異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第369話『フィオナちゃんと二人旅(極秘依頼)1』

 フィオナちゃんがとんでもない誤解をしていた為、俺はフィオナちゃんに言葉を尽くして何とか誤解を解いた。

 かなり時間がかかったし。言葉もこれでもかと詰め込んだ。

 しかし、それだけの価値があり、フィオナちゃんは俺が普通の人間だと納得してくれたのである。

 

「というワケだったってことなんだよ!」

「ふぅん」

「どうかな!? 納得してくれたよね!?」

「ふぅん」

「納得してくれたね! いやー! 良かった良かった!」

「ふぅん?」

 

 フィオナちゃんは同じ言葉を繰り返しながら、俺を微妙な目で見ているが! 見ているが!!

 納得してくれている。

 しているに違いない。

 そうであろう! そうであってくれ!!

 

 というワケで。

 俺は改めて、フィオナちゃんに依頼の話をすることにした。

 

「まぁ、色々と納得してくれたと思うんだけどさ」

「別に納得はしてないけどね?」

「……もう一回説明が必要かな?」

「いいよ。もう。よく分かったから。もう一回同じ説明とか聞きたくないし」

 

 フィオナちゃんは大きなため息を吐いて、俺をジト目で見た。

 俺は顔を逸らしながら、小さく「ごめんね」と呟いたのだが。

 

 その声が届いたのだろう。

 フィオナちゃんは苦笑しながら、「わかったから」と呟いた。

 気を遣っていただいて感謝感謝という感じである。

 

「じゃあ、ちゃんとお話。聞きましょうか」

「うん。依頼の件だよね?」

「とりあえず仕事としては、運び屋の仕事って事で良いんだよね? 運び屋っていうのが何をするのか、私はよく分からないんだけど」

「まぁ、俺もよく知らないんだけど。アレクさんとヴィルさんの話では、指定された国に運ぶだけ……っていう話だったね」

「ホントにそれだけ……?」

「とは言ってたけどね」

「うー。絶対に嘘じゃん。だって、運ぶだけなら高位冒険者を雇う必要なんか無いモン! 絶対に何かあるんだよー! ドラゴンとか! ドラゴンとか! ドラゴンとか途中で出るんだ!」

 

 フィオナちゃんは半泣きになりながら叫んだ。

 どうやら相当にリメディア王国での事がトラウマになっている様である。

 まぁ、しょうがないと言えば、しょうがない。

 

「そんなぽんぽんドラゴンは出ないでしょ。伝説の魔物なんだしさ」

「それはそうだけど……でも、リメディア王国には出たでしょ?」

「まぁー。でも逆に言えば、リメディア王国に一度出たんだから、数十年は人間の前に姿を見せないんじゃない?」

「うー。確かに」

 

 納得出来たけど、出来ない。

 という様な顔でフィオナちゃんは頷いた。

 

 まぁ、仕方のない事ではあるので、俺はひとまずフィオナちゃんの納得が得られたという体で話を進めてゆく事にした。

 

「まぁ、細かい所は組合で話を聞けばいいかなって思うけど」

「けど?」

「他の人はどうする? って話」

「あー。うー。どうしよう……!」

「まぁ、俺が何かするかもっていう不安があるのなら、リリィちゃんを連れて行くか。ジーナちゃんを連れて行けば、多分大丈夫だろうけどさ」

「それは……! 実はそこまで疑ってないからさ。良いんだけど。ドラゴンが出たらどうしようっていう方が不安なんだよぉ」

「なるほど」

 

 フィオナちゃんの嘆きの声に俺はどうしたものかとしばし思考し……たが良いアイディアは出ず、ただ沈黙するばかりとなってしまった。

 まぁ、しょうがない事ではある。

 

 ドラゴンの生態はよく分からないし。

 この世界のどこかにドラゴンが居る以上、フィオナちゃんの不安は消えないだろう。

 なら、どうしようもないという事だ。

 

「ふむ……」

「何か良い案がある?」

「まぁ、あると言えばある」

「ホントに~!?」

「アリアちゃんの依頼の逆バージョンだね。フィオナちゃんが通信機を持って、リリィちゃんにもう片方を渡す。そして、何かあったら通信機のある場所にジーナちゃんを呼んで、逃げる。これで完璧でしょ」

