異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第230話『百合ちゃんとの生活(日々)13』

 百合ちゃんと釣りをしようと川に来て、何故か水遊びをする事になり、春だというのに川の中で泳いだりした。

 まぁ、まぁ。それなりに暖かい日であったからそこまで寒いという事も無かったが、それでも十分に体は冷えてしまっただろう。

 という訳で、俺たちはたき火の前で座りながら体を温めるのだった。

 

「ふぅ……温まる」

「そうですねぇ」

「しかし、今日は驚いたよ。まさか百合ちゃんがこんなに元気な子だったとは……思ってもみなかったね」

「いやぁ……お恥ずかしい」

 

 百合ちゃんはテレテレと自分の頭を撫でながら首を傾げた。

 その姿は年相応の少女らしく、とても良いものに思えた。

 

「まぁ、百合ちゃんが楽しかったのならそれが一番だとは思うけどね。セオストじゃあ結構引っ込み思案だったしさ」

「そうですね。何となくですが、ヤマトに来てから解放感があって。今日は特にうわー! って感じで自由になれた気がしました」

「楽しかった?」

「それはもう。勿論ですよ。凄く楽しかったです」

「なぁ、まぁ良かったかな。って俺は思うよ」

 

 俺は百合ちゃんが笑顔で楽しかったと言っている事が嬉しく、それなら良かったと頷きながらホッと息を吐いた。

 まぁ、これだけ水遊びが好きなら、家のプールでも楽しんでくれるだろうと思う。

 

 あぁ、でも……と俺は思い出して、悪戯っぽく笑いながら百合ちゃんに忠告した。

 

「楽しかったのなら良かったけどさ。家のプールで遊ぶ時はちゃんと水着を着てね。桜たちもビックリしちゃうから」

「いや! 流石にやらないですよ! 今になって、冷静になってみたら、酷く恥ずかしくなってきましたし」

「ほら……俺の言った通りだろう? 兄は間違えないのだ」

「う、うぅ……」

 

 もじもじと火の前で自分の体を抱きしめながら恥ずかしそうにしている百合ちゃんに、俺はそれ見た事かと言葉を向けた。

 忠告はしていたのだ。

 しかし、百合ちゃんが我儘を言って、恥ずかしい事をした結果がこれである。

 厳しいかもしれないが、厳しくするべきところは厳しくするべきだろう。

 

 ……いや、でも責めすぎるのも良くないかな。

 まだまだ百合ちゃんは子供なんだし。

 うん。

 

「まぁ、これも経験って事だね。百合ちゃんもまだまだ子供だしさ。これから色々な事を学んでいけば良いと思うよ」

「む」

「失敗っていうのは、失敗した事が恥ずかしい事じゃなくて、それを繰り返す事で……」

「亮さん」

「うん?」

 

 百合ちゃんの行動をフォローしつつ、今後についての話なんかをしていた俺は、不意に百合ちゃんから鋭い声をかけられて、動きを止めた。

 なんだろうか。

 妙に声が冷たかった様な気がする。

 

 あ、いや、冷たいとも違うか。

 何かに怒っている様なそんな声だ。

 

「えと?」

「亮さん。私って、子供ですか?」

「え? いや、まぁ。子供だと思うけど……」

「本当に子供ですか!?」

「うん。子供だと思うよ」

「むー!」

 

 膨れている。

 子供らしく。

 

 百合ちゃんの怒っている姿は非常に子供らしい物で。

 どこからどう見ても子供であった。

 

「大丈夫。百合ちゃんはまだまだ子供だよ。失敗しても問題ない様な年で……」

「私は子供ではありません!」

「子供はみんなそう言うんだよね」

「じゃ、じゃあ! 亮さんも子供です! 子供! ほら、どうですか!? 子供ですよ!」

「まぁ、俺もまだまだ未熟だからね。そういう意味じゃあ子供だと思うよ」

「むー!!」

 

 百合ちゃんは先ほどよりも激しく怒りを示して、俺をジッと睨みつけた。

 いや、睨むというよりは強く見据えるという様な表情であったが。

 それはそれとして、俺の発言に怒りを示している事に違いは無いだろう。

 

 怒っているのだ。

 

「えーと? 百合ちゃんは何を怒っているのかな」

「別に? 怒ってませんけど?」

「いや、凄い怒ってるよね? 流石にそれは嘘だよね?」

「怒ってません!!」

 

