異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第225話『百合ちゃんとの生活(日々)8』

 百合ちゃんの家に戻った俺達は、百合ちゃんのお母さんから邪推されたが、俺たちはひとまず事情を説明し、何とか納得してもらう事に成功した。

 

「まったくもう。二人とも照れ屋なのねぇ」

 

 成功したハズだ……。

 成功したと思いたい。

 

「あぁ。二人ともお帰り。フソウはどうだった?」

「え?」

「えぇ。あまりゆっくりは出来なかったみたいだけど。仕事は十分に出来たそうよ」

「そうか。そうか。中央の仕事も大変だろうが、無理はしないようになぁ」

 

 俺は百合ちゃんのお父さんとお母さんの話にポカンとしてしまったが、百合ちゃんのお母さんが後で事情を教えてくれるのだった。

 

「えぇー!? 私たちが昨日帰らなかったのは、フソウから呼ばれたって伝えたって、本当なの!? お母さん!」

「えぇ。そうでも言わないと、お父さんったら、また気にしちゃうでしょ? だから、お母さんが誤魔化しておいてあげたから」

「……あ、ありがとう」

「良いのよ。これも娘と未来の息子の為だから……」

「お母さん!」

 

「アハハ。まぁまぁお母さんに任せておきなさい」

 

 百合ちゃんのお母さんは実に楽しそうな笑顔で、ふわふわと浮くような動きで俺たちの前から離れて行った。

 それを見て、百合ちゃんはぐぬぬ、と何ともいえない顔をしていたが、結局お母さんのお陰でトラブルもなく終わった為、何も言う事が出来ず、言葉を飲み込んでいるのだった。

 

 そして、俺も何とも言えない気持ちを抱えながら、ひとまず帰宅してからのお風呂や朝食を頂くのだった。

 

「そういえば、二人は今日どうするの?」

「何も決まってないけど。お母さん何かある?」

「いいえ。何も無いわよ? ただ、そのね。うふふ。昨日と同じなら先に言っておいた方が良いかもねと思っただけ」

「だから! そういうのじゃないんだって! 本当にもう!」

「まぁ、そうよねぇ。まだ百合も子供だものね」

「そ、そうだよ? 亮さんは大人の女の人が好きなんだから」

「分かってるわ。お母さん。ちゃんと分かってるから」

「……お母さん」

「まだ百合も子供だから、亮さんも遠慮しているのね。お母さんちゃんと分かってるわ」

「だから! 違うんだって!」

 

 百合ちゃんと百合ちゃんのお母さんのやり取りを聞きながら、俺は味噌汁をズズズと飲んだ。

 親子のやり取りに外部の人間が口を挟むべきではない。

 という建前を置きつつ、俺が何か口を挟むという事も難しい為、黙っているだけである。

 

 いや、この状況で何を言えば良いのか。という話でもある訳だけれども。

 

「でも、今日はどうするの? 一応何かあった時に心配だから聞いておきたいわ」

「あー。それなら、どうしましょうか? 亮さん」

「そうだね。一回、魔物の餌は放置したいから、今日は何か別の事をやりたい気がするけど……百合ちゃんは何かある?」

「私は、特にはありませんね。亮さんに付いて行こうと思っていましたので」

「そっか。なら……前に話してた釣り、やってみる?」

「良いですね! 私も興味があります!」

 

「あら。釣りをしに行くの? ならお父さんに道具を借りて行きなさいな。昔使ってたものがあるはずよ」

「そうなんだ。じゃあ言ってみる」

「えぇ、えぇ。二人が落ち着いて釣り。そういうのも良いと思うわ。お母さんも昔はお父さんとお出かけをよくしたもの」

「お母さん!」

「おほほ。じゃあお母さんは家の事やってるから。後はお若いお二人で~」

「もう!」

 

 百合ちゃんはお母さんと、仲の良い言い争いをしてから、はぁと溜息を吐いた。

 そして、俺の方へ顔を向けると、ペコリと小さく頭を下げる。

 

「ごめんなさい。亮さん。騒がしい家で」

「いやいや。楽しい家だと思うよ。俺は。賑やかでも楽しいって何よりも良い事だと思うしね」

「そうでしょうか?」

「あぁ。少なくとも俺はそう思うね」

 