「確かに……! これなら逃げられるね!」

 

 フィオナちゃんはニコニコと笑顔になりながら頷いてくれたため、俺は細かい事は言わずに頷いた。

 正直な所、それで確実に逃げられるという物でも無いのだけれど。

 心の安心さえ得られればそれで良いのかもしれないな、と。

 

 俺は納得し、ひとまずは話をひたすらに進める事を選んだのであった。

 そして……

 

 

「では、荷物配送の依頼をホワイトリリィで受注ですね。承知いたしました」

「ちなみに何ですけど、依頼の詳細とかって教えて貰えるんでしょうか?」

 

 俺たちは話もまとまったと、早速セオストに行って、依頼を受けつつ受付嬢さんに依頼の詳細を聞く。

 が、受付嬢さんはニコニコと微笑むばかりで特に言葉を発してはくれない。

 

「あのー?」

「依頼の詳細を、と仰られましても。情報は特に変わりません。依頼人より預かっている荷物を、デパルダム王国の王城にいらっしゃるデパルダム国王陛下にお届けする依頼となっております」

「それだけですか?」

「えぇ。それだけですよ」

「何故高位の冒険者を使うのですか?」

「配送品は非常に高価な物の為、より信頼できる冒険者の方に依頼をする必要があるからですね」

「では何故ポータルを使わないのですか? それだけ重要度の高い荷物なら、ポータルを使うのが確実でしょう?」

「機密事項となっております」

「ただ荷物を運ぶだけの依頼で、相場の倍以上に依頼料が高い理由は!?」

「王族の方は気前が良いですからねぇ」

「……」

「……」

 

 受付嬢さんはニコニコと微笑むばかりで一切詳細を話してはくれないのであった。

 まぁ、守秘義務と言えば、確かにそうなのだけれども。

 何か罠があるんじゃないかと疑いたくなる気持ちも分かって欲しい物だ。

 

 しかし、ここまで強情なのであれば、どう聞いても答えてはくれないだろう。

 俺はため息を吐いて、仕方ないと椅子から立ち上った。

 そして、フィオナちゃんも非情に残念そうな顔で席を立つ。

 

「じゃあ、依頼に行ってきますね」

「リョウさん。フィオナさん」

「……なんですか?」

「この依頼は、どこかの誰か……お二人や冒険者の方を狙った悪意ある者の依頼では無いんです。それだけは確かです」

「なるほど」

「ただし、この依頼はある御方の非常に大きな秘密が関わっていますので、何も語る事は出来ません。どうかその点はご留意ください」

 

 俺は防音用の魔導具がある会議室で、声を潜めながら話す受付嬢さんを見て、少しだけ目を細めた。

 分かる様な分からない様な話である。

 が、まぁ依頼者が善良であるのは、アレクさんやヴィルさんが何も言っていなかった事からある程度は信じても良いのだろうと思う。

 

 色々と不安な事もあるが、ひとまずは何も考えず受けても良いのではないだろうか?

 

「わかりました。どちらにせよ。起こってみなければ何も分かりませんからね。信じますよ」

「……ありがとうございます」

 

 そして、俺は深々と頭を下げる受付嬢さんにお礼を言って、フィオナちゃんと部屋を出た。

 それから、依頼の品を受け取り、遥か西方……デパルダム王国を目指して進む事になったのだが。

 

 

「リョウさん」

「……何かな?」

「気づいてますよね。荷物」

「さて、何の事かな」

「これ、全部! 服でしょ! しかも若い女の子向けの!」

「まぁ、そうだね」

「でもデパルダム王国の国王って、男の人ですよ? しかも結構いい歳の」

「らしいねぇ」

「しかも、あの国にお姫様は居ない。この服。どこの誰のモノなんですかね?」

「さぁー。俺にはまったく分からないなぁ」

「名誉にかかわるって、もしかして王様の浮気がバレない様にっていう事なんじゃないですかー?」

「さぁー」

「ポータルを使うと、荷物のチェックをするし。誰宛の荷物とかも記録されるから! 浮気がバレない様にじゃないの!? 私達! 浮気の手伝いをさせられてるんじゃないの!?」

「さぁー。どうだろうねぇ」

 

 俺は遠い空を見上げながらプンプンと怒っているフィオナちゃんに適当な言葉を返すのだった。

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