異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第333話『シーメル王国の新しい日々(はじまり)3』

 アリア様がわざわざ俺の元へ訪ねて来て、部屋を要求してきたという事は話していた以上の意味があるのだろうと俺は考え、とりあえず最上階に大きな部屋を用意する事にした。

 まぁ大は小を兼ねるというし、小さな部屋が欲しい時の事も考え、各階にアリア様の部屋(仮)は用意しておく。

 そして、職人さんと話をしていたら、思っていたよりも早く家も出来そうな為、俺は気になっていた子供の様子を見に行く事にした。

 

 体の傷はなくとも心の傷が深ければ日常生活を送るのも苦しいだろうし。

 俺の家が安心できる場所となるならば、それが一番だと考えたからだ。

 

 という訳で、オーウェンさんより頂いた孤児院の仮施設を目指して進み、そっと外から様子を伺ったのだが……どうやら想像よりも酷い状態のようだ。

 

 孤児院の仮施設には教会のシスターさんの様な人が居たのだが、苦しんでいたり、泣いていたりする子供を支えながら色々な言葉を掛けていたのだ。

 その表情には疲労の色が濃く見える。

 

 俺は居ても立っても居られず、孤児院の仮施設に向かって声を掛けた。

 俺でも何か出来る事があるのなら、すぐにでもそれをやりたいと思ったからだ。

 

「申し訳ございません! 少々よろしいでしょうか!」

「はいはい。あら……貴方は」

「私はセオストの冒険者、リョウという者なのですが」

「もしかして、あの時、助けに来て下さった方……でしょうか?」

「貴女を助けたかどうか、申し訳ございません。私には記憶が無いのですが……おおそらくはそうかと」

「えぇ、えぇ。よく覚えていますよ。間違いなく貴方様でございました。アリア様からお手伝いの方がいらっしゃるとは聞いていましたが」

「はい。自分が。大した事は出来ませんが、何でも言ってください」

「ありがとうございます。今はもう忙しくて、ご協力いただけるとありがたいです」

 

 シスターさんはペコペコと頭を下げていて、シスターさんの向こうに見える子供たちは向こうにいるシスターさんの陰に隠れながら俺の事を伺っていた。

 そこで俺は、ひとまず「お邪魔します」と言ってから敷地の中へ入り笑顔で子供たちへと近づく。

 

「こんにちは」

「こ、こん」

 

「無理して挨拶しなくても大丈夫だよ。俺はみんなを怖いモノから守る為に来たんだ」

「まも、る?」

「そう。こう見えてお兄ちゃんはスッゴイ強いんだ。だからどんな怖いモノが来てもお兄ちゃんがいれば大丈夫だよ」

 

 ニコニコと本当に不安など何一つ無いのだと示しながら、俺は子供たちに微笑む。

 その笑顔に子供たちは少しずつではあるが、戸惑った様な顔をしつつも俺を受け入れる様に小さく頷いてくれる。

 

「兄ちゃん!」

「あぁ。なんだい?」

「おれ、兄ちゃんの事、見たよ! すごいデッカイ奴を追っ払ってた! 本当に強いん、だろ!?」

「あぁ。少なくともこの国じゃ一番だ」

「っ! そう、なんだ」

 

 子供達の中から活発そうな子が一人、立ち上がって俺を見据えながら叫んでいたのだが、その言葉に少しずつ涙が混じって、苦しそうに言葉を紡ぐようになっていった。

 俺は開かれていたガラスの扉を抜けて、孤児院の仮施設の中へと入る。

 

 そして、泣きじゃくりながらも俺をジッと見つめている少年の前にしゃがんだ。

 

「兄ちゃん、は……怖い事、しないのか?」

「あぁ。そんな事するもんか」

「っ」

「なぁ、少年。大切なものはあるか?」

「……メイ」

「じゃあ、メイちゃんをイジメている奴が居たら、君はどうする?」

「やだ」

「そう。嫌だよな。俺だって嫌だ」

「兄ちゃんも、嫌なのか?」

「当然さ」

 

 俺は泣きじゃくっている少年の頭を撫でながら、微笑む。

 不安に揺れている心を、少しでも落ち着ける事が出来る様にと。

 

