さて。
久しぶりにソラちゃん達と会い、話でもしようかということになったのだが。
流石にココちゃんを家に待たせた状態で話をする気にはなれず、ひとまずセオストの家に戻ることとした。
もしかしたらココちゃんはシーメル王国の家に戻っているかもしれないが……まぁ、その時はその時だ。
というわけで家に戻ったのだが、どうやらココちゃんはジーナちゃんと一緒に待っていたらしい。
長く待たせてしまったからか、寂しそうな顔で俺に飛び移ってきた。
「ごめん。ココちゃん。心配させちゃったね」
「はいはーい。ジーナちゃんも心配してたんだけど!」
「分かってるよ。ジーナちゃんにもご心配おかけしました」
ココちゃんを抱き上げながら軽く頭を下げる。
そして、ココちゃんを抱き上げたままお客さんであるソラちゃんとレイちゃんを家に招き入れた。
「じゃあお茶でも入れるから待っててね」
と、俺はソラちゃんとレイちゃんをリビングにおいて、キッチンへと向かったのだが、二人は興味津々という顔で付いてきてしまう。
「あー。ソラちゃんにレイちゃん?」
「おかしい」
「ねー。おかしいよねー」
「な、なにがかな?」
「なんで誰もいないの? この家」
妙に鋭いことを言われてしまい、俺はにこっと笑ったまま固まってしまった。
返答に困る疑問である。
「そんなことは」
「あるよね? だって、物音が全然しないもん!」
「人の気配もしない」
「フィオナさんとリリィさんがいるはずなのに! どこに行ったの!? 二人がいるならリョウお兄ちゃんがお茶を淹れる事なんかないよね!?」
「いや、二人は出かけてて……俺も、たまにだけどお茶を淹れるからさ」
「「嘘だ!」」
「っ!」
「今、お茶を淹れる道具探してるじゃない!」
「それは使い慣れてないってこと」
ソラちゃんとレイちゃんは代わる代わる、息を合わせて言葉を合わせて、俺を推理で追い詰めてゆく。
もう自白までそれほど時間はかからないだろう。というところであった。
だから、俺はこれ以上の抵抗は止め、おとなしく白旗を上げた。
降参の合図である。
「分かった。俺の負けだ」
「いえーい!」
「レイちゃんとソラちゃんのかちー」
楽しそうに笑う双子ちゃんに、俺は微笑んで事情を話すことにする。
無論、多くの人に教えないという条件付きで。
「これから話す話は、誰にも言ってはいけない秘密の話なんだけど」
「おー」
「ひみつの! はなし!」
レイちゃんとソラちゃんは秘密の話という言葉に大変興奮し、ソファーの上で器用にも座ったまま跳ねていた。
その元気な様子に笑いながら、本題を話すことにした。
「実はシーメル王国に新しい家を買ったんだ。それで今、みんなはそっちの家に行ってる感じだね」
「へー」
「でも、大変じゃない? シーメル王国は結構遠いよー?」
「まぁ、それはそうなんだけど。ちょっと秘密の方法があってね」
俺はソラちゃんとレイちゃんを連れて廊下へと移動し、廊下の途中にある転移用の魔導具を起動した。
瞬間、俺と手を繋いだソラちゃん、レイちゃんの体が光に包まれ……次の瞬間にはシーメル王国の家に到着しているのだった。
「はい。とまぁ、こんな感じだね」
「え?」
「もうここ、シーメル王国?」
「そう。魔導具で二つの家を繋いだんだ」
「えー! すごーい! すごーい!」
「でも、コレってルール違反だよね」
「……そうだね」
俺は興奮して飛び跳ねているソラちゃんの横で冷静なツッコミを入れているレイちゃんに頷いた。
まったくその通り。
レイちゃんの言う通り、これは違法行為である。
あー、いや。
正確には各国家によってルールは違っていて、シーメル王国ではアリアちゃんより許可が出ておりルールに反してはおらず、セオストでのみ、ルール違反という話なのだが。
まぁ、だからなんだという様な話ではある。
「だから……まぁ内緒だよ。っていう話なんだけど」
