シーメル王国の家に作った地下二階の遊び場に俺は子供達を連れて行ったのだが……どうやら大成功であった様だ。
子供達は目をキラキラと輝かせながら、飛び回り、走り回り、遊び場を全身全霊で楽しんでいる。
素晴らしい事だろう。
「お兄ちゃん? 地下二階はプールにするって聞いてたけど」
「プールならあるだろう? ほら、あそこのに」
俺は桜からの問いに、部屋の右端にある湖に偽装されたプールを指さした。
どこからどう見てもプールである。
まぁ、見た目は完全に森の中の湖であるが。
「いや、あれをプールって言い張るのは難しいと思うけど」
「まぁ見た目はね。見た目は確かにプールというよりも湖だけど、深さも調整出来るし、セオストにあるプールと同じだよ。見た目はちょっと違うけど」
「まぁ、そうだね?」
桜は呆れたとでも言いたそうな顔で苦笑する。
そして、ちょっと見てくるとテクテク散歩しに行くのだった。
俺はと言えば、ズボンをクイクイと引っ張る感触があり、下を見てみれば子供たちが俺の服を引っ張って、早く行こうと急かしていた。
凄く楽しそうで早く遊びたいが、それはそれとして俺から離れたくはないって感じか。
なるほど。
可愛いものだ。
俺は子供たちに行こうかと頷いて、子供の為のシーメル王国テーマパークへと向かった。
とは言ってもだ。
子供達によって何を遊びたいというのは違う為、早速俺は困ってしまった。
本当ならば、子供たちが遊びたい物を選んで、そこに向かうのが一番なのだが……俺にくっついている子達は、俺から離れたくないのだ。
まぁ、シスターさんと一緒に居る子はシスターさんと一緒に居るし。
フィオナちゃん達と一緒に居る子達も、離れたくないのか一緒に遊んでいるが……。
何が問題って、俺の所が子供多すぎるんだよな。
しかも、他の子達よりもギューッとくっついているから、少しだって距離を作るのが嫌みたいだ。
この状態では遊ぶも何も無いだろう。
「んー。どうしようか」
「あそびたい」
「まぁ、そうだよねぇ」
しかし、この状態ではそれも難しいか……。
と俺は考えて一つ名案が思い付いた。
ここはアスレチック的な遊び場が多いが、それ以外の遊びも出来るのだ。
というワケで、俺は子供達と一緒に木の上に作った秘密の隠れ家へと向かった。
「なぁに?」
「ここは秘密基地だよ」
「ひみつきち?」
「そう。みんなには内緒の家って感じかな」
子供達は恐る恐るという感じで、はしごに触っていたが、俺の服を握ったまま上る事は出来ない。
まぁ、当然ではあるのだが……。
そこで俺はこんな事もあろうかと付けておいた装置を起動する。
それは梯子の前にある地面が、地面ごと上に上昇する機能だ。
「っ!?」
「や、やぁ!」
「大丈夫だよ。お兄ちゃんに捕まってれば怖くないからね」
しかし、使った瞬間に子供達は怯えて、俺にしがみついてしまう。
だが、まぁ上に着くまでの僅かな時間だ。それまでは少しだけ我慢して貰おう。
そして、少しだけ時間をかけて上に到着した俺達は木の幹に出来た穴から中へと入り、色々なオモチャを紹介する。
人形とか、おままごとのセットとか。
他にもミニゲームとか色々ある。
ちなみに、全ての部屋にこれを用意した。
当然だ。子供たちが取り合いになったら悲しいからな。
そして、俺は秘密基地の壁に触れて、この部屋をここにいる子達専用とした。
この機能は、地下二階のどの木を登っても、この秘密基地にたどり着けるという物であり、逆にこの子達以外の子供はこの秘密基地に入れないというモノである。
ただし、大人は何処へでも入れる。
大人だからね。
子供に何かあった時駆け付けないといけないから、基本的な制限は子供達だけだ。
「わたしたち、だけ」
「にへへ」
「わぁ」
子供達はとても嬉しそうに見つめ合って、頷いていた。
とても良い事だ。
そして、子供たちはこの場所が気に入ったのかおままごととかをして遊んでいた。
よくよく確認してみれば元気な子達は居ないらしく、大人しい女の子達しか居ない為、遊びも自然とそういう遊びになっていた様だ。
