子供達とそれなりに親交を深めた俺は、子供たちに請われるまま孤児院に泊まり、子供達に囲まれて眠る事となった。
同じ部屋にはシスターさん達も居た為、それなりに緊張したが、子供が沢山いる状況で何かが起きるはずもない。
子供の相手でまぁまぁ疲れていた事もあるし、俺はすぐに眠りに落ちた。
そして、翌日。
俺は朝から元気よく訪ねて来たユウキちゃんの相手をする事になった。
「やぁ! みんな! 元気かな!?」
「おねえちゃん、だれー?」
「ふっふっふ。良い質問だね! 僕は何を隠そう! 勇者! 勇者ユウキだよ!」
「おー! ゆーしゃ!」
「しってる! ゆうしゃー! すごいやつだー!」
「ふふん。そうだろう。そうだろう。僕は凄いんだよ! ふっふーん!」
腰に手を当てながら得意げに笑っているユウキちゃんは、年頃が近いからか。
もしくはユウキちゃんが接しやすいからか、中々子供に人気な様で、多くの子に囲まれていた。
これで俺やシスターさんのやることが消えるのか。と言えばそんな事はなく。
シスターさんにしか懐かない子もいるし。俺から離れるだけで泣く子も居る。
なので、俺は離れるだけで泣いてしまう子を抱き上げながら孤児院へのお客さんであるミクちゃんや桜と話をしていた。
「こっちまでわざわざ来てくれてありがとうな。桜」
「ううん。多分こんな事になるだろうなって気がしてたからさ。温めるだけで良い料理を色々作って来たよ」
「……! 桜。なんて良い子なんだ」
「まぁ、私もそこまで忙しいワケじゃないしさ」
「いや、炊き出し手伝ってるんだし。結構忙しいと思うけど」
「料理作るだけだよ。配るのは別の人たちがやってくれるしさ。大勢の料理を作るのはセオストで慣れてるしね」
「……桜」
なんて優しい妹なのだろうか。
桜の兄で俺はこれ以上ない幸せだよ。
「それで、桜は分かったんですけど、ミクちゃんとユウキちゃんはどうしてこちらに?」
「まぁユウキは、何だかんだ子供が好きなので。苦しんでいるという話を聞いてこちらに」
「なるほど」
「私は、まぁ……世界国家連合議会の人間ですからね。手伝えることは何でも手伝いたいんですよ」
「それは……ありがとうございます」
「いえ! お礼を言われる様な事では無いですよ! 私にも立場がありますからね。当然の事ではあります!」
「立場があっても何もしない人間は居ますから。こうして手を差し伸べてくれるのはとても嬉しい事ですよ」
「リョウさん……。ありがとうございます。そう言っていただけると助かります」
ミクちゃんは酷く感動した様な顔で深く頭を下げた。
そんな大げさな話でも無いが、ミクちゃんの中では色々と思う所があったのかもしれない。
という訳で、俺はミクちゃんとユウキちゃんと共に遊んでいる子供たちの元へ向かった。
が……。
「っ! リョウ君!」
「はいはい」
俺はユウキちゃんの元へ向かう前に数人の女の子にギュッと抱き着かれ、その場に座る事となった。
既に俺の服をギュッと掴みながら抱き着いている子もいるし、後……四人か。
うまい事しなくてはなと俺は順番に抱き上げて、それぞれ好きそうな場所へと誘導する。
そんな俺をどこか呆れた様な目で見ながらミクちゃんは口を開いた。
「リョウさんは本当に小さな女の子に好かれていますねぇ」
「その言い方。色々な誤解を招きそうだから許して欲しいですねぇ」
「しかし、可愛らしい女の子に抱き着かれて、動く事すら出来なくなっているではないですか」
「そりゃ、この状況で動く事は出来ないでしょうよ」
ギュッと俺の服を掴む子達はこうする事で恐怖を和らげているのだから。
それを引き離すなんて残酷な事はとてもじゃないが、俺には出来ない。
という様な事情をミクちゃんも何となく察しているのだろう。
軽く苦笑してからミクちゃんはシスターさん達の所へと向かって行った。
そして、シスターさん達と話をして桜が持って来た食事を奥へと運んでゆくのだった。
