シーメル王国一等地一番地に新しい我が家を作る事になった訳だが。
色々と話し合った結果、この家は帰る家が居ない子とかを受け入れる事も出来る場所になりそうである。
家の大半を子供達の為の施設としつつ、騎士と獣人が互いに親交を深められる場所とすれば良いかと思う。
「じゃあ、まとめるけど。一階は道場、大きめの休憩室、大きめの内庭、調理場、子供が食事する場所、遊ぶ場所等々」
「二階は子供達が寝る部屋とか、本を読む場所とか、子供用の大きなお風呂とか、静かな遊びをする場所って感じかな。後はまぁ客間とか諸々。ただし子供の部屋と、それ以外は繋げない感じで」
「三階は、ひとまず俺たちの生活スペース……だけど、まぁ基本はセオストの家に生活拠点があるし、仮の部屋って感じかな。ただし、一階から二階には直接繋がないで、簡易転移ゲートを作って移動する感じ。貴重品もあるし。知らない人が入ってこない用だね」
「んで、四階。ここは家族用のお風呂とか簡単な運動をする場所。他は天体観測用の部屋。研究室とか資料室とか諸々」
「後は、地下の一階に食糧庫を作って、二階にはプールって感じですかね。ザックリと」
「おう。結構大掛かりな工事になるが、たっぷり金も出るしな。人も集められるからそれなりに早く終わると思うぞ」
「なるほど。ではお願いします」
「あぁ。とりあえず、地下の工事はもうやらせてるから、一階が出来たら声を掛ける。子供らの居場所は早く作りたいからな」
「ありがとうございます」
既に地下二階と一階の工事は始まっており、一階の工事も職人たちが走り回って、図面を共有しながら魔術を使い建築を始めていた。
なんという速度。
地下と地上を同時に工事しているのも中々凄いが、これが魔術の力という奴か。
「あら。もう工事が始まっているんですね」
「えぇ。どこかの国の女王様が子供達の受け入れ場所がまだかな。まだかな。と煽ってくるもので」
「あらー。それは酷いお話ですねぇ」
自分は関係ないとばかりに頬に手を当てながら微笑まれるアリア様に俺はへッと笑う。
しかし、別に反抗しようとかいう気はないため、何か御用かと聞いてみる事にした。
まぁまぁ接する回数が多いからか、気安くなった物だと自分でも思う。
「それで? アリア様はどの様なご用件でこちらへ?」
「子供達が安心できる場所はそろそろ出来たかなと思いまして」
「工事は始まったばかりですよ。アリア様」
「あら。そういえばそうでしたね」
「しらじらしい……」
「ふふ。リョウ様が面白い回答をして下さるので、ついつい甘えてしまいました」
「まぁ、それも良いですけどね」
「では甘えついでに、一つお願い事をしても良いですか?」
「内容によりますね」
「可愛い妹のお願いですのに?」
「妹という立場を武器として使ってくる方には一定の警戒をしておりますので」
「リョウ様は自分の色に染められる子が好み。という事ですね」
「誤解を招く様な発言は慎んでいただきたいですね。アリア様」
「お兄ちゃん。うるうる。アリアのお願い。聞いてくれませんか?」
「あざとすぎて、自分でもビックリするくらい心が動きませんでしたね」
「中々難しい方ですねぇ」
アリア様は苦笑しながら俺の腕をえいや、と叩いた。
なんとも可愛らしい仕草である。
アリア様以外であれば、俺も容易く折れただろう。
しかし、相手はアリア様。油断をすれば何を仕掛けられるか分かった物じゃない。
が。
「……はぁ。それで? なんですか? 妹の気持ちを踏みにじるのは趣味じゃないので、話は聞きますよ」
「ありがとうございます。では、リョウ様の家に、私の部屋を用意してくださいませんか?」
「駄目です」
「えぇ~。駄目ですか? うるうる」
「それは効きませんよ」
「あら。そうなんですね。でしたら、使っても問題ないですよね?」
ニッコリと俺の服を指でつまみながらアリア様は微笑んだ。
その姿は純粋な子供の様な感じで、思わず頷いてしまいそうである。