「はい。パパ」
「はい。ありがとうママ」
「パパ。できたよー」
「ありがとう。ママ」
というワケで、俺はこの秘密基地で数人のお嫁さんと共におままごとを楽しんだ。
絵面だけ見ると、小さな女の子達を囲い込んだ多重婚野郎という地獄に落ちるべき人材ナンバーワンという感じだが、まぁおままごとだから。
許して欲しい気持ちが正直ある。
まぁ、ここは秘密基地だから、誰にも見つかる心配は無いのだけれども。
って言ってると、逆になんか犯罪臭いな……。
「お兄ちゃん?」
「わぁっ!?」
「わ。びっくり」
「こ、ココちゃん!? どうしてここに」
「えと、ココね。ココもね、ここで遊びたいな。って思ってね。お兄ちゃんを探してて、そしたら、マリアママがお兄ちゃんの場所を探してくれて」
「地図がございましたので、私が連れてきました」
ニッコリと微笑むマリア様と、戸惑ったような顔で俺を見つめているココちゃん。
そうか。マリア様が居るから秘密基地の秘密が破られたのかと俺は妙に納得しながら、俺の背中に隠れている子達に確認してココちゃん達を招き入れる。
本当は嫌なんだろうが、俺が言うから断れなかったという感じだ。
非常に嫌がっている空気を背中から感じる。
「あー。みんな。少しだけココちゃんも一緒に遊んでも良いかな?」
「……すこし?」
「うん。少し」
「でも‥…その子、獣人だ」
「あー。それは」
「うん。ココは獣人だよ。でも、それがどうしたの?」
「どうしたって! お前らが! パパとママを殺したんだ!」
「ママを食べてた! 笑ってた!」
「お前らなんか、お兄ちゃんが殺してくれる! 死んじゃえ!」
一斉に、子供たちはココちゃんへ酷い言葉を投げかけた。
その中には、思わず顔をしかめる物もあって、ココちゃんをただ庇うのも難しい。
だが、ココちゃんは静かな目で震えて、泣きながら叫んでいた子供達を見ていた。
悲しみもあるんだろうけど、それ以上に子供達を可哀想だという風に、見やる。
「ココちゃん」
「ココは獣人だ。あなた達とは違う。お兄ちゃんとも違う。でも、あなた達の大切な人を殺した獣人とも違う」
「何が、ちがう! おなじだ!」
「違うよ。だって、ココはあなた達に酷い事をしたことなんかない。ココのパパとママは人間に殺されたけど、凄く苦しめられて殺されたけど。ココもいっぱい叩かれて、蹴られたけど、ココはあなた達に酷い事なんかしない」
「……!」
「お兄ちゃんが言ってた。いつか、人間の子供達とココたちが一緒に仲良く出来たら良いね。って。だからココは、お友達になろう? って言う」
ココちゃんはスッと右手を差し出した。
しかし、子供の一人がその手を勢いよく払いのけてしまう。
それに、ココちゃんはとても悲しい顔をしていたが、「ごめんね」と一言謝って秘密基地から出て行くのだった。
マリア様がココちゃんの事は任せて欲しいと言っていたが、正直俺が今すぐココちゃんを抱きしめて走り出したい気持ちだ。
だが、それは出来ない。
何故なら、ココちゃんを叩いた子が、ココちゃんが出て行ってから俺にしがみついていっぱい泣いていたから。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
「そうだね」
いっぱい謝って、泣いて、俺にしがみついていたから。
そして、他の子達も泣きながら、俺にしがみついて泣いていた。
気持ちは、何となくだが……分かる。
本当は良い子達なのだ。
この子達も、ココちゃんも。
でも、シーメル王国という国が作り出しってしまった溝が、壁が、闇が。
この子達とココちゃんを遠ざけてしまった。
本当は良い子達だから、ココちゃんを払いのけてしまった事が酷い事なのだと認識してしまっている。
でも、少し前に付けられた深い傷が、今もなおこの子達を苦しめている。
それが、とても悲しかった。
「お兄ちゃんも、ごめん」
俺は……情けない俺は、謝る事しか出来ず、子供たちの背中を撫でながら心の中で小さく溜息を吐くのだった。