ミクちゃんやジーナちゃんとの話し合いも終わり……というか無理矢理終わらせたんだけど。
まぁいいか。
とりあえず、ミクちゃんとジーナちゃんとの話し合いは終わった。
結局ミクちゃんの不満点は、まぁ、もっと自分に頼れという話だったと思う。
正直な所、俺の気持ちとして、ミクちゃん達には傷付いて欲しくないと思っているからそこは難しいんだけど。
まぁ、願いとしてはそういう話という事だ。
「んー!」
「あぁ。ごめんごめん。もう遅いし、寝ようね」
そして、俺は家に帰ってから構って欲しいのか抱き着いてくる子供達の相手をしながら夜眠る準備をしていた。
ミクちゃんはやや離れた所からこちらを見ているが、流石にこれ以上子供達から離れるのは難しそうだ。
今日は家に帰って来てからも、色々な所に行っていたからな。
ずっと我慢していた子供達も、もう限界なのだろう。
絶対に離れないぞ。という強い意志を感じる。
というワケで、今日の俺はもう閉店。また明日お願いしますという様な状態なのだ。
「さぁー。みんな、寝ようか。もう夜遅いからね」
「「「はぁーい」」」
素直に頷いてくれる子供たちに。うんうんと頷きながら、俺も子供達と一緒に横になる。
流石にまだ眠る様な時間では無いのだが……かなり疲れていたのか横になると自然に瞼が重くなってきた。
「ねー。お話してー」
「んー。あぁ、そうだねぇ」
「駄目ですよ。リョウ様はお疲れなのですから」
「えー! でもお話! 聞きたい!」
「ですから……!」
「あぁ。大丈夫ですよ。話をするくらいなら。やりましょうか」
俺はシスターさんに笑いかけて、ワクワクとしている子供たちにどんな話をしようかと考える。
前の世界で聞いた話なんかでも良いが……どうせならこの世界の話をしたいよなと考えて、つい最近あった面白い事を話す事にした。
「じゃあ、今日はこわーいドラゴンとお友達になるお話でもしようか」
「えー! ドラゴンとおともだちー!?」
「聞きたい聞きたい!」
「あぁ。良いよ」
「すみません……!」
「いえいえ。楽しんでもらえるのなら。俺も嬉しいですよ」
俺は申し訳なさそうな顔をしていたシスターさんに、何でもないよと返してお話を話し始めた。
そうこれは、リメディア王国で起こった一つの物語。
「ある所に、とても可愛らしいお姫様がおりました。お姫様は国の人たちと、とても仲良しで毎日楽しく過ごしておりました」
「しかしある日、幸せなお姫様の国に、こわーいドラゴンがやって来たのです」
話を語るなんて、今までやった事は無かったのだが、やってみたら思ったよりもうまく話せて、俺は次へ次へと物語を語った。
そして、子供たちも楽しそうな声を上げながら俺の話を聞いてくれた。
実に良い感じだ。
「しかし、お姫様の危機に、旅の剣士は立ち上がりました。私が見事ドラゴンを退治してみせましょう! と」
俺はノリに乗ったまま話を続け、全てを話終わる頃には子供達も、シスターさんも小さな寝息を立てながら眠ってしまった様だった。
それを確認し、俺は静かに部屋を離れ、三階へと向かう。
三階には桜たちが寝ており、俺はココちゃんとマリア様が眠っているという部屋をそっと覗く。
何も無いとは思ったが、一応だ。
しかし、どうやら俺の心配は杞憂であったようで、ココちゃんとマリア様は手を繋ぎながら静かに寝息を立てているのだった。
まるで親子の様に、静かに眠る姿はとても安心を覚える物だ。
俺はうんと頷いてから、部屋の扉を静かに閉めて、ジーナちゃんの元へと向かう。
「……ジーナちゃん」
「うん」
「あぁ。良かった。起きてたみたいだね」
「まねー。お仕事には真面目なジーナちゃんですから」
「流石だね。助かるよ」
「へへっ」
得意そうな顔で笑うジーナちゃんにお願いをして、俺達はシーメル王国の王城前に転移した。
何をするのかと問われれば、これからアリアちゃんのアリバイ作りをするのである。
