地下二階に子供たちのテーマパークを作り、子供たちの気持ちが少しだけ良い方向へと進み始めた。
そんな中で、ココちゃんは俺がお願いした、人間の子供達と仲良くして欲しいというお願いを一生懸命叶えようと頑張ってくれた。
しかし、その結果はココちゃんが傷つくことになり、子供達も傷つく結果となってしまった。
俺はひとまずココちゃんの事をマリア様にお願いし、子供達と話をする事にした。
泣き止んだ子供達を前に、ココちゃんの事情を聞きたそうにしている子供達に話をする。
「ココちゃんはね。昔。シーメル王国で生活してたんだ。でも、獣人だからって、多くの人間の大人に虐められてた」
「たたかれたり、けられたり?」
「うん。そうだね。後は酷い事を言ったりね。だから、俺がココちゃんを見つけた時は、本当に酷い状態だった。今の君たちと同じさ。俺から離れられなくて、人間に近づくだけで怯えてた」
「……」
「でもさ。ココちゃんは優しい子だから。傷付いたみんなを見ていて、自分にも何か出来ないかって考えてくれたんだ。だから、獣人も全員が全員怖いわけじゃないって事なんだよ」
「でも……パパとママは獣人に、殺された」
「うん。そうだね」
「獣人が、殺したんだ!」
「うん。その通りだ。そして、ココちゃんも獣人。それは間違いじゃないよ」
俺はただ事実のみを獣人に親を殺されたと泣く女の子に告げた。
しかし、女の子はその言葉にショックを受けて、とても悲しそうな顔をする。
「まぁ、みんなとココちゃんが仲良くしてくれればっていうのは俺の我儘だよ。だから、みんなを傷つけて、ごめん」
「お兄ちゃん……!」
「少し短絡的過ぎたと思う。軽く考えすぎたんだろうね」
俺は下げていた頭を上げて、ジッと女の子達を見つめる。
「許したくないという気持ちがあるのなら、それは俺に向けてくれ。ココちゃんは悪くないんだ」
「そんな……!」
「まぁ、こんな言い方もズルいんだろうけどね。俺は君たちも大切だけどさ。同じくらいココちゃんも大切なんだ。だから、ココちゃんが傷つくのは悲しいし。君たちが傷つくのも、悲しい」
「……お兄さん」
「うん?」
「あの、ココちゃんという子は、良い子なんですか?」
「うん。とってもいい子だよ。自分がとても悲しい思いをしたから、みんなにはして欲しくないって考える子だ」
「な、ら……! なら! 一つ、お願い事をしても良いですか!?」
「うん」
「あの子に……ごめんなさい、って」
「エミ!?」
「なんで」
「だって、私、違うもん。パパとママを殺した獣人は復讐だって言ってたけど、関係ないパパとママを殺したけど!! 私は、アイツとは違うもん! あの子は……関係ないから……」
「あ……」
「そう、だよね」
子供たちは、しょんぼりとした顔をしながら、再び涙をポロリと流す。
その姿を見ていてもよく分かる。
優しい子たちなのだ。
「分かった。じゃあ、ココちゃんにエミちゃんがごめんなさいって言ってたよ。って伝えてくるよ」
「……うん。ありがとう。お兄ちゃん」
「いいさ。このくらいは。それに……俺はみんなが優しい子だってわかった方が嬉しい」
「優しい、かな」
「あぁ。とびっきりね。最高に優しいよ。涙が出るくらいだ」
「大げさだよ」
泣きながらもクスリと笑うエミちゃんに、俺は微笑みかけた。
今、シーメル王国で起こっていること。
そして、前にシーメル王国で起こっていたことを思えば、子供たちは優しすぎるくらい優しいさ。
誰かを思いやることができる。
他人の痛みをわかってやる事ができる。
それがどれほど素晴らしいことか。
俺は憎しみの連鎖を断ち切ろうとしている子供たちをとても愛おしく感じていた。
そして、その勢いのまま抱きしめる。
「わ……」
「は、はずかしぃ」
「お、おにいちゃん。あの子のところに行くんでしょ?」
「あぁ。そうだったね。ごめん。ごめん。じゃあ俺は行ってくるから。みんなはここで遊んでてね」