「俺は、友達が大切なんだ。そして、友達の大切な子も、大切だ。だから大切なものを守る為なら戦う」

「……ともだち」

「そう。なぁ、少年。君の名前を教えてくれないか?」

「け、ケン」

「そうか。ケン。俺はリョウだ。よろしくな」

 

 俺は少年の手を取り、軽く上下に振って仲良しの合図をする。

 そして、ゆっくりと震えている少年を抱きしめて、背中を撫でながら不安など無いのだと再び示した。

 

「じゃあこれで俺とケンは友達だ。ケンとメイにイジワルする奴は俺が何とかしてやる」

「……にい、ちゃん」

「今日までよく頑張ったな。ここからは兄ちゃんが何とかしてやるから。俺はどんな奴にも負けない。もう痛い思いも、怖い思いもしないよ」

 

 今日まで必死に耐えてきたであろう少年は俺に抱き着いて、大きな声で泣きじゃくった

 そして、少年の言っていたメイちゃんなる子も、少年の所まで歩いてきて、少年の服を引っ張りながら俺を見上げていた為、手を伸ばして大丈夫だよと言って、一緒に抱きかかえる。

 

 こうなると、周りも抑えられなかったのか俺の元へ駆けていて、そのまま抱き着いて泣き始めた。

 しかし、殆どが悲しい涙では無く、ようやく安全な場所に来たのだという様な安心の感情が強く出ていた様に思う。

 

 何だかその光景を見ていると、俺まで涙腺が緩んでしまいそうで……何とか耐えていたのだが、シスターさん達は我慢出来なかったのかボロボロと泣いているのだった。

 

 

 それから。

 ひとまず追いついた子供たちは俺の周りで色々な話をしてくれた。

 

 子供達はアリア様やシスターさん達もお友達であるらしく、俺にみんなを守ってと必死に言ってきたのだ。

 自分たちも苦しい状況だというのに、なんて良い子達なのだろうか。

 

 俺は子供達になるべく楽しい話をしようと今作っている家の話をする。

 

「実はな。今、みんなと一緒に住める家を作ってるんだ」

「そーなの?」

「そう。怖いものは来ないし。みんなで遊べる場所とか、眠れる場所。ご飯を食べられる場所もあるよ。お風呂だってある」

「わぁー。すごーい!」

「ね、ね。お兄ちゃん。シスターは? シスターは一緒じゃ無いの?」

 

「えーっと、シスターさんはどうしましょうか? どういう状態か、申し訳ございません。自分把握してなくてですね」

「もしリョウ様がよろしいのでしたら、私たちも子供達と一緒に居られましたら……」

「あ、それはもうお願いしたい気持ちです」

「であれば、お願いいたします。私たちもこのまま離れ離れというのは寂しいですから」

「そうですよね」

 

 遠くからサッと見ただけでシスターさん達の子供達への愛情は強かった様に思う。

 そして子供達だって、戦力という意味で俺への安心があっても、心を許しているのはシスターさんのハズだ。

 ならば、シスターさんが一緒に居る方が安心なのは間違いない話だった。

 

「では、申し訳ございません。お願いします」

「こちらこそ」

 

 互いに頭を下げ合って、お願いをする。

 そして、子供達と遊びながら、何となくの工事状況を伝えて、引っ越しの準備なんかを少しずつ進めてもらうのだった。

 

「しかし、そんなに早く終わる物なのですね」

「あー、一応全体の完成は待たないで、一階が出来た時点で住める感じにはなるので、住んでいる間も上の階は工事が続きますね」

「なるほど」

「でも騒音とかは問題ないですよ。ただ、知らない大人の人が周りに居るので、子供たちが不安かもしれませんが」

「その時は外に出ない様にすれば良いでしょうか」

「そうですね」

 

「おれ! へいきだよ! 全然怖くないもん!」

「ねー、お兄ちゃんが居るもんねー」

「こわくない」

 

「あらあら。責任重大ですね。リョウ様」

「まぁ力に関しては問題ないかなと思ってます。問題は、子供たちへの気配りとかですかね。そこはシスターさん達にお任せしたい部分ではあります」

「はい。是非頼って下さい」

「助かります」

 

 情けなくはあるが、俺はシスターさん達の力を借りて頑張ろうと心に決めるのだった。

 そして、その日の夜は孤児院の仮施設を出ようとしたら子供が泣いてしまった為、そのまま泊まる事となった。

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