無事?
モモちゃんとリンちゃんを説得し、二人は前線でありながら百合ちゃんに守られる位置になった。
「いや。良かった。良かった」
「別に何も良くないし。私たちは何も納得してないからね」
「そうは言っても、侍の危険性はよく分かったでしょ? 二人が正面から侍と戦うのは危険だよ」
「それは、そうだけど」
「百合ちゃんの強さもよく分かっただろうし。これが一番だよ」
ブーブーと文句を言っているモモちゃんに納得してもらい、俺は百合ちゃんに視線を向けた。
百合ちゃんは俺の視線に気づくとキリっとした顔になり、頷く。
「はい! 私にお任せ下さい」
「それは嬉しいんだけどさ。リリィさんも前は魔術師だったのに気が付いたら、剣士になってるし」
「あー、あははー」
「それにリョウさんはユリちゃんって、特別な名前で呼んでるし。なーんか私達だけ仲間外れにされてる感じ」
「い、いえ! その様な事は! 百合という名前は最近名乗れる様になっただけでして、その時偶然亮さんが近くに居ただけでして」
「ホントかなぁー」
あわあわとしている百合ちゃんを、モモちゃんがジトっとした目で見つめる。
その疑いの眼差しに、百合ちゃんはあわあわと周囲に助けを求めていた。
まぁ、色々と気持ちは整理できても性格的な所はそんなに早く変わらないよな。
と思いつつ、俺は百合ちゃんを助ける事にした。
「はいはい。百合ちゃんをあんまりイジメないでね」
「別に虐めてないけど」
「でも百合ちゃん困っちゃってるから」
「なら、リョウさんになら、良いのかしら? グイっと突っ込んでも」
「うん。構わないよ」
「フーン。なんか余裕そう」
モモちゃんは疑ってますという様な顔で俺をジッと見つめた。
そして、少しばかり考えた後、緩やかに口を開いた。
「リリィさんに何があったの?」
「昔からあった問題が解決したんだよ。百合ちゃんの事情に関する事だから、詳しくは言えないけど」
「……まぁ、そうね。確かにあんまり深い事情にリリィさんの許可なく立ち入るのは良くないわ」
「そ、そういう事なら、私からお話するんですが……私はセオストの生まれではなく、ヤマトの生まれだったんです」
「そうなんだ……!」
「はい。ただ、この事は内緒にしておいていただけるとありがたくて……神刀が使える事も、その……まだ話せないので」
「でも、神刀が使えるって分かったら、冒険者としてもっと上のランクに行けるんじゃないの?」
「それはそうかもしれないけどさ。フィオナちゃんにもこの事は話して無いんだ」
「あ……そうか。そうよね。大切なお友達に話すためには準備がいるわよね」
「そういう事。それに、百合ちゃん以外から事情を知ったら、フィオナちゃんも傷つくだろうしね」
「分かったわ。ここでの事は誰にも言わない。リンも良いわよね?」
「はい! 分かりました!」
モモちゃんとリンちゃんが快く頷いてくれ。ひとまず百合ちゃんの秘密は守られる事となった。
そして、モモちゃんとリンちゃんもひとまず納得してくれる。
「一応確認なんだけど、ヤマトに居る間は私達もユリさんって呼んだ方が良いの?」
「あ! いえ! リリィというのも、私の名前なので、呼びやすい方で大丈夫です!」
「分かったわ。じゃあ私たちは変わらずリリィさんって呼ばせてもらうわね」
「はい! よろしくお願いします!」
「どうやらお話は終わったみたいですね」
「あ、セシルさん。食器ありがとうございます」
「いえいえ。私も戦いでは無力ですからね。こういう事はさせて下さい」
セシルさんは柔らかく微笑んでから部屋の中に座り、そして、庭の方へと視線を向けた。
俺はその視線に引っ張られながら庭の方へ視線を向けて……雷蔵さんが戻ってきた事を知る。
「戻ったぞ」
「どうでした?」
「お前の予想通りだ。街の周囲に侍がウヨウヨ居たぜ」
「やはりですか……」
