フィオナちゃんとリリィちゃん。
そして、偶然話に参加してくれたモモちゃんとリンちゃんへ、俺はマリア様の事情を話す事にした。
「というワケで、かなり衝撃的な話だから他言無用でお願いします。って訳なんだ」
「なるほどねー」
モモちゃんは納得、納得とばかりに頷き、リンちゃんは今度調べたいと言いながら頷き。
フィオナちゃんとリリィちゃんはひとまず感情が追いついて無さそうではあったが、大きく頷いていた。
「でもさ」
「うん?」
「ミクとユウキにはどうする?」
「二人に関してはちょっと悩んでてね。モモちゃんとリンちゃんから見て、二人はどう? マリア様の事、許容できそう?」
「うーん。難しい質問だねぇ」
俺の問いかけに、モモちゃんは腕を組みながらうーんと唸り始めた。
どうやら少なくとも即答出来ない程度には、二人は嫌な意味で信頼があるらしい。
マリア様の事を許せず、滅ぼしてしまいそうな感じ。という事だろうか。
「でも、ま。大丈夫じゃない?」
「本当に?」
「うん。だって、その人ってリョウ君にとって大切な人なんでしょ?」
「まぁね」
「なら、手は出さないよ。二人とも、誰かの嫌がる事はやらないからさ」
「そうなんだ」
モモちゃんがハッキリと告げた言葉に、俺は小さな希望を感じる。
確かに二人は優しい子だし、多分大丈夫だとは思っていたが……ハッキリと言って貰えると嬉しさがある。
それを考えれば、確かに酷い事はしない様に思えた。
「でも、今教えちゃうと、衝動のままマリア様に襲い掛かっちゃう可能性があるから、ある程度は慣らしてからの方が良いかも」
「なんか魔物のペットを飼う時みたいな話だね」
「似たようなモンでしょ。ミクもユウキも。魔物と大して変わらないわ」
モモちゃんはへッと笑いながらそう言って、手をひらひらと振った。
そして、桜と話していた家族団らんの話もみんなに告げると、快く受け入れてくれるのだった。
それから。
夜近くになり、俺は久しぶりに再会した子供たちに囲まれながら夕食を食べる事になった。
この場には俺に群がる子供たちも当然そうだが、フィオナちゃんとリリィちゃんも、子供たちの相手を適度にしてくれており。
俺が居ない間に男の子達の英雄となった勇者ことユウキちゃんとミクちゃんも子供達と一緒に楽しそうに話をしていた。
そして、そんな大勢の子供たちの向こう側。
桜やマリア様と一緒に居るのがココちゃんだ。
流石に子供達もまだ獣人であるココちゃんには慣れないのか、直接話をする様な様子は無いが、同じ部屋に居て、喧嘩をしたり、イジメたりする様な事はない様で、安心している。
マリア様もココちゃんと一緒に居るのが楽しいようで、積極的にココちゃんとお話をしながら食事を楽しんでいた。
「リョウさん。リョウさん」
「なんですか? ミクちゃん」
「何やら知らない方が混じっている様なのですが」
「そうなのですか?」
「いや、そうなのですか? って、居ますよね? ココさんの隣に。え?」
「あぁ、マリアさんですか。マリアさんなら以前から居たでは無いですか」
「えぇ!? そ、そんなはずは……」
「あれぇ~? おチビさんってば忘れちゃったのぉ? クスクス」
「ジーナさん! 私は忘れっぽくなどありません!」
「でも、覚えてないんでしょう?」
「いえ。私の記憶は確かです。ね? ユウキ。そうですよね?」
「え」
ユウキちゃんは急に話しかけられ、戸惑ったような顔をしていたが、妙に自信満々な俺やジーナちゃんを見て、汗を一筋流してから、ミクちゃんから目を逸らす。
「えーっと。いや? 僕も知ってるけどなぁー」
「嘘おっしゃい!」
「嘘じゃないよ! 僕、ちゃんと覚えてるモン! 勇者だからね!」
「ほ~ら~」
バカにした様なジーナちゃんの顔に、ミクちゃんは酷く悔しそうな顔をした。
そして、俺の方に強い視線を向けると、眉間にしわを寄せながら声に出さず口パクで「あとで」と俺に言うのだった。
本当はもっと引っ張ってからにしたかったけど、流石に無茶があったか。
いや、一応まだ可能性はあるか?