「うん」
「その……あの子に、会ったら、また……その、出来れば、お話したいって」
「伝えるよ。ありがとう、みんな。勇気を出してくれて」
俺は秘密基地を飛び出して、そのまま飛び降りた。
施設は安全装置で俺を空気を操る魔術で捕まえようとするが、それをかわして空へ飛び出す。
そのまま地面に降りたって、施設のマップからココちゃんの姿を探した。
どうやら木漏れ日のゾーンに居るらしいと分かり、俺は高速で足を動かして木漏れ日のゾーンまで向かうのだった。
走って走って。
ようやくたどり着いた木漏れ日のゾーンで、ココちゃんはベンチの上でマリア様とお話をしている様だった。
泣いてはいない。
が、この空気の中で飛び込むのは良くないかと俺は木の陰に咄嗟に隠れて二人の様子を伺う事にする。
「はぁー」
「はぁー。ですね」
「もっと上手く出来るかと思ったんだけどなぁ」
「仕方ないですよ。失敗は誰にでもある事です」
「うん。でも……お兄ちゃんに、迷惑かけちゃった」
「リョウ様は、迷惑だなんて思ってないと思いますよ……ね? リョウ様」
どうやら俺の存在は既にマリア様にバレていた様だった。
まぁ、まぁまぁ派手に動いていたし。バレる人にはバレるか。
と、俺は大人しく木の影から姿を見せて、二人の前に移動する。
「バレてましたか」
「えぇ。それはもうバッチリと」
「なるほど。マリア様には隠し事は出来ませんね」
「ふふ。愛の力ですね」
何とも微妙に反応が難しい事を言ってくる物である。
が、まぁ。とりあえず笑って流しておこう。
こういう事をやっているから良くない。って桜にまた言われそうだが。
「お兄ちゃん」
「うん」
「その、ね。あの……ね」
「うん」
「ココ、ね。がんばろうって、おもったの」
「あぁ。よく分かっているよ。ココちゃんの頑張ろうって気持ち。俺も感じた」
「うん……でも、うまくできなくて、ごめんなさい……」
ポロポロとココちゃんは涙を流して謝罪する。
その涙は、傷つけられたからというよりも、失敗してしまったからという気持ちが多い様に思えた。
「ココちゃん」
「うん……!」
「ココちゃんは失敗なんか、してないよ」
「え?」
「ココちゃんにごめんなさい。って、また良かったらお話しよう。って伝える為に俺は来たんだ」
「……!」
ココちゃんはとても驚いた顔をして、さらに涙を溢れさせてしまう。
そんなココちゃんの頭を撫でて、抱きしめて。
俺はココちゃんは凄い事をやったんだよ。と、ココちゃんに伝える。
そう。ココちゃんは凄い事をやったのだ。
「ココちゃんは凄い子だ。俺はきっとココちゃんとあの子達が仲良くなる為には十年くらい掛かるんじゃないかって思ってた。でも、こんなに早く、こんなにも近くに触れ合えるなんて思ってもみなかった」
「……ココ、がんばったの、かなぁ」
「あぁ。最高だ。最高だよ。これ以上ないくらいに最高だった」
「う、ん……!」
俺は全力でココちゃんを労い、でもと注釈をつけて話をする。
「ありがとう。ココちゃん。でも、またすぐにっていうのは難しいからさ」
「うん。わかってる。落ち着く時間が、必要なんだよね?」
「よく知ってるね」
「うん。だって、前にお兄ちゃんが言ってたから」
「あぁ……そういえば言ったような気もするなぁ」
「だから、ココも、待つよ。お兄ちゃんがそうしてくれたみたいに」
「うん。それは……とても嬉しいね」
俺はココちゃんに微笑んで、もう一度だけと抱きしめた。
それから、ココちゃんがもう大丈夫だと言っていたので、子供達の所へと戻ろうとしたのだが……。
「あ、リョウさーん。いたいた」
「ん? どうしたの? フィオナちゃん」
「なんかセオストの家の方に、冒険者組合の人が来て、リョウさんが帰ったら話がしたいって」
フィオナちゃんからの話に、俺は面倒ごとが起きるんだなという予感を感じてため息を吐くのだった。