夜明けと共に、俺たちはフソウへ攻め込む準備を終わらせて、一気に突撃した。
とは言ってもフソウの街に侍はそれほど居ないし、居たとしても楓ちゃんたちの味方である。
その為、俺たちはほぼ何の妨害も受けずにフソウの城へと突入する事に成功した。
「雷蔵さん。時道さんは!?」
「一番上の階だろうぜ! バカと煙は高い所が好きって言うからな!」
「言い方は、まぁ、アレですが、分かりました。では上を目指しましょう!」
「おうよ!」
「侵入者だー!」
「出あえ出あえ!」
「何が侵入者だ。それはお前らだろうが!」
「同感ですね!」
俺は神刀を抜いて、近くに居た男の刀を砕く。
そして、武器を砕かれた男を蹴り飛ばしながら次の男に飛び掛かって神刀を砕いた。
「そういえば!」
「なんだ!?」
「この人らは説得するんじゃなかったんですか!?」
「姫様を前に出したら危ないだろうが!」
「まぁ、それもそうですね!」
結局は実力行使で突破するしか無いようだ。と俺は現状を理解して一階に現れた侍の武器を雷蔵さんと一緒に全て破壊し、中央の通り道から全員を外へ弾き飛ばすのだった。
正直なところ、あまり強くはない。
「ったく、姑息な連中だ」
「というのは?」
「ここの連中は全員雑魚だ。とりあえず雑魚をぶつけて体力を削ろうって考えなんだろ」
「まぁ、姑息というよりは戦術、戦略ですね」
「下らねぇ。男なら正面からかかってこいってんだ」
「挑んでいるのはこっちなんですけどね」
「良いんだよ。細かい事は! 姫様! 掃除が終わりました!」
「分かったぞー!」
そして、俺たちは一階を綺麗にした後、楓ちゃん達を呼び、ひとまず制圧した一階で話し合いをする。
これから登っていく訳だが、勢いのまま進み続けるのも良くないかと考えたからだ。
「ひとまず一階は取り戻したようじゃな」
「はい。この程度は容易く」
「しかし、問題はここからなんじゃろう?」
「えぇ。敵は卑劣にもこちらの体力を削ろうと様々な手を打ってきております。上に行けば行くほど厳しい戦場となる可能性は高い」
「何とか一気に時道が居る所まで行けんのか?」
「難しいですね。先ほど部下に外壁を登らせましたが……待ち伏せにあったそうです。どうやら忍衆もいくらか時道の所に流れている様ですね。軟弱な連中です」
「雷蔵に軟弱と言われても困ってしまうじゃろ。お前が飛びぬけておるだけじゃ」
「まぁ、それほどでもありますが……どちらにせよ。姫様の安全も考えれば素直に城を上る方が安全ですね」
「分かった。無理はするなよ。雷蔵。亮」
「えぇ」
「分かってます」
楓ちゃんからの許可も得られたという事で、俺と雷蔵さんは階段に近づき、ゆっくりと段を上がって行った。
そして、階段の二階部分で待っていた男たちに視線を向ける。
「どうやら大歓迎の様ですね」
「その様だな……しかし、一階に降りて来る事も出来なかった臆病者だ。雑魚ばかりという所だろう」
「なんだと!?」
「舐めるなよ! 忍ごときが! 侍に勝てると思っているのか」
侍の一人が挑発する様に雷蔵さんを見ながら叫んだ。
しかし、雷蔵さんはどこまでも冷静で、どのような暴言も軽く流し、ハッと笑う。
「どいつもこいつも、見ればジジイどもばかりじゃねぇか。自分の実力が足りねぇのを、環境が悪いと思い込んだ無能を、よくもまぁこれだけそろえたモンだ。感心するぜ」
「貴様!」
「我らを侮辱するか!」
「おぉ、すまんすまん。侮辱に聞こえたか! ただ……事実を言っただけなんだがな」
「おのれ!!」
「小僧! 許してはおけん!」
階段の上に居た侍たちは、全員が刀を抜き、飛び上がりながら襲い掛かってきた。
ほぼ全員が雷蔵さんに向かっているのは……まぁ、それだけ雷蔵さんの挑発が強すぎたのだろう。
そこは良い。
俺はひとまず雷蔵さんが釣り上げたと思われる人々を雷蔵さんに押し付けて、俺の方へと向かってきている侍に向かう。