「どの道、ここを出る際には姫様もセシル様も連れて行かなきゃならんな。置いていけば町の人間だけじゃ抑えられん」
「それに……ハグロの町を巻き込む事になる。それは良くないの」
「姫様。お目覚めでしたか」
「あぁ。そろそろ作戦会議を始める頃かと思っての。起きる事にした」
「ありがとうございます」
雷蔵さんは俺の布団の上でムクリと起き上がった楓ちゃんに頭を下げながら、その近くに座り、周囲を見渡した。
ここから話を始める合図だろう。
「さて。まずは状況の整理からいこうか」
「はい」
「現在、我らがヤマトの中心フソウは、反逆者共に占拠されている。フソウには多くの歴史的な物が眠っている。連中も無茶はしないだろうが、さっさと取り返した方が気持ちは落ち着くだろう」
「そうじゃな。フソウの城には母様の物も多くあるし。このままというのは落ち着かん」
「という訳だ。亮達には申し訳ないが、手伝って貰えるとありがたい」
「それは勿論。俺と百合ちゃんはモモちゃんとリンちゃんから正式に依頼を貰っています。ヤマトの騒動を解決する為に動くつもりですよ」
「モモ殿。リン殿。ありがたい。感謝する」
「助かるぞ。モモ、リン」
「いえいえ! 私たちはリョウさん達にお願いしただけですから! 感謝は二人にお願いします!」
「そうじゃな。亮。リリィ。助かる」
「姫様のお願いとあれば! 頑張ります!」
「何とか今回の事件を解決しましょう」
「うむ! そうじゃな。しかし……無茶をして犠牲者が増えるのは良く無いじゃろう」
楓ちゃんの想いに、俺と雷蔵さんが頷き、それぞれに作戦を提案した。
「反乱を企てた侍共は今、フソウの城に居るらしい。とは言っても、こいつらは基本的に無視して良いだろう。そこまで力があるワケでも無いし。目的も殆ど達成している筈だ」
「ならば、わらわの説得も有効かの?」
「えぇ。そうですね。姫様とセシル様の説得で十分かと思います……ただ、一部、まだ戦いを止めない連中もいます」
「それは他に目的があるという事ですか?」
「あぁ。連中の狙いは現在のヤマトをひっくり返す事だからな。姫様とセシル様を確保して、新しい権力を手に入れようとするだろう」
「そういう人間はどう対処しましょうか。侍の中に紛れているのなら厄介ですが」
「それに関しては問題ない。連中は嘘を吐く事が出来ない」
「嘘を吐けない?」
「そうだ。連中の目的がヤマトでの権力を手に入れる事なら、侍の支持が得られないと意味がない。だが、侍は卑怯な騙し討ちを嫌うからな。正々堂々。一対一で俺達から姫様やセシル様を奪おうとしてくるだろう」
「なるほど……今の話。逆に考えるのであれば、俺達も自分たちの正当性を示す為には、こういう人たちからの決闘を拒否してはいけない。みたいな事になりますかね?」
「あぁ。その通りだ。俺たち自身は姫様の願いで動いているが、俺たちが逃げ回る様なら、それはそれで姫様の護衛として相応しくないという事になるからな。奇襲された時ならいざ知らず、正々堂々と挑まれているのだからな」
「なるほど」
「だが、まぁ。こいつらは、最終的な目標に比べれば雑魚みたいなモンだ。前みたいに亮一人で対処する。という様な事でもなければ問題は無いだろう。問題は……」
「時道さん。ですね」
「そうだ。コイツだけは説得も出来なければ、正面突破も難しい。俺だって確実に勝てるとは言えん」
「だからこそ、時道さんは待っている訳ですね。俺たちが瞬さんに助けを求めるのを」
「……まぁ、そうだな。最良の手はやはりソレだ。最悪相打ちになっても聖女様が二人いらっしゃる以上、どちらの命も失われる事はない」
「ですが、二人が戦い、決着がつけば……それはやはりヤマトという国を揺るがす事になる」
「そうだ……だから、奴の手には乗れん」
「なら……俺に一つ良い考えがあるんです」
俺はここまでの話も含めて良い解決案があると皆に提案するのだった。