 怒ってるじゃないか……。

 と、言っても認めない事は桜との長い付き合いで分かっている。

 妹は怒ると兄のいう事を何でも否定するのだ。

 

 そして、おそらく百合ちゃんは今、その状態になっていると思われる。

 さて。

 こうなると妹の不機嫌の理由を見つけなくては、機嫌は直らないだろう。

 まぁ? 時間が解決する事もあるけれど、可愛い妹に嫌われるというのは体に良くないから、なるべく早く仲直りはしたいものだ。

 

 という訳で、俺は懐柔作戦に入る事にした。

 

「あー。百合ちゃん」

「はい? 何でしょうか?」

「えっと、だね……何か甘い物でも食べる?」

「お夕飯が食べられなくなるので要りません!」

「そ、そっか。そうだよね」

 

 お菓子作戦失敗!!

 さてさて。困ったねぇ。

 八方ふさがりって奴だー。

 

 次はどうする!?

 桜に有効だった手はなんだ!?

 

「えーあー。その……さ」

「なんですか!?」

「いや……そのだね。百合ちゃんはやっぱり可愛いね」

「もしかして、桜ちゃんと同じ様に接すれば良いみたいに考えてますか?」

「っ!? ま、まままさか! そんなワケないよ!」

 

 ズバリ言い当てられてしまった俺は動揺しながら叫んだが。

 ジト―っとした百合ちゃんの目は鋭くなるばかりだ。

 

 しかも俺が身を逸らして、顔を別の方へ向けると、猫の様に四つん這いになって、俺の方に迫りジーっと俺を見つめていた。

 どうしようもない!

 逃げ場すらないぞ!

 

 しかたない。こうなった以上。俺に出来る事は一つだ。

 

「降参しよう!」

「……まぁ良いでしょう」

「ふぅ。助かった……」

 

 俺は胸を撫でおろしながら、ひとまず嵐が去った事に安堵した。

 そして、一応地雷を再び踏まない様に気を付けながら百合ちゃんに問う。

 

「えっと、後学の為にお聞きしたいんですけど。百合ちゃんは何故怒ってらっしゃったので?」

「それは……その、まぁ、色々とありまして」

「なるほど」

 

 まぁ色々あったのなら、しょうがないわ。

 桜もよく色々あって怒ってるからな。

 女の子ってのはそういうモンなのだ。

 妹も女の子だから、その辺りは変わらないだろう。

 

「じゃあ、まぁしょうがないね」

「……理由、気にならないんですか?」

「気にはなるけど。まぁ。桜もよく色々あるって言ってたし。女の子には色々あるんだって思って納得してるよ」

「……それもなんか複雑ですが」

「まぁまぁ。そういう色々を積み重ねて大人になっていくんだろうし。良いんじゃないかな」

「はぁ……結局子供扱いのまま」

「百合ちゃんは可愛い妹だからね。そうなっちゃうのもしょうがない事だよ」

 

 何となく百合ちゃんの怒っていた場所も分かり、俺は帰る準備をしながら立ち上がった。

 そして、百合ちゃんも帰る気配を感じたのか荷物をまとめる様に動く。

 

「あー。でもさ」

「はい?」

「確かにこうやって、遊んでいる時とか、ゆっくりしている時は子供扱いしちゃうかもだけど。冒険者として動いている時は信頼してるよ。その辺りの大人よりもさ」

「……それは、大人扱いをしているという事でしょうか?」

「まぁ、そうだね。そして、背中を預けられる相棒。みたいな感じかな」

「なるほど……じゃあ、まぁ良いでしょう」

 

 百合ちゃんは、澄ましている様な表情を保とうとしながら、どこか笑みが抑えられないという様な様子で頷いていた。

 ツンとした顔をしていても、口元が動き、今にも満面の笑顔になってしまいそうだ。

 

 こういう所で素直に笑ったり、喜んだりしないから子供っぽいと言っているのだけれど。

 まぁ、でも、素直になれない所も可愛くて良いか。と俺は言葉を飲み込むのだった。

 

「じゃあ帰ろうか? 百合ちゃん」

「はい! 帰りましょう!」

 

 そして、俺たちは釣果ゼロであるが、楽しい釣りのイベントを終えて帰宅するのだった。

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