異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第330話『アリア様の騎士決定大会(新しい戦い)14』

 遂に!

 という程でもないが、アリア様の騎士決定大会もいよいよ決勝を残す所となった。

 

 俺はと言えば、特に問題もなく無事決勝へと勝ち進め、決勝の相手となる人間の騎士と戦う事になったワケだが。

 まぁ、ここまでに色々あった。

 いや、戦闘的なアレコレに問題は無かったのだが、ある時から俺の対戦相手が獣人ばかりになり、人間の騎士は人間同士で戦う様になった。

 

 これで俺の役目を理解し、こうして決勝の場所で人間対人間の構図が出来たワケだが。

 こうなった瞬間、俺を雇っていた貴族が追加の依頼をしてきたのだ。

 

 貴族曰く、ここで人間の騎士に敗北すれば追加の報酬をやるとの事だ。

 まぁ、彼の気持ちはよく分かる。

 もはや獣人はおらず、人間同士の対決となった以上、外から来た人間よりも由緒正しいシーメル王国の騎士が優勝する方が見栄えが良いだろう。

 

 それは俺も同じ気持ちである為、敗北して新しい家の資金にでも充てるかと思ったのだが。

 ここで更に横から入ってきたのがアリア様だ。

 

 アリア様はまさか決勝戦が何者かによって金銭で操作されているという事は無いでしょうね。

 と大きな声で問うたのである。

 

 いや、そもそも俺は参加した時から金銭での参加なのだが……。

 という疑問を持ちつつも、アリア様は手加減なんかするんじゃないぞ。という目で俺をジッと見据えていた。

 

 確かに俺は金銭を受け取っている側だが、悪いのはどちらかと言えばその話を俺に持ちかけて来た方だと思うのだが。

 こうも強く見つめられてしまうと、俺が悪い様な気がしてくる。

 が、それはそれ。これはこれである。

 

 今、ちょうどよく追加の金が手に入る状況でそれを逃す手はあるまい。

 ここで俺が負けて誰かが死ぬってワケでも無いのだ。

 突然不調になるという事もあるからな。仕方ないだろう。

 

 やっぱり追加資金は惜しいしな。

 と完全に金に目が眩んでいた俺の前に現れたのは、何と決勝で戦う相手のライバルとも言うべき貴族であった。

 

 そして、俺へ依頼をしてきたのだが、その内容は決勝戦で勝って欲しいという依頼だった。

 なんてこった。

 勝って欲しい依頼と負けて欲しい依頼が渋滞している!

 しかも金はどちらも同額。

 これは悩ましい。

 

 勝っても負けても損はないと言えば、損は無いが……。

 はてさて、どうしたものか。

 

 と、悩みながらも俺は決勝戦の場へと向かった。

 そして、神刀を腰に差したまま、うーんと悩む。

 

「リョウ殿」

「ハッ! はい!」

「良い試合にしよう。私では君には勝てぬだろうが、人がどこまで行けるのか。その果てを私は見たい」

「……」

「どうか、手加減はなさるなよ」

 

 あぁ。

 なんてこった。

 俺はバカだ。

 

 俺は真面目がそのまま人間の形になったかの様な騎士を見ながらため息を吐いた。

 

 どうせ、この大会は獣人と人間の勢力争いの一環なのだろうと思っていた。

 その中でちょうど人間で強いのが居るから投入してやれ。みたいな気持ちで自分が選ばれたのだと思っていた。

 

 だから、傲慢であったり排他的であったり、その者によって様々だが、とにかく自分の事しか考えてない奴ばかりなのだと思っていた。

 だが、居るところには居るもんだ。

 

 しかも、そういう人間が決勝に来るのは……何というか。少し……いい気分ではある。

 

「無論、手加減などはしないさ。俺はリョウ。貴方は」

「私はオーウェン。今はただのオーウェンだ」

「なるほど。ではオーウェン殿。戦おう。俺の誇りと貴方の誇りに掛けて」

「あぁ。感謝する」

 

 俺は神刀を抜き、右手で軽く構えながらジッとオーウェンさんを見据えた。

 だが、オーウェンさんは少し不思議そうな顔をしながら俺を見ている。

 

