色々と面倒な事が増えつつも、ソラちゃんとレイちゃんは無事転移用の魔導具を手に入れる事に成功し。
俺は二人の口止めをしつつ、エルネストさんに事情を伝える事に成功した。
そして、折角だからと俺はエルネストさんと頼子さん、ソラちゃん、レイちゃんをシーメル王国の地下二階へと招待するのだった。
「おぉ……ここが家の地下とはな。中々面白い事をするものだな」
「そうですか?」
「えぇ。わざわざ家の地下に遊び場を作る方は居ませんからね。世界的にも珍しいのでは無いでしょうか?」
「そこまでですか……」
俺はエルネストさんと頼子さんの言葉に驚きつつ、自分の作った地下の遊び場を見た。
まぁ、確かにやり過ぎたかもしれない。
しかし、外は危険だし。外を怖がっている子供達にとっては、ここが最適な遊び場である事は確かだ。
そして、子供に人気なのは確かな様で……ソラちゃんとレイちゃんも、ここへきて、すぐにココちゃんと共に走って遊びに行ってしまった。
「しかし、これはもう一つの商売になるかもしれんな」
「それほどですか」
「あぁ。王族や大貴族の子供なんかは、外で遊ぶ事を禁止されている」
「ソラちゃんやレイちゃんの様にですか」
「えぇ。そうですね。二人の様に過保護に育てられているという事もありますが、やはり跡継ぎとなる子が傷つくのは問題ですから」
「なるほど。安全性ですか」
「そうだな。お前の話では安全装置は万全なのだろう?」
「はい。そうですね。まぁ、一応俺と同じ以上の身体能力があれば安全装置を無視して動けますが」
「お前と同程度ならば、もはや安全装置は必要ないだろう。それに、その様な子供は居ない」
「まぁ、でしょうね」
俺は苦笑しつつ、エルネストさんと頼子さんに笑い返した。
そして、二人を案内しながら内部施設を見て回るのだった。
そんな日から数日経って。
一つの事件が起きた。
まぁ、事件という程事件でも無いが……。
大事件と言えば、大事件でもある。
何が起きたかと言えば……。
「どうかな。ココはたしかに獣人だけど、あんまり早くは走れない、かも」
「じゃあ、かけっこしてみましょうよ」
ココちゃんと、先日ぶつかってしまった子達が一緒に遊んでいるのだ。
こんなに嬉しい事はない。
俺は微笑みを浮かべたまま彼らを見て、心の中で涙を流した。
これほど早く見たかった光景を見る事が出来るとは思わなかった……!
「お兄ちゃん!」
「どうした? 桜」
「いや、どうしたっていうか。お兄ちゃんこそ、どうしたの? って感じだけど……」
戸惑った様な桜の言葉に、俺は楽しそうに笑顔で駆けっこしているココちゃんを見て目を細めた。
どうもこうもない。
ここに今、奇跡があるんだ。
しかし、この奇跡は凄い事じゃない。
どこにでもある様な普通の事にしていかなきゃいけないんだ。
「とても、良いことがあったんだよ」
「ココちゃんが子供達と遊んでいること?」
「そう。そうだ。そうなんだよ。とても素晴らしい事だと思うだろう?」
「それはまぁ……確かにそうだけど。そんな震えるほどに感動する?」
「あぁ。するさ。なにせこれは全てココちゃんと子供達が自分達で考えて、自分達で選んだ道の結果なんだから」
「えぇ!? そうなの!? てっきりお兄ちゃんが何かしたのかと思ったけど」
「いや。お兄ちゃんは何もしていないんだ。だからこそ、これほど感動しているんだ」
「なるほど」
桜は納得した様に頷き、俺と同じ様に笑顔で走り回るココちゃん達を見る。
かけっこは、言った通りあまりココちゃんは得意では無いので、女の子たちに負けてしまっていた。
しかし、それが逆に他の子供達の興味を引いたようで……少しずつではあるが、ココちゃん達の周りに子供達が集まってくる。
「うっ……」
「お兄ちゃん……泣いてるの?」
「あぁ。これほど良いものを見る事が出来るとは思ってなくてな」
「そう……?」