そして、一階にいた侍相手にやった様に、武器を破壊していった。
しかし、一階にいた侍よりも、二階にいた侍の方が強いらしく、ちらほらと神刀を持っている人間もいた。
だが、そうは言っても、やはりそこまでの相手ではない。
一階よりは時間が掛かったけれど、十分に余裕を持って二階の敵を掃討する事が出来たのであった。
「ふむ。まぁ、こんな所か」
「流石に一階の人たちよりは強かったですね」
「そうか? 俺にはそんな些細な違いは分からなかったぜ」
「雷蔵さん。あんまり挑発は……」
「へっ、こんなの挑発にも入らないぜ」
なんて、雷蔵さんは笑いながら床に倒れた侍たちを蹴り飛ばして道を作ってゆく。
まぁ、なんと哀れな姿であろうか、という所だが……敗者とは無残な扱いを受ける物だから何も言うまい。
と俺はちゃんと体を掴んで、部屋の端に投げるのだった。
そして、部屋が綺麗になってから一階にいる楓ちゃん達を呼ぶ。
「おぉ、おぉ……随分と多くの侍が参加しておるのぅ」
「まぁ、腐っても睦月を持つ男が反乱の主導者ですからね」
「確かにのぅ」
「主導者としての才能は確かにあるという事ですな」
「でも、そう考えると妙な感じですね」
「何がじゃ?」
「いや、だって今のヤマトの実質的なトップは時道さんなのに、その時道さんが反乱しているというのは、どういう状況だ? っていう感じになりませんか?」
「まぁ、そうじゃのう」
「だが、前にも言ったように、奴が消したかったのは目に見える権力ではなく、ヤマトの裏にいる連中だ。反逆というよりも粛清。みたいな感じの方が正しいのかもしれんな」
雷蔵さんがうんうんと頷きながら言った言葉に、俺はなるほどと呟いて楓ちゃんを見た。
「そうか。粛清だけれども、楓ちゃんが味方に居ないから反逆という扱いなのか」
「そういうこった。ヤマトにおいては姫様よりも優先される事項などない。姫様の住まう場所で刃を振るったのだから反逆者だよ。間違いなくな」
「楓ちゃんが法律って感じですか」
「そういうこった。姫様には逆らうなよ。小僧」
「分かりました」
「む? むむ? おい! 雷蔵! 人を危険人物みたいに言うんじゃない!」
「ハッ! これは申し訳なく! 縛り首だけはご勘弁を!」
「だーかーらー! そうやって怖い人みたいに言うなと言うておるんじゃ!」
楓ちゃんの叫びに雷蔵さんはハハハと笑いながら楓ちゃんの攻撃を受け止めた。
そして、そろそろ休憩しましょうかと床に腰を下ろすのだった。
「それは構わんが、大丈夫なのか? この周りの連中は」
「問題ありませんよ。まず意識を取り戻す事は無いでしょうし。取り戻せたとしても、動く事は出来ないでしょう」
「そうなのか」
「えぇ。我々の仕事に間違いはありません。なぁ? 亮」
「そうですね。それに関しては問題ないですよ」
「ふむ。そうか……ならば我らも休憩とするかの」
「そうですね」
「リョウさん。リョウさん」
「うん? どうしたの? モモちゃん」
「私達、なんか全部リョウさん達に任せて歩いてるだけなんだけど?」
「いやいや。楓ちゃんの護衛をしてるでしょ」
ニコニコと笑いながら不満そうな顔のモモちゃんを諫める。
危険な事はして欲しくないからね。
「これから先に、私たちの出番はあるのかしら!」
「まぁ……あるんじゃないかな」
「フーン」
「まぁまぁ」
「ふーーん!!」
不満そうなモモちゃんを抑えながら、俺はひとまずモモちゃんが危険じゃない仕事を振る事にする。
「じゃ、じゃあ。上の階から人が降りてきたら教えてよ」
「教えるだけ?」
「……じゃあ、足止めもお願いしようかな」
「まぁ、良いでしょ。私が先に戦うんだからね!」
「分かったよ」
俺の言葉に、気合を入れて上の階へ繋がる階段を見つめるモモちゃんであるが、俺は特に不安を覚える事もないままゆっくりと座った。
何せ、上の階から人が降りて来ることはない。
モモちゃんが危険な目に遭う事はないのだから。