おそらくは昼食や夕食に使うのだろうと思う。
食事が充実すれば少しは気持ちが和らぐかもしれないしな。
「なーなー。兄ちゃん」
「ん? どうした。ケン」
「おれ、強くなりたいんだよ」
「……そうか」
俺はケンの男らしい表情に頷くが、いかんせん現状はどうする事も出来ない。
女の子たちは俺から離れることが出来ないのだから。
「そうだな。実は新しい家にな道場を作るつもりなんだ」
「どーじょー?」
「そう。道場だ。そこにはケンの様に強くなりたい男たちが集まる」
「っ! じゃ、じゃあ。俺も」
「あぁ。ケンも参加すると良い。戦い方や強くなる方法は教えてやる」
「ありがと! 兄ちゃん!」
「が、今は……ちょっと俺も動けないしな。ひとまずはあのお姉ちゃんに頼んでみると良い」
「えー。ユウキの姉ちゃん? 強いのか?」
「あぁ。当然だろ。勇者様だぞ」
「んー。それもそっか。分かった! オレ、行ってくるよ!」
「あぁ。頑張ってこい」
俺はケンを見送り、ふぅと息を吐いた。
女の子たちは一向に離れる気配はなく、何なら寝ている子すらいる様に思う。
そして……。
「……りょーくん」
「あぁ。お兄ちゃんは大丈夫だから、おいで」
俺はそれからも増え続ける女の子たちを受け入れ、安心を得る為の人柱として活躍するのだった。
俺が孤児院に通い始めてから数日が経った。
本当に驚異的な事ではあるが、シーメル王国における我が家の一部居住が出来るようになった。
主に一階部分である。
「本当にとんでもない速度だなぁ」
「ホントにねー」
桜と既に出来上がっている一階部分を見ながらそんな感想を漏らしつつ、外が怖いのかいつもよりもギュッと捕まってくる女の子達を抱きしめる。
そして、女の子達を抱き上げたまま玄関から家の中に入り、部屋を順番に見て回った。
どうやら全ての部屋が注文通りに出来上がっているらしく、完璧と言うほかない仕事であった。
という訳で子供達をお引越しさせたいワケだが……。
「あー。ちょっとだけ離れて貰っても良いかなぁ?」
「……!」
全力で首を振る二人にどうしたものかと俺は考える事になってしまった。
これから子供達を全員移動しなくてはいけないというのに、最初の二人で既に限界である。
「どうしたモンか」
「何やらお困りのようですなー」
「実はね。かなりお困りなんだよ」
「ナルホドー。じゃージーナちゃんにお任せっ!」
しかし、俺には強い味方ジーナちゃんがいる為、アッサリと転移で全て解決してしまった。
シスターさん達は突然の事に驚いていたが、勇者パーティが居るという事で色々と納得した様だった。
非常に助かる。
「じゃあ、みんな。今日からここがみんなの家だよー」
「わぁー、すごーい! ひろーい」
「こっちは道場で、騎士の人たちが来るからねー怖い時は奥の部屋に入ってね。この線から奥にはみんなしか入れないから大丈夫だよ」
「そうなんですか?」
「えぇ。家のセキュリティを設定しました。シスターさん達は入れますが、部外者は通る事も出来ません」
「それは凄いですねぇ」
ニコニコと微笑みながらシスターさん達は何度も頷いていた。
基本的に家の奥には子供達とその関係者しか入る事が出来ない為、非常に安全という訳だ。
現状は絶対に安心出来る場所が子供たちの心を癒すだろうから。
「そして、ここが中庭で、その奧にあるのがお風呂。そして、こっちが寝る場所だよ」
「あらあら。色々とあるんですねぇ」
「地下にプールも用意はしているんですが、まだ工事中なので」
「こんなにも色々な施設を……! ありがとうございます」
「いえいえ。俺の家でもありますからね。大した事はありませんよ」
そんなこんなで、子供たちの受け入れも終わった為、いよいよ道場も始めるか!
と思ったのだが……。
「りょーくん」
「あー。そうね。場所が変わっても変わらないよね」
俺は怖がりの女の子を抱きしめながら過ごす事になったのである。