無事、ジキちゃんとそのお母さんを見送った俺は、上空で言い争いをしているであろう皇帝陛下とミクちゃんを放置し、フィオナちゃん達を探す事にした。
ひとまずドラゴン事件は解決したワケだし、その報告をしなくてはいけない。
という事でフィオナちゃん達を探したいワケだが、正直な所居場所が分からない。
まぁ、当然と言えば当然なのだが、向こうは避難している訳だし。
こっちは未だジキちゃんが暴れた場所の近くだ。
どうしたものか。
こういう時の為に通信機を渡しておけば良かったなと思いながら、ひとまず街道に出る事にした、
「リンちゃん。フィオナちゃん達と合流しようか。今回の依頼主もそこに居るからさ」
「あ、そうなんですね。じゃあ行きましょうか」
「とは言っても場所は分からないから適当に探してみる感じになるんだけど」
「あ、はは。しょうがないですよ。結構な荒れようですし」
リンちゃんは周囲を見渡しながら苦笑する。
俺もリンちゃんと一緒に苦笑しながら周囲を見渡した。
まぁ、じっくりと見なくても分かるが、酷い状態だ。
まるで大規模な襲撃を受けた跡の様である。
これをジキちゃんだけでやったというのだから驚きだ。
「という訳だから、まずは街道に出て、それからスタンロイツ帝国方面か、リメディア王国方面に……」
「亮さーん!」
「うん?」
歩いて探してみようと、リンちゃんに言おうとした俺は、遠くから聞こえてくる声に顔を上げた。
そして、スタンロイツ帝国方面から駆けてくる一つの姿に手を上げる。
「リリィちゃん!」
「あぁ、良かった! 無事だったんですね!? 亮さん!」
「うん。何とかね。そっちも無事みたいで良かったよ。フィオナちゃんとフローラ様は?」
「二人はここから少し離れた場所に居ます! 私だけでとりあえず亮さんを探しに行くって事になって……! って、そういえばドラゴンはどうなったんですか?」
「あぁ、ドラゴンね。ドラゴンは自分たちの住処に帰ったよ」
「帰った!? 凄い暴れてたような気がしましたけど!?」
「うん。なんか説得がうまく出来て」
「説得して!?」
リリィちゃんが驚きすぎておかしな事になっている。
いや、気持ちはよく分かるけれども。
俺だって、ドラゴンっていうとんでもない脅威が居たけど、話をしたら帰ってくれたよ。
なんて聞いたら、そんなバカなと驚くところである。
「という訳だからさ。報告に行こうと思って。フローラ様とエリック様の所に行こうかなって」
「そ、そうですね。それが良いと思います。皆さん心配されていますから」
「うん。じゃあ行こうか」
それから俺はリリィちゃんとリンちゃんと共に、フィオナちゃん達が居る場所を目指して歩いた。
が、その道中でリリィちゃんはリンちゃんが居る事に疑問を示す。
「そういえば、どうしてここにリンさんが? セオストに残ったのでは?」
「えーっと、ですね。実はジーナさんと一緒にこちらに来てまして」
「誰かが怪我を?」
「うん。ドラゴンが怪我してね。リンちゃんに治してもらったんだ」
「ドラゴンが怪我をして!? リンさんが治した!?」
もう何を聞いても驚いているなと逆に関心しながら俺はうんと頷いた。
そして、信じられない様な事ばかり起こっていますね。というリリィちゃんの言葉にごもっとも。と頷きながら歩き続けるのだった・
それから。
それほど歩かずに俺たちはフィオナちゃん達と合流する事が出来た。
「リョウ様!」
「フローラ様。ご心配をおかけしました」
「いえ! 私は信じておりましたから! リョウ様のご無事を!」
キラキラと輝く様な瞳でそう宣言され、流石に俺も少しばかり気恥ずかしい気持ちになってしまう。
しかもフローラ様だけでなく、他の人々から英雄が帰還したぞ!