「えー。どうしようかなー。ねー? レイちゃん」
「うん。内緒に出来るか心配」
「そうか。それは残念だ。では、俺たちはセオストから撤退してシーメル王国に移住しないと駄目みたいだね」
「えー!!? やだやだ!」
「でも、バラされちゃったら、犯罪者になっちゃうし。そうなったら逃げないと、でしょ?」
「うー!」
「大人しく捕まれば良いんじゃないの?」
「それじゃ困っちゃうから。それに、俺たちは別にこれを利用して悪い事をしようとしているワケじゃないからね」
「そうなの?」
「うん。まぁ、これ自体が悪い事っていうのはそうなんだけど」
「うん」
「シーメル王国のアリアちゃんが王様になって、一人じゃ大変なんだよ。だから、近くで協力したいなって思って。こういう事をコッソリ始めたんだ。でも、セオストもソラちゃん達が居るし。どっちも守りたい。なら、こういう事が一番かなって」
「うーん」
俺自身、よく口が回るなと思いながら、適当な言葉をソラちゃんとレイちゃんに向けて誤魔化しを始める。
二人は良い子なので、俺の言い訳を聞いてうーんと悩みながら考えているのだった。
しかし、ソラちゃんがハッとした顔になり、コソコソとレイちゃんに耳打ちをして……レイちゃんはうんと頷いてからソラちゃんに笑い返した。
そして、二人はニコニコと悪い子の顔をして俺を見上げる。
「ならさ。お兄ちゃん」
「何かな」
「内緒にしてあげるから。お兄ちゃんの家に移動できる魔導具をソラちゃん達にも……ちょうだい?」
「なるほど。交換条件って事かぁ。でもなぁー」
「なにー? とっても良い条件だと思うけどなぁー? たった魔導具一個で内緒にしてあげるんだから」
「それは別に良いんだけどさ。うっかりソラちゃん達から秘密が漏れないか心配でね」
「うー! ソラちゃん達、うっかりなんてしないもん!」
「どうかな」
「大丈夫! 何も問題はありません! ね? レイちゃん」
「うん。問題なし」
俺は挑発する目的では無いが、真実どうしたものかと考えて思考する。
だが、まぁ。
こういう状況になった以上、ソラちゃん達の交換条件を飲まないと、面倒な事になるだろう。
まぁ、彼女たちの性格を考えれば周囲に喋るという事は無いだろうが……それでも俺への脅しの道具として使って、我儘をいう。みたいな時に、うっかりバラシてしまう可能性がある。
それならば、魔導具を渡してしまう方が確実だ。
しかし、そうすると今度は、ソラちゃん達がその魔導具を使う事で周囲にバレるリスクが発生する。
かなり最悪な状況という訳なのだが……こうなった以上は仕方ないか。
腹をくくろう。
「分かったよ。ソラちゃん。レイちゃん」
「え? じゃあ! じゃあ!」
「魔導具を渡すよ」
「わーい! やったー!」
「これで遊びたい放題」
「ただし! 一つ条件がある」
「じょうけん……?」
「な、なに……?」
「エルネストさんに、この件を相談しに行く」
「えー!? お爺様にー!?」
「絶対、駄目って言われる。だめ」
「そうだよー! これはソラちゃんとレイちゃんとお兄ちゃんの三人の秘密にしようよー!」
「そういうワケにはいかないよ。ソラちゃん達が遊びに来てて、エルネストさんが家にソラちゃん達が居ないって気づいたらどうするの?」
「そ……それは……」
「内緒にしててもいつかバレる。それなら、先に言って、ある程度自由に遊んだ方が良いんじゃないかな?」
「う、うぅ……」
「うーん。困った」
「とにかく。俺の条件はそれだけだ。おうちの人にちゃんと許可を取る事。それが出来ないのなら、この交渉は無し。良いね?」
「はぁーい」
「うっかりはある。なら、しかたない」
ソラちゃんとレイちゃんはしょんぼりとしながら頷いた。
何とか、バレない道が出来そうで、俺はホッとしながら、二人の決断を待つのだった。