百合ちゃんと別行動をし、それぞれに山の幸を集める事になったのだが……。
まぁ、俺は初心者なので、あまり拾えるとは思われていないだろう。
何なら、間違えた物を探してくるとすら思われているかもしれない。
だが!
それでは格好いいお兄ちゃんとは言えないだろう。
兄という生き物は! 常に妹の憧れでなければいけないのだ。
という訳で、大量採取をする為に俺は作戦を考える事にした……。
が、正直な所初心者がそうそう簡単に、パッと思いつくはずもない為、俺はとりあえず採取をやってみる事にした。
まずは、地面に目を向けて何かそれらしいモノが無いかと探す。
とは言っても草などはどれも同じに見えるし、木の実と言われても、それらしい木は見つからない。
野菜や果物も、周囲には見つからない。
となると……ここはやはりキノコか。
キノコは旨いからな! キノコを探そう!
俺はひとまず木の根元や、ジメジメとした場所を探す。
キノコは暗い場所やジメジメした場所に出来るというのは前の世界に住んでいた時に知った知識である。
世界が変わっても変わらない事は多いし。魔力とかの影響を受けたとしても、その辺りはそこまで変わらないだろうと思う。
基本的な生態だしな。
と、考えながらより陰の方へ、陰の方へと進んでいた俺は、予想通りキノコ君の群生を見つけた。
ジメジメとした空気。そして、コケの生えた岩やら、今にも水が出てきそうな程に湿気に満ちた木々。
そして、そんな周辺でこれでもかというくらいに生えているキノコである。
完璧だ。
と、感動に打ち震えそうになったが、俺はひとまずそのキノコ空間から距離を取り、メモ帳を開いた。
キノコ狩りで重要なのは冷静さである。
何故なら、キノコという生き物は胞子やら何やらを周囲に振りまいている可能性があり、それをもし吸い込んだりして危険になる場合もあるのだ。
いや、別にそこまでキノコに詳しいワケでは無いのだが。
そういう事もあるかもしれない。という事は注意しておこうと思う。
という訳でメモを見ながら、遠距離からキノコの状態を確かめる。
全体の状態。傘の姿、色。
要素は色々あるし、似たようなキノコもある。
もし、毒キノコと間違えてしまったら大変だからな。
じっくりと遠方から確かめて行こうと思う。
「……」
「ふむ……」
「……ふむふむ」
百合ちゃんから託された伝説のメモ帳を見ながら、一個一個特徴を見比べて、俺はある程度特定する事に成功した。
その中で、どうやらこの群生されたキノコ君たちの中では毒キノコと通常のキノコが混じって生えているらしいという事が分かった。
という訳で、ひとまず通常のキノコを採取する為に、持って来たタオルで口を覆い、何かしらの危険物を吸引しないように気を付けた。
この程度で守れるか分からないが、一応呼吸も止めながら採取したいと思う。
「……」
そして黙々と遠方からメモ帳でキノコを確認し、サッと近づいて、サッと採取して遠方へと逃げる。
それを何度か繰り返して、俺はキノコの群生地から少し離れた場所に安全と思われるキノコを大量に積み上げた。
完璧である。
しかし、これで全てが良いという訳ではない。
何故なら、一見安全そうに見えたキノコも実は毒キノコ、危険なキノコという可能性はあるのだ。
そこで、メモ帳をしっかりと見ながら、見比べて確実に安全だと思われたキノコと、安全では無さそうなキノコをさらに分ける。
そして、毒か通常かどっちか分からないキノコに関しては、シンプルな見分け方があるのだ。
それは近くに居る小動物にエサとしてあげてみるという物である。
俺は周囲を見渡して、小動物を探した。
ちょうど、セオストの角ウサギによく似た小さな魔物を見つけた為、キノコの欠片を小さな魔物に向かって投げてみた。
小さな魔物は目の前に落ちたキノコの欠片を見て、クンクンと匂いを嗅ぐ。
それから、かなりの時間匂いを嗅いでいたが、不意にパクっと口にキノコを入れた。
そして、そのまま吐き出す事なく食べて飲み込んでゆく。
ふむ。ふむ。
どうやらあの小さな魔物的に、このキノコは毒では無かったらしい。と、俺は魔物が食べたキノコと同じ種類のキノコを安全とは別の場所で包みに入れる。
一応魔物で確認はしたが、それでも完全に安全という訳では無いから。
魔物で最低限の安全確認をしたキノコ。という分類だ。
そして、同じ様によく分からないキノコを一部ちぎって、小さな魔物が集まりつつある場所へと投げて反応を見た。
結果。
約半数のキノコが安全……と思われる状態だと確認が出来て。
もう半分はほぼ毒だろうという様な状態になった。
まぁ、まぁ、まずまずな結果なのではなかろうか。
俺は残念ながら食べられないと判断したキノコを元の場所に戻し、手を合わせて供養し。
次のキノコを求めて、俺は先ほどと同じ様に湿った場所を探して歩き回った。
そして、それから俺はかなりのキノコを見つけ出す事に成功した。
成功はした、が!
