異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第370話『フィオナちゃんと二人旅(極秘依頼)2』

 セオストの北側にある門を出て、非常に珍しく、フィオナちゃんと共にのんびりとセオストから北にのびる街道を歩いていた俺は、そういえば、最近は転移で移動してばかりでこの辺りの事は何も知らないなぁと周囲を見渡した。

 

「何かあった?」

「いんや。この辺りはあんまり知らないから、どういうのがあるのかなって思ってさ」

「いや、この辺りは知らないって、よく北門から旅に出てたじゃない……って、そうか。リョウさんは基本的に転移で移動してたんだっけ」

「そうなんだよねー。実はねー。まぁ、つい先日フィオナちゃんとリリィちゃん、フローラちゃんと一緒にこの辺りを歩いたけどさ。あの時はフローラちゃんとの話で周りを見ている余裕は無かったしね」

「そういえばそうだったねぇ」

 

 ほんの少し前の事なのだが、妙に懐かしい事の様な感覚を覚えながら、俺は何となくフローラちゃんと歩いた時の事を思い出す。

 何故かな。凄く懐かしい気持ちだ。

 

「行く途中にリメディア王国によっても良いかもしれないね」

「そうですねぇー。それも良いかもしれないですねぇー」

 

 なんて、軽い会話をしながら歩いていた俺とフィオナちゃんであったが、不意に俺はある事に気づいてフィオナちゃんに尋ねてみる事にした。

 

「そう言えばさ」

「はい?」

「なんでセオストから西の方に真っすぐ向かう街道が無いの?」

「農園があるから、では?」

「いや、それなら農園を避けて通せばいいじゃない。北の街道の途中から伸ばしたって良いしさ」

「あー。なるほど。リョウさんの言いたいことが分かった。セオストから直接西の諸国に行きたいっていう話ね?」

「そうそう。そういう話」

「それは無理だよ。だって、途中に聖域があるもん」

「聖域?」

 

 俺はフィオナちゃんの話に首を傾げた。

 聖域と言われても、パッと思いつくものが何も無かったからだ。

 

「世界の中心にはさ。聖域って呼ばれる場所があるんだよ。そこにはどんな人も立ち入りが許可されてなくて。王様とか、英雄様とかでも入れないんだ」

「へぇー。そうなんだ」

「そう。その中心には、なんでも凄く透き通った湖があるっていう話でさ。噂じゃあ聖女アメリア様に関する何かがあるんじゃないかって話なんだよ」

「なるほどねぇ」

 

 観光地の様なモノであれば、いつか行ってみたいなとは思うけれど……聖域というからには、立ち入った者は犯罪者みたいになる可能性が高いし。

 まぁ、お話だけで満足しておく方が良いんだろうなと思う。

 

「世界には色々な物があるんだなぁ」

「そうだよぉー。私もいつか色々な所へ行ってみたいな―って思ってるんだよ」

「それは実に楽しそうだ。未知なる場所を冒険する。それこそが真の意味で冒険者なんだろうしね」

「そういう事! 聖女セシル様が世界国家連合議会を設立した時にも同じような事を言ってたらしいよ。冒険者よ、未知に挑めってね」

「うんうん。偉大な人は良い事を言う」

 

 俺はかつてヤマトで会った聖女セシル様の事を思い出さないようにしながら何度も頷いた。

 ちょっとイメージとズレるが、まぁ昔は偉大な御方であったのだろうと思う。

 たぶん。きっと。

 

「でも、そういう意味じゃあ今回の旅はそれなりに意味があるんじゃないの?」

「浮気の手伝いじゃ無ければねー」

「まだ分からないでしょ?」

「だってー! 他に無いじゃん! 何があるって言うのさ! ココから! 何が起きたら、コレが浮気相手へのプレゼント以外になるの!?」

「ほら、奥さんへのプレゼントとか」

「王妃様はもうそれなりにいい年だよ。こんな可愛い服着ないよ。着るかもしれないけど、着るのなら自分で選ぶよ」

「確かに」

 

 俺はフィオナちゃんの言葉に頷いて、他には何か無いかなと遠い空の向こうを見ながら考える。

 こうやって歩きながらとりとめのない話をするというのは中々に楽しい物だと思いながら。

 

