異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第376話『フィオナちゃんと二人旅(極秘依頼)8』

 フィオナちゃんの言葉で悩んでいるミリーちゃんとパメラちゃんを見ながら、俺はふむと呟いた。

 俺が思っていたよりも、フィオナちゃんは甘さのない女の子だったようだ。

 自分の道は自分で選べとは、俺もよく言っているが……ここまで小さな子たちに言った事はない。

 

 が、フィオナちゃんは相手がどの様な人間であったとしっても、必要であればいう事も出来る子なのだ。

 なんて凄い子なんだろうか。

 

「……フィオナちゃんは凄いね」

「そう?」

「あぁ。俺には言えなかったからなぁ。あんな格好いい事さ」

「別に。私はリョウさんみたいに甘やかしてないだけだよ」

「それを言われると痛いね」

 

 俺はフィオナちゃんにジトっとした目を向けられ、そっと顔を逸らした。

 そして、話の中心に居るであろう少女たちへと視線を向ける。

 

「パメラ……」

「私だって、分かってるよ……でも」

 

 どうやら二人はまだ悩んでいる様だった。

 いや、二人というよりも、パメラちゃんが悩んでいるのだろう。

 

 当然と言えば当然であるが、俺が出来る事は特にないし。

 大人しく待っているのが正解なのかね。

 

 なんて考えていたら背中をツンツンと何者かに突かれる。

 

「はい?」

「お兄さん。ミリーのお客さん?」

「いえ。彼女に用があるのは確かですが、客ではないですね」

「客じゃないけど、用がある?」

 

 呼ばれた方へと振り返ると、何やら薄いひらひらとした服のお姉さんが、俺に話しかけてきていた。

 ピンク色の服は、服であるが、服ではなく。

 スケスケの寝巻みたいな服は、肌が透けていて……直視できない姿をしていた。

 

「え、えと……お姉さんは」

「ちょっと、デレデレしないでよっ!」

「うぐっ、ごめん。ごめん」

 

 フィオナちゃんよりも拳一つ分くらい大きな柔らかい雰囲気の女性に見惚れていたら、後ろからフィオナちゃんに拳で突っ込まれてしまう。

 それがじゃれ合いを超えて、かなり力が入っていた為、脇に突き刺さって少し苦しくなってしまった。

 

 妹の前でだらしない姿を見せてしまったせいだ。

 心して受け入れよう。

 

「あら。彼女さんを連れて買いに来る人は初めてね」

「別にこの人はそういうんじゃないですから!」

「嫉妬? 可愛いわね」

「そういうのでも無いですから!!」

 

 怒り狂うフィオナちゃんを何とか宥めようとしたが、うまくいかず、フィオナちゃんの怒りは高まってゆく。

 それをお姉さんはクスクスと笑いながら流し、俺の近くに寄ってきて、そっと手を取った。

 柔らかい……!

 

「デレデレしない!」

「うぐっ」

「あら~。お兄さん。かわいそう。束縛されて……私の部屋で良い事しない?」

「しません!!」

「お兄さん格好いいから安くしておくわよ?」

「行かないって言ってるでしょ!」

 

 フィオナちゃんはお姉さんが抱き着いている左腕とは逆の腕に抱き着いてお姉さんを睨みつける。

 ここまでフィオナちゃんが敵意を見せるのは珍しい。

 俺も兄としてしっかりしなくてはいけないな。

 

「お姉さん。申し訳ないんですが、お姉さんと遊びに来たわけでも無いんですよ」

「あら。そうなの?」

「えぇ。俺はミリーちゃん達に話がありまして」

「……ミリー達に話? 何かしら」

「あー。申し訳ないんですが、ミリーちゃん達個人の話でして……」

「お話聞かせてくれるかしら」

「いやー」

「私に話せない様な話? それは聞き捨てならないわね」

 

 お姉さんは先ほどまでの甘い雰囲気から一変し、鋭い目で俺を見据えると、冷たい空気を全身にまとった。

 これは……魔術か。

 俺はフィオナちゃんにもしもが無い様に、神刀へ手をかける。

 

「っ! 何者、かしら?」

「冒険者ですよ。セオストの」

「セオスト。聞いたことあるわ。確か、東の果てにある……魔の森のすぐ近くにある町よね?」

「はい」

「そこの冒険者は一流ばかりと聞いていたけど……なるほど。貴方もそう、っていうワケかしら?」

「さぁ。どうですかね?」

 

