異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第366話『彼らの為に出来ること(小さなプレゼント)6』

 ソラちゃんとレイちゃんに我が家へ転移するための魔導具を渡す条件として、エルネストさんや頼子さんへと事情を説明することとした。

 当然の様に二人は抵抗したのだが……これは絶対の条件だ。

 秘密が露見してから対応するよりも、先に話す方がいくらでも対策が出来るのだから当然だ。

 

「うぅー。ねぇ、お爺様以外じゃだめ?」

「頼子さんってことかな?」

「お母さんも、ちょっとダメ」

「なら他に居ないでしょ? どっち? 両方?」

「うぅー。どっちもヤダー」

 

 ソラちゃんとレイちゃんは全力で嫌がっているが、俺もここで折れるつもりなどないのだ。

 この条件だけは何が何でも飲んでもらう。

 

 ソラちゃんとレイちゃんが家から居なくなれば確実にどちらかは気づく。

 その時に、どちらかが共犯であるなら、いくらでも言い訳が出来るからだ。

 

 さぁ、どうする!

 と、ソラちゃんとレイちゃんの回答を待とうかと思ったが、どの道、秘密が知られたままの状態というのは良くないため、二人の心を折りにいく事にした。

 

「悩んでるみたいだね」

「そりゃそうだよー! こんなの無理ー!」

「お兄ちゃんのやさしさに期待」

「なるほど……優しさか。うん。そうだね。分かったよ」

「分かってくれたの!?」

「流石、お兄ちゃん」

 

「二人を地下二階に案内しようか」

 

 俺はニコリと笑って頷いた。

 そんな俺の言葉に、二人は不思議そうな顔をして首をかしげる。

 

「地下二階だって、なんだろ?」

「地下といえば、食料の保管庫」

「えー。じゃあ美味しいご飯を食べても良いよって言ってくれるとか?」

「でも、ソラちゃんとレイちゃんが食べても意味ない。お爺様は納得しない」

「そうだよねー」

 

 なんだろうねーと見つめ合う二人を呼び、俺は地下へと繋がる転移用の魔導具を起動した。

 そして、直後俺たちは光に包まれ……次に光が消えた時に、二人は悲鳴のような歓喜の声をあげた。

 

「わ、わぁー! なにこれ! なにこれ!?」

「すごい。外みたい」

「でも家の中なんでしょ!?」

「そう。ココは地下の二階だよ」

 

 俺は二人に微笑んで、そう告げた。

 そして、更なる追撃の一手を打つ。

 

「でも、残念だよ。ソラちゃんとレイちゃんがお爺様を説得できないなら、ここで遊ぶことを許可して上げられないなぁ」

「えぇー!? やだやだやだ!」

「お兄ちゃん……! うるうる」

「泣き落としも駄々っ子も駄目だよ。俺から出す条件は変わらない。エルネストさんの説得か、頼子さんの説得だ」

 

 俺は色々な手段で抵抗する二人にキッパリと突きつける。

 条件は何も変わらないのだと。

 

 俺の変わらない態度に、二人はチラチラと地下二階の遊び場と俺を交互に見て、ため息を吐いた。

 

「レイちゃん」

「しょうがないよ。ソラちゃん」

「うぅ……」

「レイちゃん達、かわいそう……」

 

「さぁ、どうする?」

 

 最後の抵抗とばかりに、座り込んで泣き真似をしていたが、俺が変わらないことを理解して二人はさっさと立ち上がった。

 そして、大きなため息を吐いてから俺の右手と左手をそれぞれ繋ぐ。

 

「ねぇ」

「それなら、リョウお兄ちゃんも交渉、手伝ってくれるよね?」

「もちろん。最初からそのつもりだよ」

 

「そうだったの!?」

「しらなかった」

「そりゃ二人に丸投げはしないよ。俺の事情だしね。俺が話すから」

「わーい!」

「やったー」

「これで解決だね!」

「勝利確定」

 

 と二人は飛び跳ね喜んでいたのだが……。

 

「駄目だ」

 

 まぁ、世界はそれほど容易くはないという事だね。

 

 俺はエルネストさんと頼子さんを前にしながら、そうだろうなと心の中で頷いていた。

 冒険者組合で話したエルネストさんは変わらず過保護であったし。護衛もなしに遠くへ行くことを許可しないだろうと。

 