なんて騒がれてしまった。
この状況で報告するのは酷く嫌な感じだが……まぁ、仕方ない。
言わずに黙っていても進展する事は何も無いからな。
「姫様」
「え? は、はい!」
「貴国に現れたドラゴンですが……無事この地を去りました」
「え? ……えぇー!?」
「そ、それはどの様にしてだ! リョウ殿!」
俺の報告を聞いて、慌てた様な顔をしたエリック様がこちらに駆けてきた。
かなり焦っている。
いや、気持ちは分かるけれども。
「えと……まぁ、対話を行い、ですかね」
「なんと! ドラゴンと対話を!」
「成功させたのですか!? なんて、すごい……!」
止めて欲しい。
そのキラキラとした目で見つめられると、酷く困る。
運が良かっただけなんだよ。
ジキちゃんがちゃんと話の通じる子で、しかもいい子で、お母さんもすぐに納得してくれたから。
俺の実力とかではなくて、本当にただの運なんだ。
「いや、まぁ運が良かったというのが大きいですね。ドラゴンの方もすぐにこちらの言葉に頷いてくれましたので。俺でなくても成功したと思います」
「いえいえ! その様な事はありませんよ。リョウ様で無ければドラゴンと相対した時に逃げ出しておりますわ!」
「そうだぞ! 自分の成果を誇ってくれ!」
うーん。
うーんである。
正直、誇れる事なら何の遠慮もなく誇るのだけれど。
誇りにくい事は誇れないのだ。
なんだか酷くむず痒い気持ちになる。
「英雄殿にはどれだけ礼をしても足りんな!」
「えぇ、えぇ。本当に。その通りですわ。お兄様!」
「あの、お二方! 私の話はもう大丈夫ですから。これからの話をしませんか?」
「これから?」
「……もしやバクーシ帝国の事か?」
「えぇ。ドラゴンの問題は解決しましたが、バクーシ帝国の問題は何も解決していないですからね」
ひとまず英雄様万歳の雰囲気を止めたくて、俺は真面目な話に切り替えた。
流石に王族だからか、二人は真面目な雰囲気にすぐ切り替わり俺の話に乗ってくれる。
「実はですね。リメディア王国に居たのは子供ドラゴンでして、その子供ドラゴンには親のドラゴンが居たのです」
「……! まさか! それで!?」
「彼女は酷く怒っていまして、暴れようとしていたのですが、皇帝陛下の提案もあり、リメディア王国が焼かれる事だけは避けられました」
「おぉ……! それはありがたい」
「ですが、その代わりと言っては何なんですが……バクーシ帝国がそれなりに被害を受けまして……いや、死者はあまり居ないと思うんですが、帝都が壊滅状態に」
「……なるほどな。ドラゴンの怒りか。ならばそれは仕方のない事だろう。だが、こうなってはバクーシ帝国が我が国に対して、何かしら行動をしてくる可能性が高いな……! 分かった。報告助かる。我々は急ぎ王都へ戻るぞ!」
「お兄様! 私は!」
「フローラは暫し待て。王都で連中に会えば厄介な事になるかもしれん。スタンロイツ帝国の皇帝と、英雄殿と共にゆるりと戻れ」
「はい……! お兄様。どうかご無事で!」
「あぁ! ドラゴンと相対する事に比べれば、バクーシなど容易い物だ! では! 私は先に行くぞ!」
エリック王太子殿下はそのまま勢いよく街道を駆けて行き、部下と思われる人たちもエリック様の後について走って行った。
俺はフローラ様やフィオナちゃん、リリィちゃん、リンちゃんと共にその背中を見送る。
そして、全ての人が行ったかなと思っていた所、草むらから一人の女性がバッと現れ、俺たちの前に移動してきた。
「英雄殿。一つ聞きたい」
「は、はい? 何でしょうか」
「陛下はどちらに向かった?」
「皇帝陛下なら、今、上空で世界国家連合議会の災害対策局局長さんと話をしてますよ。ただ、ちょっと長くなりそうですが」
「そうですか。情報連携ありがとうございます。では!」
女性はそのまま再び草むらへと飛び込んで、どこかへと走り去っていった。
その気配を追っていた俺は、まぁあまり気にしなくても良いかとそのまま感覚を自分に戻した。
そして、フローラ様に顔を向ける。
「とりあえず俺たちもスタンロイツ帝国の皇帝陛下の所へ行きましょうか」