅ぼす事は出来ない。という結論でした」

「なるほどなぁ」

 

 百合ちゃんの話を聞きながら、イノシシの肉を食べて、スープを飲む。

 おそらく、魔物の方が数が多く、繁殖の速度も魔物の方が早いのだろう。

 

 それに。

 ヤマトなどの一部の例外を除いて、基本的に魔物の方が人類よりも強いからな。

 狩ると言っても限界があるだろうし。農作やら稲作やら他にも食料を得る手段は色々とあるからな。

 一応魚釣りなんかも出来るらしいし。

 まぁ、川魚ばっかりだけれども。

 

「まぁ、そういう事情なら多少の魔物狩りは特に問題なさそうだね」

「はい。大丈夫だと思います」

「それは良かったよ。やりすぎて、ヤマトの人たちの食料が無くなったとかになったら最悪だからね」

「ふふ。そうですね」

 

 百合ちゃんは微笑みながら、楽しそうに話をしていた。

 それを見ていると、百合ちゃんの実家に来ることが出来て、こうして魔物の調査をはじめて良かったなと思う。

 

 百合ちゃんと多くの時間を過ごす事で、何となく百合ちゃんの好きな事とか、求める事が分かってきた様な気がする。

 その内、釣りとかやってみるのも良いかもしれないな。

 なんて、俺は何となく思うのだった。

 

 いや、しかし……ヤマトに釣りという物はあるのだろうか。

 

「百合ちゃんさ」

「はい? なんでしょうか」

「釣りってやったことある?」

「ありますよ。お祭りではよくやりました」

「祭り?」

「はい。金魚釣りと言って、金色の魚を釣るんです」

「あぁ……そういえばあったねぇ」

 

 俺もセオストの祭りで見たなと思い出しながら、出来るなら、その釣りを俺達もやってみるかと百合ちゃんに提案するのだった。

 

「普通の釣りってヤマトでも、多分出来るんだよね?」

「はい。川がありますので。そこで釣りは出来ると思います。皆さん、あまりやりませんけど」

「そうなの?」

「まぁ、魔物を狩る方が早いですからね。私もやった事はありません」

「そうなんだ。じゃあさ。今度やってみない?」

「あー。そうですね! 私もちょっと興味があります」

「よっし。じゃあ決まりだね」

 

 俺は百合ちゃんと今度の約束をしつつ、夕食の片づけをして、簡易野営地に入るのだった。

 今日の夜は長くなる。

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