「えー!?」

「けちー!」

「ケチではない。これは常識の話だ」

「それに、あなたたち。リョウさんのところへいつでも行けると分かったら毎日行くでしょう?」

「うっ……」

「リョウは冒険者として有能だ。仕事も忙しい。迷惑となる様な行為は慎むべきだ。それが貴族として必要なことだ」

 

 しかし、なんだろうか。

 二人の話を聞いていると、二人が心配というよりは、俺への迷惑を気にしている様である。

 が、まぁ。そうか。

 他所の家に毎日遊びに行くというのはそれなりに迷惑だものな。

 

 それを気にしている感じか。

 

「俺から良いですか?」

「あぁ」

「ウチとしては、別に二人が遊びに来てもかまわないところではありますが……」

「ほらー!」

「お兄ちゃんは良いって」

 

「二人とも。静かにしなさい。まだ話の途中ですよ」

「うー」

「うー」

 

「リョウさん。好意はありがたいですが、それで、私たちがあなたへの迷惑を許容することは出来ないんですよ」

「あ、いえ。なので、魔導具はお二人にお渡しして……二人の判断で使用を許可していただくのが一番かなと思いまして」

「なるほど」

「先ほどエルネストさんがおっしゃった通り、俺がいつも居るワケでは無いんですが。桜やフィオナちゃん、リリィちゃんは居ますしね」

 

 俺の言葉に頼子さんは少し悩んでいる様だった。

 ソラちゃんとレイちゃんは不満げであるが、現状二人に魔導具を預ける選択はエルネストさん達の中に存在しないのだろう。

 なので、そこは諦めてほしいところである。

 

「それで、お前にどんなメリットがあるんだ? リョウ」

「実はですね。この魔導具は彼女たちへの賄賂でして」

「「賄賂?」」

 

「はい。俺はシーメル王国にも家を建てたんですが……そことセオストの家を魔導具で繋いだんですよ」

「なるほどな。それを二人に知られたか」

「えぇ。それで、外で話されるくらいなら引き入れようかなと考えまして。こんな事に」

「フン。なるほどな」

 

 エルネストさんはあまり興味なさそうに頷いた。

 そして、言葉を続ける。

 

「しかし、それをこうして明かしたら意味がないのではないか?」

「まぁ、それはそうなんですけど。エルネストさんと頼子さんはソラちゃんとレイちゃんが悲しむような事はしないかなと」

「確かにな」

「俺の犯罪行為を認可しろとは言わないんですけど、見なかったことにはしてくれるかなと期待してます」

「図々しい奴だ」

 

 エルネストさんはフッと笑って頷いた。

 

「では。二人の事は頼子に任せるとしよう」

「あらあら。良いのですか?」

「家を飛び出して、どこかへ冒険されるくらいなら、リョウの家にいる方が安心だ」

「わー!」

「やたー!」

 

「ただし。リョウの家に行く際には頼子に許可をもらう事。これはお爺様との約束だ。良いな? 二人とも」

「「はーい」」

 

 ソラちゃんとレイちゃんは元気よく手を挙げて、頷いた。

 これで何とか無事秘密を守り通すことができたのであった。

 

 というワケで、俺は安堵の息を吐いたのだが……。

 

「ところでリョウ」

「なんですか?」

「家はセオストとシーメルだけなのか?」

「……と、言いますと?」

「いや。様々な都市に拠点があるのならば使わせて貰おうと思ってな」

「エルネストさん……!」

「いや、資金の援助ならしよう。土地の手配もな」

「犯罪ですよ」

「悪用はしないのだから何も問題は無いだろう?」

「それはそうかもしれませんんが」

「はっはっは! これでどこへ呼び出されても、ソラリアとレイシリアの元へ戻れるようになったというワケだ。よくやったな。リョウ!」

「あんまり嬉しくない賞賛ですが……まぁ、良いでしょう。分かりました。では、色々な都市に拠点を作りますよ」

「うむ。なるべく早く頼むぞ。次にどこぞへと行くことが分かったら場所を教えよう」

「……了解しました」

 

 俺はなんとも言えない気持ちで頷くのだった。

 誰もかれも、犯罪行為をあまり気にしないのだなと思いながら。

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