アリアちゃんとジーナちゃんと俺の三人は、のんびりとシーメル王国を目指して歩き、そしてアリアちゃんを王城に送り届けてから解散となった。
まぁ、解散といっても俺とジーナちゃんは同じ家に帰るワケだが……。
「さ。今日もさっさと寝て。明日からバリバリ働こうね。ジーナちゃん」
「やめてよー! リョウ君が一人でやるのは良いけど。いや、良くないけど! とにかく! ジーナちゃんを巻き込むのは止めて!」
「健康的な生活って奴だよ。健康的な生活」
「どこが! ビョーキだよ! ビョーキ!」
「あ! リョウさん! ジーナさん!」
「うん?」
「ん-? どうしたの? アリアちゃん」
俺たちは背中から聞こえたアリアちゃんの声に振り返り、こちらを見つめているアリアちゃんに問いかけた。
アリアちゃんは何か言いにくそうにしていたが、やがて決心して声をあげる。
「また、こんな風に、お出かけ出来るでしょうか」
「出来るよ。いつでも」
「そうそう。リョウ君働いてばっかりなんだから。たまには呼んであげて。そしたらジーナちゃんも安心」
「ちなみに、今回の件は依頼で動いてました」
「別に依頼抜きで行けば良いでしょ! アリアちゃんは妹みたいな子なんだから」
「まぁ、それはそうだね」
ジーナちゃんに突っ込まれて、俺はワハハと笑う。
そして、アリアちゃんへと再び向き直って言葉を投げた。
「まぁ、そういう訳だからさ。仕事中毒の俺を助けると思って、たまに依頼してくれると嬉しいよ」
「そうそう。お願いね」
「……はい。ありがとうございます」
アリアちゃんはとても嬉しそうな顔で手を振りながら城の中へ戻っていった。
こういう旅がアリアちゃんの息抜きになってくれればと思う。
そして、何となく思ったのだが。
やはり旅に出るというのは、良い息抜きになるのではないだろうか。
「ふむ」
「なぁーに? また何か企んでるの?」
「うん。そうだね。結構企んでる」
「うえー。ジーナちゃんを巻き込まないでよ?」
「まぁ、ジーナちゃんがそう言うのなら」
俺はジーナちゃんに微笑んで、計画を自分だけで進める事にした。
ちょうど、先日地下の工事が終わったという話だったし。
地下の二階にはプールを作って貰ったのだが、大きいのはセオストに作ってもらったし。ここには小さめの子供用プールとしたワケだ。
しかも空間を拡張しながら、である。
そうなるとどうなるか?
そう。地価の二階にはかなり大きなスペースが開いているという訳なんだなぁ。
しかも地下でありながら、天井には陽の光と同じ様に輝く灯りを用意して、時間と共に陽が沈み、月や星が出る様にもなっている。
これは途中から大工さんにお願いしたのだが、見事に実現してくれた。
つまり、地下の二階は実質外とほぼ変わらない状態な訳だ。
しかも危険は一切ない。
ならば、ここで子供達がリフレッシュする事も可能なのではないか? と俺は考えた。
そして、ここに冬ごもりで使ったゲーム世界の様な空間拡張魔術を使って、草原とか森とか、そういう物を作り出せば……?
