異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第309話『シーメル王国事変(はじまる争い)9』

 宿屋に居るであろうジーナちゃんに連絡を取り、ジーナちゃんにこっちへ来てもらい、転移で宿屋まで連れて行って貰う。

 そんな、便利な運び屋の様な扱いをしてしまったため、ジーナちゃんは大変お怒りになり、ベッドの上で座ったまま器用に跳ねながら怒りを示していた。

 

「ごめんって」

「ぶー!」

 

 ポインポインと音を立てながら跳ねるが、そこまでベッドは柔らかくないし、これもジーナちゃんの魔法かな?

 なんて関係のない思考で頭が埋め尽くされてしまう。

 

 しかし、そんな状態ではジーナちゃんの機嫌が直る事はなく、俺はとりあえず今度ゲーム屋で好きなゲームを買ってあげるから、と情けない提案をして、何とかジーナちゃんの機嫌を直すことに成功するのだった。

 ちなみに、これを伝えた時、ジーナちゃんが目をキラキラとさせながら『ドラゴンゲーム! ドラゴンゲーム!』と言っていた事から買う物はドラゴンゲームで決まりだろう。

 

 どういうゲームか分からないが、危険なゲームの可能性もあるし。地価の二階でも作った方が良いかもな。

 ゲーム部屋。って事にして、とりあえず壁も天井も床も頑丈な素材にして、何が起きても大丈夫なようにする部屋。

 

 多少金はかかりそうだけど、モモちゃんの依頼からフローラ様の依頼と、高額な依頼が多かったし、工事費はどうにかなるだろう。

 次にセオストへ戻った時は依頼しておこう。

 

 なんて、俺は考えながらふわふわと飛んで楽しそうにしているジーナちゃんを見つつ頷くのだった。

 

 そして、ジーナちゃんの問題も解決したという事で、ギュッと抱き着いて来たココちゃんを抱き上げつつ、どうやら感動的な再会をしているらしい四人を見やる。

 

「まさか、ユウキがこんな所に居るなんてね。思わなかったわ」

「僕だってびっくりだよ。ミクだけじゃなくて、モモに、リンまで居るなんて」

「私だって、ビックリですよ」

「でも、みんなで居ると、懐かしい気持ちになるね」

「まぁー。良い思い出ばっかりじゃないけどね」

 

 ふわりと笑うリンちゃんに、モモちゃんは苦笑しながら応えた。

 そして、ユウキちゃんはフンと鼻を鳴らしながら腰に両手を当てて口を開く。

 

「まぁ、世界を救う勇者一行なんだからさ! トラブルは当然起こるんじゃないの? それでも世界の為に頑張る! それが世界を背負う覚悟って奴だよ」

「はいはい。偉そうに言ってるけど、トラブルの大半はアンタとミクだからね」

「えぇ!?」

「異議ありです。ユウキはともかく、私がトラブルを呼んだ事はありません」

「ミク! それ、どういう意味さ!」

「どういうも何も……」

 

「はいはい。そこで喧嘩しないでよ。似たようなモンでしょ。二人ともさ」

「「どこが!」」

 

「わぁ、息ピッタリ。仲良しだね。二人とも」

「いやいや、その仲良しのせいで私達がどれだけ苦労したか」

 

 喧嘩をするミクちゃんとユウキちゃんに、モモちゃんがヤレヤレと言いながら肩をすくめた。

 かなり苦労していそうな感じが空気感から伝わってくる。

 

「まぁ、過去の話は良いです。色々と納得が出来ない事もありますが、それは後でゆっくりと話せば良い事ですから」

「そうだね。今はシーメル王国の事を考えないと」

「はい。リンの言う通りだと思います。ですが、幸いにも……という言葉が正しいか、それは分かりませんが。シーメル王国の問題に、ユウキ達まで来てくれたのは嬉しく思います。リョウさんもジーナさんも来てくださいましたし。これで多くの事に対応が出来ると思います」

「それは良いけどさ。ここからどうするの? 人助けって言っても、獣人の邪魔をしちゃいけないんでしょ?」

「別に邪魔をしてはいけないという事は無いですよ」

「むー? むむむ?」

 