 俺はどこか不満そうな顔をしている百合ちゃんに、笑い掛けながら再び味噌汁に戻った。

 何はともあれ、まずは朝食である。

 

 百合ちゃんは俺の行動を見て少し落ち着いたのか、自分も朝食の続きを食べ始めた。

 そして、ゆっくりと朝食を食べ終えてから俺たちは釣り道具を借りる為に百合ちゃんのお父さんの元へ向かうのだった。

 

 

 百合ちゃんのお父さんに釣り道具について聞くと、家の奥にある倉庫に案内してくれ、中から釣り道具を二つ用意してくれた。

 

「釣り竿はこれで、糸とかの道具はこっちの箱に入っているから。餌は現地で取るか……もしくは家で作っていくと良いぞ」

「分かりました。じゃあ餌はどうしようか」

「現地でも良いと思いますよ」

「虫とかを使うと思うんだけど、百合ちゃん触れるかな……。最悪は俺が全部やるけど」

「でも……それは申し訳ないので、餌は作っていく方が良いと思います」

「まぁ、そうだね。了解だよ。じゃあ俺は準備してるから」

 

 俺は釣り道具を百合ちゃんのお父さんから受け取りながら、出かける準備をする。

 ……事にしたのだが、百合ちゃんのお父さんがジッと俺の事を見ていた為、声を掛けた。

 

「えと、何か?」

「いや。釣りはしたことがあるのかなと思ってね」

「え、えぇ。ありますよ」

「そうか。しかし、ヤマトの釣りをした事は無いだろう?」

「まぁ、それはそうですね」

「ふむ」

 

 百合ちゃんのお父さんは俺の反応に小さく頷いてから、一つずつ道具の説明をしてくれる。

 何となく使い方は分かるのだけど、丁寧に説明してくれているので、断るのも申し訳ない。

 

 そして、その説明会は百合ちゃん達が餌の準備を終えるまで続き、百合ちゃんが来てからもまだ話したそうにしていた。

 もしかしたら、釣りが好きで釣りをしようとしている人を見つけて喜んでいるのかもしれない。

 

「えと、百合ちゃんのお父さんも釣りに行きますか?」

「いや。折角だ。二人で行く方が良いだろう」

「そ、そうですか?」

「ただし、釣りは難しいからな。何か困った事があれば、何でも聞いて欲しいと思う」

「なるほど。しかし、釣りはこの辺りでは出来ないんですよね?」

「まぁ、そうだな。少し離れた場所に川があるから、釣りはそこでする方が良いが……。あぁ! そうだ! 地図を持って来よう! 場所が分からないと困るだろうからな!」

「あー! いや、そこまで……」

 

 しなくても大丈夫ですよ。

 と言おうとしたが、勢いよく走り出してしまった百合ちゃんのお父さんには声が届かず、俺は宙に手を伸ばしたまま百合ちゃんのお父さんの帰りを待つのだった。

 

 そして、百合ちゃんのお父さんからハグロの町周辺の地図を受け取って、俺は百合ちゃんと共に川へ向けて歩き始めた。

 地図はザックリとしたものであるが、方向も景色も書いてあるし道に迷う事は無さそうである。

 

「……しかし、なかなか勢いが凄かったね」

「申し訳ないです。お父さんが……いや、お母さんもですが」

「良いと思うよ。まぁ、ビックリはしたけどさ」

「う……」

 

 百合ちゃんは複雑な顔をしながら、遠くを見て小さくため息を吐いた。

 そんな百合ちゃんを見守りつつ、俺は静かに隣を歩くのだった。

 

 そして、俺たちはハグロの町を出て、ノンビリと歩き、それなりに歩いてから山の近くにある川に向かい、その近くにある中くらいの石がゴロゴロしている場所に荷物を置いた。

 

「結構綺麗な所だね」

「そうですね。水がずっと流れていて……綺麗。あの水はどこから来るのでしょうか?」

「うーん。雨とかじゃないかな」

「雨? でも、最近は雨とかあまり降って無いですよね?」

「そうなんだけど。雨水が直接川になる訳じゃなくて、一回山の地下に溜まって、ちょっとずつ流れ出しているんだよ。それが川になってる感じなんだ」

「なるほど?」

 

 百合ちゃんはよく分からないという様な顔をしていたが、それはそれとして頷いてくれるのだった。

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