地下の二階が安心して子供達が遊べる外の空間となるのではないかと思った次第である。
という訳で、俺はセオストとシーメル王国の魔導具屋さんを巡り、ちょうど良い魔導具を探し始めた。
その中で、まぁまぁ良い商品をいくつか見つけ、それを組み合わせる方法を店員さんに聞き、自宅へと持って帰る。
そして、それらを実際に聞いた通り組み合わせて……まさに理想のテーマパークが完成するのだった。
まぁ、前の世界の様なジェットコースターやら観覧車やらは無いが、大きな木を使った滑り台や、滑り降りる事が出来る小さな滝や、飛び降りる事の出来る崖。それらの下には大きな湖があって、ここが元々あったプールである。
さらに森の中にはブランコをいくつも配置し、木には梯子とか階段がついていて、木の上に上る事も出来る。
木の上には、小さな小部屋があって、そこには色々なオモチャや遊べるものを用意しておいた。
さらに森の中にはハンモックで眠る事の出来る場所であったり、木漏れ日の下でゆっくりとした時間を過ごせる柔らかいベッドなんかも用意した。
後は、大量に集まった木の葉の様に見せているトランポリンの様なものがあったり、季節を変える事で外観を変える事も出来る。
しかも、この地下二階において、子供達がどの様に動いても怪我をしない様に安全装置は完璧だ。
子供達同士がぶつかりそうになっても、高い所から落ちそうになっても、何か障害物にぶつかりそうでも、プールに溺れそうでも。
危機的状況となれば安全装置が働く様にしておいた。
まさに子供の秘密基地とでもいう様な形だな。
「よし」
俺は腰に手を当てながらうんと頷く。
思っていたよりも良い感じだ。
後は子供達の要望を聞きつつ、色々と増やしていけば良いと思う。
という訳で、俺は早速子供たちにこの秘密基地を見せるべく子供達が遊んでいる部屋へと向かった。
が。
昨日は、これからしばらくは家で子供達と一緒に過ごすよ。なんて言って居た癖に、早速外出して全然帰ってこなかった俺に子供達はお怒りであり、俺に突撃しながら俺に抱き着いて、よじ登っていた。
「あー。みんな。実はみんなに見せたい者があってね」
「いーやー」
「んー!」
俺は何とか子供達に地下の様子を見せようとしたのだが、俺から離れてくれる様子はなく、全力でしがみついてくるのだった。
なんてこったい。
「ほら、みんな。リョウさんが困っていますよ」
「やー!」
「すみません」
「いえいえ。皆さんリョウさんが大好きですからね」
「あ、はは。嬉しいですよ」
実際、嬉しいは嬉しいのだ。
しかし、それはそれとして、俺をアスレチックにして遊んでいても面白くはないだろうし。
出来るなら、地下で遊んで欲しいという気持ちがある。
運動は体に良いしね。
「なーにしてるの?」
「おぉ、その声は! ユウキちゃん! すまないが、助けて欲しい!」
「そりゃん僕は勇者だから良いけど。何をどう助ければ良いの?」
「子供達を何人か引き受けてくれると助かる。このままじゃ動けなくてね」
俺は顔も塞がれている為、声だけでユウキちゃんだと判断し、子供をお願いしようとしたのだが……どうにも難しいようだった。
まぁ、力があれば良いってもんでも無いからな。
こればっかりはしょうがないか。
「んー。駄目だね。ま、でも少ししたら落ち着くんじゃない?」
「まぁ、そうかもしれないけど……出来れば地下に行きたいからさ」
「地下? 地下に何かあるの?」
「子供の遊び場を作ったんだよ」
「なるほどねー。んー。じゃ、こうするかー。はーい、みんなー! ちょっとだけ移動するから、リョウさんから離れてねー。今日はどこにも行かないから。ちょっとだけ。ほんのちょっとで良いから」
「……ほんと?」
「うん。ホント。僕を信じて」
「……うん」
それから。
ユウキちゃんのお陰で何人かは離れてくれて、シスターさん達も何人か引き受けてくれて。
さらに騒ぎを聞きつけてやってきた、フィオナちゃんやリリィちゃん、それにモモちゃんやリンちゃん、ミクちゃんも子供達を引き受けてくれた。
今日という日にみんなが居てくれて、これほど嬉しいと思った事はないよ。
「感動したなぁ……」
「はいはい。良いから。地下へ行くんでしょ?」
「おぉ、そうだった。桜。済まないが、魔導具を起動させてくれるか? ここに居る全員を地下二階へ」
「はいはい。じゃーみんな手は繋いだかなー? 行くよー!」
桜によって、ココちゃんとマリア様を含めたここにいる全員が地下へと向かう。
そして……。
「わぁー!」
「すごい! すっごい!」
子供達は、一緒に居る人たちの手を引きながら順番に地下二階のテーマパークへと駆けだして行くのだった。