「じゃあ隠し子が居るとか」

「それは浮気って事じゃないの? 王妃様の子供なら普通にお姫様として紹介すればいいんだから」

「確かにねぇ」

「ほらー。なーんにも無いじゃん!」

「じゃあ、アレだ。王子様の婚約者の方とかに贈り物とか?」

「こんな町娘みたいな服を贈らないでしょ。王子様なんだよ? オーダーメイドのさ。綺麗なドレスを贈るべきなんじゃないの?」

「うーん。確かにねぇ」

 

 フィオナちゃんの反論はぐうの音も出ない程に強い意見であり、俺はもう何も候補はないと白旗を上げた。

 どうにもなりません。

 

 未だお会いした事のないデパルダム王国の国王陛下。申し訳ございません。私では擁護不能でございました。

 

 というワケで、デパルダム王国の話は終わり。

 今度は俺たちの家について話をする事にした。

 

「話は変わるんだけどさ」

「うん」

「シーメル王国の家はどう? 何か問題ある?」

「何もないよ。子供達はみんな元気だし。色々と手伝ってくれるし。良い子達ばっかり」

「それは良かった」

 

「まぁー。だからこそ。リョウさんが子供達を置いて旅に出たのは、大丈夫かなぁーって気になるけどさ」

「その件ね」

「そ。その件ですよ。その件。どうなってるの? 実際の所」

 

 フィオナちゃんは興味津々という感じで、俺に視線を向けながら問いかける。

 が、特に面白い話でも無い為、俺はサラリと言葉を返す事にした。

 

「何も問題はないよ」

「そりゃリョウさんはそうだろうけどさ?」

「子供達も。何も問題はありません」

「そうなの?」

「そうなの。思っていたよりも早くあの家にも慣れてね。人間の騎士が道場に毎日来ているとか。子供に優しいアレクさんとヴィルさんが道場で騎士の方々に教えているとか。そんな二人に懐いている子供達が遊びに来ているとか。まぁ色々と理由はあるけどさ。みんな、あの場所に慣れたんだよ」

「そうなんだ」

「そう。あの家は怖くない。何も心配は要らないと思ったら、みんな一人でもちゃんと眠れる様になってさ。たまに怖い夢を見てもシスターさん達がいるし。子供達同士でも、相談は出来るしね。思っていたよりも早く立ち直れているみたいだ」

「それは良い事だねぇ」

「そういう事だね」

 

 俺とフィオナちゃんは互いに微笑ましい気持ちを感じながら遠い空の向こう。

 ちょうどシーメル王国がある辺りを見やった。

 まぁ、ここからでは何も見えないのだけれども。

 

「ん~! なんか、思ってたよりもリョウさんと話しているのが楽しいかも!」

「そう?」

「うん。食堂のオジサンとかだと、こっちの話は聞いてない感じで、一方的に話してくるだけだし。私は笑顔で頷いてるだけって感じだけど。リョウさんとは会話をしているって感じ」

「そりゃ良かった」

 

 俺はホッと息を吐きながらフィオナちゃんを見やる。

 どうやら言葉の通り、本当に楽しんでいる様だ。

 笑顔を浮かべて、スキップする様に歩いているし。

 言葉もどこか躍る様な響きで語られている。

 

 ある程度は長い旅になるのだ。

 色々な心配ごとがある中では旅も大変だろうと思ったが、本当に良かった。

 

「まぁーでもそうだよねー」

「何がかな?」

「食堂に来る冒険者のおじさん達は女の子にモテたい。モテたいって必死だけど。リョウさんはそういうの無いもんね。つまりは、もうモテている状態なんだから、会話が楽しいのは当然なんだなって」

「モテてるっていう感覚は俺の中に無いけれど」

「はいはい。分かりました。分かりました。そうですか。そうですか」

 

「適当な返事だなぁ」

「そりゃそうだよ。リリィを泣かせたら許さないからね」

「泣かさない為の方法を是非とも聞きたいものだけれども」

「そりゃ、リリィを幸せにするって事じゃないの?」

「中々に難しい事を言うねぇ」

 

 何だか、軽い話から、随分と重い話になってしまったなと思いながら俺は遠い空にため息を吐くのだった。

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