「……? 何か?」

「いや、あの神速の抜刀術という物は見せてもらえぬのだな、と思ってな」

「それでも構いませんが、それだと貴方の武器が持ちませんよ。決着もすぐについてしまう」

「確かに……! 貴殿の武器の輝きを見れば分かる。それほどの剣が相手であれば、我が方の剣が勝てぬのも当然か。すまない。気遣い感謝する」

「あぁ。気にしないで下さい。これは気遣いとかでは無いですから」

「む? そうなのか?」

「えぇ。俺もね。全力で戦って、楽しみたいんですよ」

「楽しむ、か」

「えぇ。これはあくまで試合。殺し合いでは無いですから」

「そうだな。では私も楽しむとするか!」

 

 そして、試合開始の合図と共に俺たちは同時に駆けだした。

 正面から真っすぐに振り下ろしてきた剣を神刀で受け流しながら俺は左へと抜ける。

 

「なっ!?」

「隙だらけですよ」

 

 そのままオーウェンさんの左側の鎧を神刀で叩く。

 その衝撃にオーウェンさんは地面に倒れながら転がって行った。

 

「くっ、はっ! ここまで、違うか!」

「まぁ、これはヤマトの剣技ですから、強さというよりは戦い方ですかね」

「なるほど……ヤマト、か。確か南方にある国でしたな」

「えぇ。俺よりも強い戦士が沢山いる国です」

「それは、恐ろしいな。どの様な魔境か。興味がある」

 

 脇を抑えながらオーウェンさんは立ち上がり、再び剣を構えた。

 聞くまでもない事だが、戦いを続けるという事だろう。

 

 ならば、もう一度受け流しをしてみるか……?

 いや、どうかな。

 二度同じことが通用するかどうかは微妙だし、オーウェンさん自身も同じ技で叩かれ続けるのは納得出来ないか。

 うーん。しかし、自分ではどうにも出来ない技を潜り抜ける喜びもあるし……。

 

「ではゆくぞ! リョウ殿!」

「えぇ」

 

 俺はどちらが正解かは分からないが、なる様になるかと神刀を再び構えた。

 そして、今度は正面から受け止める。

 オーウェンさんは酷く驚いた様な顔をしながら僅かに引いていた左足を前に出し、強く俺を押し込んできた。

 

 なるほど、対策は打っていたのか。

 なら、受け流しをやっても良かったかもな。

 

「受け止めることが、出来ないのかと思ったのだが」

「そういう訳でも無いですよ。色々出来るから、戦い方が武器になるワケですし」

「それはそうだな……! しかし、このまま押し込めば」

「勝てると思うのは……少しばかり甘い」

 

 俺はオーウェンさんの剣を受け止めたまま僅かに体を引く。

 それで更に剣は押し負けてしまうが、タイミングを見計らって、一気に体を引いた。

 それにより、オーウェンさんの剣は真っすぐに地面へと落とされてしまう。

 

 そのまま俺はオーウェンさんの剣を足で踏みつけたままオーウェンさんの首元に神刀を突きつけるのだった。

 

「と、まぁ。こういう形で終わらせることも出来る訳です」

「まさか、ぶつけ合っている最中にも流せるとはな。どの様な神業だ。それは」

「練習すればすぐにでも出来る様になりますよ」

「なるほど。では指南いただきたいくらいだ」

「まぁ、落ち着いてからなら……そういう事も可能でしょう」

「そうだな」

 

 という訳で、俺は割とアッサリ勝利をおさめ、近衛騎士決定大会優勝そして辞退という結果に終わった。

 ここまで決まっていた流れではあるが、本当にこれで良かったのだろうか。という思いもある。

 想いだけだが。

 

「では、俺はこれで」

「リョウさん」

「……なんでしょうか」

 

 そして、全てが終わり、アリア様に挨拶をして再び復旧作業に戻ろうとしたのだが、呼び止められてしまう。

 嫌な予感がいっぱいだ。

 

「実は騎士の方々から要望が来ておりまして。戦い方の指南をと」

「お断りは……」

「そして、獣人の方々からも、訓練に付き合って欲しいと」

「……」

「ちょうど獣人さんと人間が互いに近づきあうチャンスなので……どなたか手伝っていただけたら嬉しいのですが」

「分かりました。時間が空いている時だけですよ」

「えぇ、勿論ですよ」

 

 ニッコリと微笑むアリア様を見て、ここまでの事は全てアリア様の策略だったのではないか。

 と俺は考えてしまうのだった。

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