「分かりますよ。リョウ様。私も、よく分かります」
「マリア様もお分かりいただけますか」
「えぇ。子供というのは時に信じられない様な成長を見せる物です。それは大人の想像を遥かに超え、一つの輝きへと至る」
「えぇ、えぇ。そうですね!」
涙を流す俺とマリア様を、桜はやや引きながら見ていた。
しかし、感動するのだから仕方ないだろう。
「やっほー! 遊びに来たよ! って、うわ! 泣いてる!?」
「お兄ちゃん、いたいいたいした?」
「あら。ソラちゃん。レイちゃん。いらっしゃい。お兄ちゃんの事はあんまり気にしないでね。ほら、向こうでみんな遊んでるから。向こうで遊んだら?」
「え? どうしよう。レイちゃん」
「気にするなって言ってるし。気にしない方が良い」
「まぁ、そっか……じゃあ、ソラちゃん達も行こう!」
「うん」
走って行くソラちゃんとレイちゃんも、何ら抵抗なく子供達の仲間に入る事が出来て、みんなで一緒に遊ぶという空間が出来つつあった。
この場所を作った意味があるという物だ。
「しかし、一つだけ残念ですね」
「え。なんでしょうか?」
「いえ。ここに……あの中にアリアが居たなら。どれほど良かったかと」
「あー。アリアちゃんですか。でも、アリアちゃんはあんまり元気に遊ぶタイプの子では無いですし……ほら、向こうで本を読んでいる子も居るじゃないですか。あぁいう風に一人で楽しむ事が出来るというのも良い事だと思うんですよね」
「あの子は……寂しく無いのでしょうか」
「どうでしょう。それは俺には分かりませんが。でも……夜寝るときに、読んでいた本の話をしている姿はとても楽しそうですよ」
「なるほど……」
「俺もたまにアリアちゃんと話をしますし。そういう楽しみ方をするのがアリアちゃんなのかもしれませんね」
なんて、マリア様に言いながら、俺は子供達へと再び視線を戻した。
色々な子供達がいる。
色々な好きの形がある。
ならば、子供達ごとに好きな事で遊び、好きな事で楽しむ世界があれば一番だと思うのだ。
まぁ、どちらにしてもアリアちゃんはあまり遊びが好きなタイプには見えない訳だが。
「それに……アリアちゃんは子供らしい遊びよりも、お茶を楽しんだりする方が好きかもしれません」
「そうなのですか?」
「えぇ。アリアちゃんは見た目の割に、かなり大人ですからね」
「そうなのですね……アリアはもう、それほど成長しているという事ですか」
マリア様は感慨深げに呟いて、目を伏せた。
今度、この地下二階にお茶が出来る場所を作っても良いかもしれないな。
なんて俺は考えながら、満足したと息を吐いた。
これで、ひとまずシーメル王国での活動もひとつ落ち着いた様な気がする。
まだまだ小さな問題は色々とあるけれど……それは時間と共に少しずつ解決していく問題だ。
だから、俺はまた冒険者としての活動を始めよう!
と思っていたのだが……!
いたのだが!!
「リョウ様。いつ頃、騎士の皆様に訓練をしていただけるのでしょうか?」
「え」
「まさか! 忘れていたとは言いませんよね?」
「いや、まさか! まさかまさかですよ! えぇえぇ! 忘れていたなんて! そんなまさか!」
ある日、アリア様に呼び出され、俺が完全に忘れていた事を突っ込まれてしまった。
なんてこったい!
そう言えばあったよ! そうだよ!
騎士の皆さんに戦い方を教えるとかそんな話!
とりあえず道場が出来るまでは、なんて言ってたけど。
もう道場は出来ているんだよなー!
しっかしなー。
どうしようかなー。
人に何かを教えるなんて俺には出来ないし……どうすれば。
と考えに考えて、俺は一つの名案を思い付いた。
どうせエルネストさんには家の秘密がバレているのだ。
ならば、アレクさんとヴィルさんにも秘密を教え、孤児院の子供達が遊べる場所を提供しつつ、安全な仕事として提案するのはどうだろうか!
と!