「そもそも何でアリア様の部屋が必要なんですか? すぐ目の前にアリア様の城があるでしょう。城が」
「良いじゃないですか。お兄ちゃんの家にアリアのお部屋があっても」
「……遊び終わったら自分のお家に帰ろうね。家がない子はしょうがないけど」
ニコニコと微笑むアリア様と、俺の間で無言の空間が生まれる。
が、アリア様は、はぁとため息を吐いて、見た目に似合わない大人びた顔になった。
「既成事実ってあるじゃないですか」
「想像よりも最悪な答えが返ってきましたが」
「……面倒なんですよね。国が手に入るチャンスだ。って婚約を申し込んでくる方が多くて」
溜息を吐きながら、どこか愁いを帯びた顔でそんなことを言うアリア様に同情が生まれるが、その風よけ役として今俺が狙われているという話である。
「なんで俺なんですか」
「リョウ様は子供好きですが、絶対に手を出さないでしょう?」
「分からないですよ?」
「残念ながら、リョウ様の周りに居る子を見ていれば分かります」
ぐうの音も出ない程に、分かりやすい証拠であった。
まぁ、確かに俺が幼児性愛者であれば、俺の周りは酷い事になっていただろう。
「なので、私が良い年齢となるまではリョウ様に庇護していただこうかと思いまして」
「別に守ることは構いませんけどね。それこそオーウェンさんでも良いでしょう」
「駄目ですよ。オーウェンさんには婚約者の方がいらっしゃいますし」
「そうなんですか!?」
「えぇ、オーウェンさんの三つ上の、とても美しい方ですよ」
何だか一気にオーウェンさんが羨ましくなったな。
年上の美人さん。くっ!
俺もそういう人と付き合いたいもんだなぁ。
「ふふ。そんなに悔しそうな顔をしなくても。私も大きくなれば美人になると思いますよ。お母様は美人でしたし」
「……何故、アリア様が成長した時の話を?」
「それはもう。リョウ様と結ばれる予定だからですね」
「その予定は……俺も知らない予定なんですが」
「今お話ししたので、これで問題ないですね」
「問題しかありませんねぇ……だいたい俺は貴族じゃないんですよ」
「そこが良いんじゃないですか」
アリア様は酷く嬉しそうな顔で両手を小さくパンと叩いた。
何一つ偽っていない。正真正銘本音だけで語っている様な顔だ。
「何のしがらみもない世界に届く刃を持つ御方。私の様な者には喉から手が出る程に欲しい人ですよ」
「まったく嬉しくないですね。本当に。心の底から」
「きっとエルネスト様も同じ様に多くの方に求められたのでしょうね。圧倒的な武力と、適度な知性。そして国や貴族と関係がない。とても素敵な人材です!」
キラキラとした笑顔で打算まみれの話をされても困る。
これならまだ見た目が好きになったみたいな話の方がマシだ。
いや、それはそれで相手が子供なら断るんだけれども。
「でも、私って結構リョウ様にもちょうどいい女だと思うんですよね?」
「言い方」
「リョウ様は王配という立場になりますし。権力を手にする事が出来ます。そうすれば好きな女の子を囲う事も出来ますよ」
「俺がそれを望んでないという事を除けば、魅力的だろうね」
「もしかして、男性を好いている……という事でしょうか?」
「違うよ。俺は本当に好きな人と結婚して、家族を作りたいの」
「であれば、私を好きになるのが効率的なのでは?」
「効率で人を好きになるのは違うでしょ」
「なるほど……リョウ様はロマンチストなのですね。まぁ、リョウ様ほどの力があればそれも良いと思います」
「ん?」
「ですが、苦しい世界を生きる人たちはその様な余裕がありませんから。リョウ様も気を付けて下さいね」
「う、うん。ありがとう」
突然謎の警告をされてしまったため、俺は何だか微妙な気持ちになってしまった。
そして、アリア様は部屋はお願いしますと言ってそのまま去っていく。
最後は反論の機会を貰えなかったため、これが狙いかと俺は頭を抱えるのだった。