フローラちゃんが正式な依頼をする前に、依頼の完了報告を行った俺は、フローラちゃんの所に向かい様子を確認する事にした。
そして、受付のお姉さんとも話をしつつ最適な依頼作りを始める。
「指名依頼は無くても良いんじゃないですか? どうせ俺が受けますし。指名料が勿体ないでしょ」
「良いんですか? リョウさん」
「俺は構いませんよ。後、動きやすいのでドラゴン退治というよりは、フローラちゃんの護衛任務みたいな感じにして貰えますか? そうすればドラゴン以外の魔物にも対処がしやすいですし」
「わ、分かりました」
フローラちゃんが一生懸命書類に文字を書いているのを見ながら、ジト―っとした目を向けてくる受付のお姉さんに視線を合わせる。
お姉さんは声を発しない口パクで「やっぱり幼い子が好きなんですね」と言っていた。
俺はお姉さんと同じ口パクで「ちがいます」と返したが、お姉さんは肩をすくめて通じてませんという様な顔をするのだった。
なんてこったい!
絶対に分かっているのに。
「できました!」
そして、お姉さんと何とか繋がらない意思疎通をしようとしていた俺であるが、フローラちゃんの声に目線を下に下ろした。
受付のお姉さんは内容を確認して、うんと頷く。
「はい。問題ありません。ではこちら受けさせていただきますね」
「お願いします!」
「そして、張り出された依頼を俺が受ければ問題なしと」
「おっと! そうはいかないぜ!」
「うん?」
流れ作業の様に、張り出された依頼を俺が受けようとしたのだが、突如として背後から声がかかる。
そこには、数人の冒険者が俺達を見ながら仁王立ちしていた。
「いつもいつも! お前ばかり可愛い女の子からの依頼を受けやがって!」
「俺達にも受けさせろー!」
「何かズルしてるんだろう! 高ランクだからって!」
「ズルをした覚えは無いけどなぁ」
「嘘をつけ! 少し前にリリィちゃんと一緒に可愛い女の子たちとヤマトへ行ったのは知ってるんだぞ! しかも依頼内容はただの護衛任務だって言うじゃないか! ヤマトくらいなら俺達でも十分に出来たんだ!」
「あー、皆さん? それは色々と事情がありまして」
「事情って何ッスか!? リョウが優遇される為の事情ですか!?」
「いえ。その……リョウさんはお知り合いの方が依頼をされる際には、『何が起きても』対処出来るように護衛の依頼っていう大雑把な依頼にするんですよ」
受付のお姉さんの言葉に、彼らはよく分からないと首を傾げた。
そんな彼らに俺は今回の依頼についての話をする事にした。
「今回の依頼に関して言うのであれば、護衛と言いつつ、最も重要な目的は彼女のお兄さんを救出する事」
「救出って……何からだよ」
「ドラゴン」
「「「ドラゴン!!??」」」
驚愕の色で顔を染めて、彼らは左右に視線を走らせた。
しかし、強がりか何か分からないが、何故か酷く強気に言い返してくる。
「ま、まさか! ドラゴンだなんて。そんな事を言って脅かそうったって無駄だぜ?」
「そう思うならそれでも良いけどな。受けるならどうぞ? 今から掲示されるからさ」
「い、良いのかよ!」
「リョウ様!?」
「あぁ、大丈夫だよ。連中が受けるなら、俺は偶然そっちの方に旅する事になるだけだから。フローラちゃんとフローラちゃんのお願いは守るよ。連中は知らんが」
「くっ!」
「なんだ? ほら。受けたいんだろ? 受ければ良い。誰も損はしないよ」
「挑発のつもりかよ!」
「つもりというか。まさにその言葉の通りなんだけど。俺だけズルをしていると言うのなら、依頼を受ける。ただそれだけだろ」
俺はさらに追い込んで、追い込み漁をしていたのだが。
ここで完全に予想外な事が起きた。
「あ! 護衛の依頼がある! お姉さーん! コレ! 受けます!」
「え?」
「なに?」