正直な所、キノコしか手に入れてない山の幸に、俺はどうしたモンかと冷静になった頭で腕を組み、考える。
キノコ博士じゃあるまいに。山で山菜採ってきてと言われて、キノコばかり採ってくるのは如何なものだろうか。
「やはり他の山菜も探さないと駄目だよなぁ」
「全体的に大量に採ってこそ、格好いい兄である」
「うむ」
という訳で、俺は先ほど諦めた野草を探し始める事にした。
パッと見た時に同じ様な草しかない為、諦めたモノであるが、よぉーく見れば、それぞれに違いがある様に見える。
葉の形が違うとか、茎の形が違うとか、色が違うとか。
本当に些細な差であるが、間違いなく差は存在していた。
その違いを見極めて、俺は食べられそうな野草を地に這いながら探し回った。
「……うーん。中々に難しいな」
しかし、やはりというか。
キノコよりも難易度が非常に高い。
そもそもキノコの時はある程度密集して生えている場所は特定出来たのだ。
だが、野草は正直よく分からない。
本当は野草ごとに、日光の当たる場所とか、逆に薄暗い場所とか、そういう好みがあると思うんだよな。
だから、それらしい場所を探せば居るのだろうが、これがサッパリ分からない。
分からないから、結局地道に探すしかないし。
探している中でどうにか見つけた野草を、メモ帳と見比べて、それらしい特徴ごとにし分けて、袋に入れる。
地味な、本当に地味な作業であるが。
しかし確実な作業でもある。
俺はこの地味で地道な作業を繰り返し、かなりの野草を採取する事に成功するのだった。
が、正直な所、キノコ以上の自信はない。
何か、美味しくもないし、栄養もない野草とかを採っている可能性も非常に高いだろう。
結局最終的な判断は百合ちゃんにお願いする事になる。
なので!
正直全敗している可能性も考えて!
次なる山菜を探しに行こうと思う。
まだまだ日は高いし。
百合ちゃんとの合流もまだまだ先でも大丈夫だろう。
という訳で、俺は山の幸といえば!
と、芋を探しに行こうと考えるのだった。
百合ちゃんのメモによれば、この世界にも存在はしているらしいし。
あるのならば、見つけて見せようじゃないか。
山で採取するという事で手で土を掘る道具は持ってきているし。
自然薯を見つけ出して、持って帰ろうじゃないか!
俺が前に居た世界でも大きな自然薯を見つけた時は英雄だったからな。
こちらの世界でも俺は英雄となる為に、自然薯を探すのだった。
今度こそ、誰かと一緒に達成した英雄という称号ではない。
俺一人で達成する、最大の自然薯を見つけ出して入手した英雄として、名を残すのだ。
「では、探しに行くか……!」
俺は気合を入れて英雄となる為に自然薯のありそうな場所を探して、山の中を彷徨うのだった。