 お姉さんは俺が神刀をいつでも抜ける状態になっても変わらず笑みを浮かべたまま周囲の冷気を高めてゆく。

 こりゃ、一度ぶつからないと収まらないかな。と俺が考えていると、ミリーちゃんの声が響いた。

 

「姉さん! ドロシーの姉さん。やめてよ。お兄さんは悪い人じゃないんだ」

「ミリー。貴女は知らないかもしれないけどね。世の中には良い人の顔をした悪い人も居るのよ」

「で、でも! お兄さんは良い人なんだ」

「……」

 

 お姉さんは、小さくため息を吐くと俺を真っすぐに見据え……その瞳の中に殺意が混じった。

 俺はお姉さんが力を解き放つ一瞬に、フィオナちゃんを抱きかかえて後ろに飛ぶ。

 だが、お姉さんは廊下を一瞬で氷結させると、そのまま氷の槍を三つ空気中に生み出し、俺に向かって放った。

 

「フィオナちゃん。ごめん」

 

 俺はフィオナちゃんを背後に半ば投げる様にして送ると、神刀を振り抜いた。

 それは一刀の元に氷の槍を両断し、空気中にキラキラと輝く結晶へと変えた。

 

「リョウさん! 殺しちゃダメ!!」

 

 後ろからフィオナちゃんの焦った様な声が聞こえるが、別に殺すつもりはない。

 が、フィオナちゃんの声を聞いてお姉さんは焦った様な顔をしながら氷の壁を作り出した。

 

「……皇帝陛下よりは弱いみたいだな」

 

 氷の壁だろうが、何だろうが、魔術である。

 魔術であるという事は等しく神刀で斬れるという事だ。

 

 俺は、真っすぐに神刀を振り下ろして氷の壁を砕くとお姉さんに向かって神刀を突き出す。

 その首ギリギリの所へと勢いよく突きをして、壁に神刀を突きさした。

 

「っ! わ、わたし……」

「動けば、殺す」

 

 俺は動揺し、動けないお姉さんに対して、一切の感情を捨て、冷酷に言い放った。

 そして……。

 

「「「姉さん!! こいつ!」」」

「っ! 貴女たち! 駄目!!」

 

「風の刃!」

「燃えちゃえ!」

「びりびりアターック!」

 

 死角から俺に向かって飛びかかってきた少女達へと壁に突き刺した神刀を抜いてから振り抜いた。

 全ての魔術を切り裂いて、神刀を地面に刺しながら女の子達を受け止める体勢になる。

 

 服はお姉さんと同じようなスケスケの服であったが、見た目はフィオナちゃんと同じか、それよりも低いくらいなので、妹として対処可能であった。

 衝撃を感じない様に一人、一人と落ちてくる僅かな差で順番に受け止めた。

 

「サリー! マリー! ピナ! あぁ……なんて事!」

 

 お姉さんはへなへなと崩れ落ちながらポロポロと涙を流した。

 そんなこの世の終わりみたいな声を上げないでほしいんだが……。

 

「っ!? あ、あれ? 痛くない?」

「姉さん! アタシ、生きてる!?」

「なんでぇー!?」

 

「あなた達、無事だったの!?」

 

「別に殺してませんよ。貴女にも傷一つ付けていないでしょ? ただ無力化しただけです。女の子を傷つけたくは無いですからね」

「え……格好いい」

「キュン」

 

「……貴方、どうして」

「いや、だから。最初から言ってますけど、俺は話し合いをしに来たんですよ。争いをしに来たんじゃないです」

 

 俺は女の子達を解放しながら……解放し……。

 

「あの、離れてもらっても良いかな?」

「え?」

「いや、え? じゃなくて……もういいや」

「良くないでしょ!」

「ぐふっ!」

 

 抱き留めた女の子達に離れて貰う様に言ったのだが、なぜか不思議そうな顔をされてしまった為、しょうがないかと女の子達を軽く抱きしめたまま、話を続けようとしたのだが、フィオナちゃんから鉄拳制裁を受けてしまった。

 いや、今のはデレデレしてなかったと思うんですけどね!

 妹に対する愛情だったと思うんですけどね。

 

 まだ、彼女たちは妹じゃないけれども。

 

「まったく、油断も隙も無い。ほら、さっさとリョウさんから離れてください!」

「なぁにー。あの子」

「彼女とかー?」

「えー。釣り合ってないよねー」

「キッ!」

 

 フィオナちゃんは女の子達を追い払うと俺の前に立って腰に手を当てながら鼻を鳴らすのだった。

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