「駄目よ。ミク。ユウキにそんな難しい話をしちゃ」

「むー! モモ! バカにしないでよ! 僕だってちゃんと説明して貰えれば分かるモン! ちゃんと! 説明! してくれればね!」

「その……ユウキの言う、ちゃんと説明するっていうのが難しいのよ」

「そんな事ないよ! ねー? ミク?」

「えーっと、少し待ってください。話をまとめますから」

「うん!」

 

 むふー! と笑いながらユウキちゃんはミクちゃんの言葉を待っていた。

 その静寂が、少しだけ勿体ない様な気もしたので、俺が軽く下地だけでも説明するかと四人に声をかけた。

 

「あー。ごめん。横から良いかな?」

「はい。大丈夫です」

「ミクちゃんが上手い説明を考えている間に、俺もちょっと状況をまとめたから意識の共有がしたくて」

「あ、そうですね。まずはリョウさんの話を聞いてみたいです」

「うん。まぁ、間違ってたらその都度訂正して欲しいんだけど……まず、今回の獣人戦争。正義って言い方はあんまり好きじゃないんだけど。多分正しさは獣人が持っていると思うんだ」

 

 俺はココちゃんの頭を撫でながら、現在もこの地で行われている行為を思い出し、呟く。

 

「だから世界国家連合議会も、獣人が起こす戦争で、人間の味方をしない事を決めた。だから、獣人が現在の状況を打開する為に争いを起こす事に関して、俺たちができる事は何もないと思っている。ここまでは合ってるかな? ミクちゃん」

「はい。私もその方針です」

「……えと、つまり。獣人がまず戦いを仕掛けてくるんだけど、それの邪魔はしちゃ駄目って事なんだよね?」

「その通りです。少なくともそれを止めてはいけません」

 

「でも、ここで問題になってくるのは、獣人を虐げたいと思っていない人間についてだ。シーメル王国にどれだけその人が残っているのか。それは分からないけど。少なくともアリア様はそうだったし。同じ様な考えを持っている人はそれなりに居ると思う」

「そういう方々は争いに巻き込みたくはありません。世の中には止めなかったのだから同罪という考えもありますが、国全体として、獣人の扱いが決まっていた以上、それに逆らう事は難しかったでしょうから」

「そうですね」

 

「なるほど……何もしてない人は助ける……と。あれ? でも、そういう人ってどうやって見分けるの?」

「見分ける事は不可能です」

「えぇー!? じゃ、じゃあ、どうするの!?」

「ひとまずは、戦争に巻き込まれている一般人を国外へと非難させるしかないでしょう。貴族や王族の方は申し訳ないですが、そのまま放置して下さい」

「いいの?」

「良くはありません。良くはありませんが。彼らには現状を変えるだけの力がありましたから。それに……もしアリア様の様に獣人を保護する様な活動をしていたのなら、獣人は襲わない筈です」

「そうですね。俺が会った獣人達も理性が強かった様に見えました。あれなら無用な殺害はしないと思います」

「はい。ただ、どうなるかは分かりませんから。後はその場その場での判断に任せるしかありませんね」

「……まぁ、そうですね。そればっかりは分かりませんからね」

 

 俺はミクちゃんの意見に同意しつつ、ユウキちゃんへと視線を向けた。

 ユウキちゃんはうーんと唸っていたが、俺へと視線を向けるとうんと大きく頷く、

 

「じゃあ、僕はとりあえず、そこのお兄さんについていくよ!」

「ユウキ。リョウさんの迷惑になる様な事は止めなさいって」

「まだ何もやってないでしょ!」

「まだ。って言ってるじゃない」

「そうじゃなくて! そういう事じゃなくて! お兄さんが危なそうだから、僕がちゃんと見張ってるんだよ!」

「危なそう……? 多分、この中で一番強いけど」

「でも、どういう人かよく分からないモン! 勇者の僕がちゃーんと悪さをしないか見てるからね!」

 

 なるほど。

 まだ疑われていたんだな。と俺は頷きながらユウキちゃんによろしくと手を差し出した。

 ユウキちゃんはフン! と首を振りながらも一応俺と握手をしてくれる。

 

「申し訳ございません。リョウさん。ご迷惑をおかけするかと思いますが」

「いやいや。何とかしますよ。慣れてますんで」

 

 ミクちゃんに苦笑しつつ俺はまだ静寂の中にあるシーメル王国の中で強い味方を手に入れたのだった。

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