俺達の間にある掲示板に張られていた依頼を、一人の少女が剥がして受けてしまったのだ。
俺たちのゴタゴタとはまるで関係のない場所で最悪な事件に発展してしまった。
しかも……その少女は……。
「あ! リョウさん! リリィ。ちょうど帰ってたんだね! 良い依頼を見つけたんだよ!」
「フィオナ……」
「フィオナちゃん……!」
フィオナちゃんはキラキラと輝く様な笑顔を俺たちに向けており、受付のお姉さんはホワイトリリィの関係や、俺もホワイトリリィに一応加入したままであるという事態から問題なしと判断して依頼を受領してしまうのだった。
いや、まぁ、最終的に俺が向かう事は決まったから良いは良いんだが……これは予想外だぞ。
という訳で、俺はうっかりとんでもない依頼を受けてしまったフィオナちゃんと共に久しぶりの自宅へと戻った。
そして、桜たちを呼び帰還した事を告げつつ、新しい依頼に行かなくてはいけない事を伝える。
「まぁ、良いんじゃない? 今の内にお金を稼いでおけば無理に依頼を受ける必要も無くなるんでしょ?」
「それはそうだね。でも、俺とフィオナちゃんとリリィちゃんが居なくなって、家は大丈夫?」
「それは心配要らないよ。私が居るし。最近はココちゃんも色々な料理を覚えてくれてるし。ジーナちゃんやミクちゃんが家の事を守ってくれてるしね」
「それなら……まぁ良いのかな」
「そ。心配しなくても妹たちは強くたくましく生きておりますよ。お金も去年の残りが沢山あるし。問題らしい問題は無いかな」
桜の言葉に、桜も大きく成長しているんだなぁとしみじみとした感覚を覚える。
そして、ちょうど上の階から降りてきたココちゃんが俺を見つけて勢いよく飛び込んできた為、ココちゃんを抱きとめながら色々な話を聞くのだった。
「お兄ちゃん」
「あぁ。ココちゃん。ただいま」
「ね、ね。屋上の野菜がね。もう芽が出たんだよ」
「そうなんだ。それは凄いなぁ。ココちゃんは天才だなぁ」
ニコニコと話すココちゃんの話を聞きながら、俺は凄い凄いと言葉を繰り返した。
そんな俺に桜たちは呆れた様な目を向けていた為、俺はコホンと咳払いをして、ひとまず空気を入れ替える。
が、クスクスと笑いながら階段を降りてきたモモちゃんとリンちゃんによって、やはり空気は弛緩してしまうのだった。
「リョウさんはどこに居ても変わらないね」
「それが良い所。なんだよ。モモちゃん」
「確かに。妹大好きな超人。まぁ、弱点ある方が人間らしいもんね」
言いたい放題である。
しかし。
「話は軽く聞こえてたけどさ。リョウさんに次の依頼が来たんだって?」
「うん。また遠出する依頼」
「なるほど。じゃあ、まぁ私たちももう少しこの家にお邪魔させて貰おうかな。何かあった時に役立つしさ」
「良いの?」
「勿論。ココちゃんの畑も気になるしね。桜ちゃんの料理ももっと食べたいし。ミクともゆっくりと話したい事は色々あるしね」
「なるほど」
「だからさ。私たちが居るからってワケじゃないけど。リョウさんも安心して行ってきなよ。今度は可愛い女の子二人と一緒にさ」
「言い方……!」
どうしてこう、妙に引っかかる様な言い方をするのだろうか。
まぁ、良いけどさ。
「まぁ、そういう訳で、俺とフィオナちゃんとリリィちゃんはちょっと北西の国に行ってくるからさ。後の事は頼むよ」
「え? お兄ちゃん。またどこか行っちゃうの?」
「うーん。ごめんよ。ココちゃん。終わったらすぐに帰ってくるからさ。出かける前にココちゃんの頑張りは必ず見るからね。色々教えてくれるかな?」
「うん! ココの頑張り! 見せる!」
フンスと気合を入れているココちゃんに、俺はニコニコと微笑んでいたのだが、どこからか「やっぱり妹狂い」と聞こえてきて、悲しみを感じるのだった。
兄が妹の事で必死になるのは普通の事でしょうが!!