森からたった今戻って来たという様な顔をして、転移で大壁の内側に転移するのだ。
そして、世間知らずの様な顔をして、処理を終わらせて帰る。
たったそれだけの簡単な仕事だ。
「では、行きましょうか」
俺達はアリアちゃんを迎えに行き、そのまま転移で一気に大壁の内側付近へと移動した。
ふわっとした感覚がして、次の瞬間には大壁の前にたっていた。
相変わらずではあるが、ジーナちゃんの魔法は反則である。
「やや!? た、隊長! 人が現れました!」
「何ィ!? 人が現れただとぉ!? そんな事があり得るか! っ! あ、貴女様は! シーメル王国のアリア様!」
「えぇ。先日以来ですね」
アリアちゃんは上から聞こえてきた声に言葉を返し、ぺこりと頭を下げた。
そして、大壁にいる騎士たちに案内されるまま大壁の中へと移動する。
「い、いやぁ。まさか魔女殿の魔法で帰還されるとは」
「帰りは歩くのが大変だったので、良いかなーと思ったんですけど……駄目でしたか?」
「いいえ! いえいえ! まったくその様な事はございませんとも!」
アリアちゃんは悪い子の笑顔を浮かべながら何も分からないという様な言葉遣いで許可をとってゆく。
本当に悪い子である。
「では、これで手続き終了ですね」
「えぇ。えぇ。何も問題ありませんとも」
騎士達の隊長さんは、冷や汗を掻きながら大丈夫。大丈夫と繰り返していたが、正直あんまり大丈夫じゃないんだろうなと思った。
だが、流石に王族にそんな事は言えないし。
彼に赦されるのは問題ないと言い聞かせるだけなのだ。
そして哀れな騎士の方々に仕事を増やしつつ俺達は歩いてシーメル王国へと帰還する事にした。
まぁ、転移で戻っても良いのだが、ジーナちゃんの実力を勘違いさせる意味でも、アリアちゃんの目的を不鮮明にする意味でもある程度は歩いて帰るつもりだ。
「これで依頼も終わりですねぇ」
「リョウさんはこれからどうするのでしょうか?」
「んー。どうしましょうか。一度セオストには戻らないといけないんですよね。それから、ソラちゃんにも会わないといけないし。フィオナちゃんと依頼をしないといけない」
「お忙しいんですねぇ」
「色々と依頼を受け過ぎているだけですよ。本当はもっと暇でも良いんですけど。隙間があると色々と埋めたくなってしまって」
「リョウ君のそういう所、ビョーキだと思うよ」
「……否定が難しいな」
ジーナちゃんが、いーっ! っと言いながら言った言葉に俺は何も反論出来ず、そうだねと呟いた。
確かに、この世界に来てから働きすぎな様な気もする。
しかし、金はいくら稼いでも問題は無いだろうし。あって困る事もない。
ならば、稼げる時に稼ぐべきなのでは無いだろうか。とも考える訳だ。
「でも、ほら。冬ごもりとかもあるし。お金は稼げる時に稼いでおかないとさ。何かあった時に怖いでしょ?」
「フーン」
「何かな? その反応は」
「ジーナちゃん。知ってるからね。リョウ君がもう十分すぎるくらいお金稼いでるの。サクラちゃんに聞いたんだから」
「さて。何のことやら。俺は計算が苦手だからね」
「向こう十年は何もしなくても生活出来るだろうね。って言ってたよ! サクラちゃん!」
「なるほど。しかし、我々の寿命は十年程度では尽きないからね。まだまだ稼ぐ必要があるというワケだ」
「ビョーキだよ。ビョーキ」
酷い言われようであった。
俺の言い訳など全てが無かった事になり、ジーナちゃんは俺をツンツンと突きながら悲しい言葉を向けるのだ。
いや、ホントに。
悲しいよ。
だが、まぁ。ジーナちゃんが言う様に働きすぎというのも真実であるため、俺は黙ってそれを受け入れた。
「ふふ。リョウさんらしいですね」
「ダメだよー。そうやって甘やかしちゃ」
「別に甘やかしている訳では無いですよ。ただ、リョウさんらしい行動だなと思っただけですよ。私はそんなリョウさんも好きだなーとは思っていますが」
そして、アリアちゃんはクスリと微笑んで、月明りを背にしながら楽しそうに笑うのだった。