無茶かもしれないが……もうちょっとだけ引っ張れるかやってみよう!
と、考えて……。
俺は食事会を終えてからミクちゃんと二人で暫定的に俺の部屋となっている部屋で話をする事になった。
「で? 夕食の時に居た女性はどの様な方なのでしょうか」
「以前から……」
「もうその誤魔化しは通用しませんよ」
「……ですか」
「えぇ。通用しません。私は自分の記憶に絶対の自信を持っていますから」
「なるほど」
「そう。絶対の自信を持っているんです。私は……。だからこそ、あり得ない」
「あり得ない?」
何か、酷く怯えたような顔をしながら、言葉を繰り返すミクちゃんに俺は首を傾げた。
そして、ミクちゃんはその怯えの理由を俺に話してくれる。
「あの御方は……マリア・テオドーラ・ルチア・シーメル様。アリア様のお母上です」
「……ご存知でしたか。そう実は……」
「そして! 十年ほど前に、シーメル王国で起きた事件により……命を落とした方のハズです」
ミクちゃんは間違いないと確信を持った様な様子でそう語った。
記憶が良いというミクちゃんの言葉は、確かにその通りの様で、ミクちゃんは正確にマリア様の事を言い当てていた。
驚くほど、正確に。
「そういえば。ミクちゃんは世界国家連合議会の方でしたね。マリア様の事も、そこで?」
「えぇ。あの事件は私が担当していましたから。ですが、そんな過去の話はもうどうでも良いです」
「……」
「リョウさん。あの御方はどうして、ここに居るのですか? 何故、生きているんです。蘇らせたのですか!? どうやって!」
「蘇らせてなんていませんよ」
「え」
「あの御方は死者なのです。死したまま、今もなお動いている」
「そんな……バカな」
「まぁ気持ちは分かるんですけどね。これが現実という奴です。俺も結構驚きましたよ」
俺は驚愕しているミクちゃんに、ため息を吐きながら告げた。
それに、ミクちゃんはパクパクと口を開いたり閉じたりしながら、何か言葉を発しようとしていたが、やがて諦めて溜息を一つ零した。
「まったく。何がどうなっているんですか? 説明いただきたいですね」
「説明したいのは山々なんですが……俺も正直何がどうなっているのかはよく分からなくて」
「そんな事、ありますか?」
「まぁ、実際にあるので、あるとしか言いようが無いんですよ」
俺は疑う様な目を向けてくるミクちゃんに、ありのままの真実を伝える。
まぁ、余計な所は一切話さないが。
「アリアちゃんとお墓参りに行って、マリア様の眠っている湖へ行ったら、動き始めたんです。それからはアリアちゃんとお話もして、出来ればアリアちゃんと共に暮らしたいというので、なら、ひとまず我が家へ。という事でお連れしたという様な話ですね」
「そんな……魔法みたいな話。もしかして、ジーナさんが関わっているんじゃないでしょうね?」
「いや? ジーナちゃんも全然知らなかったですよ。そもそもジーナちゃんは一緒に行っただけで、マリア様を蘇生させる様な必要も理由も何も無いですからね」
「それは……まぁ、確かに」
「というワケで、何だかんだと色々ありましたが、俺達はマリア様をお連れして、シーメル王国まで戻って来たというワケです」
ミクちゃんは俺の話を聞いて、どこか納得出来ないとでも言う様な顔で、俺をジトっと見つめる。
「では、何故私に黙っていたのですか? おそらくサクラさん達には話したのでしょう?」
「それはまぁ、酷く単純な理由ですよ」
「なんですか。その単純な理由というのは」
「まぁ……ミクちゃんは真面目な方ですからね。マリアさんの存在を許さないかと思いまして」
「……なるほど」
ミクちゃんは何か色々と言いたそうな顔をしていたが、ひとまずは頷き、納得してくれたのだった。
顔は一切納得していないと言っていたが。