桜とドロシーさんの激しい言い争いも終わりを迎え、二人は一時休戦とでも言う様な状態となった。
まぁ、本気で相手をどうこうしたいというよりは、売り言葉に買い言葉という様な状態だろうか。
もしかしたら、かなり相性が悪いという可能性もあるが……まぁ、家は一つじゃないし。別の家を拠点にして貰えば良いだろう。
しかし、それぞれの家で生活し始める集団が居ると……俺はどこの家に帰るべきなのか悩ましいが……。
生活拠点だけ別にして、夕食とかの時だけ一つの大きな家で行うというのもアリかもしれないな。
ちょっと考えておくか。
「それで? お兄ちゃん」
「ん? 何かな」
「この人達はどうするの? まさか同じ家に住むってワケじゃないよね?」
桜は、やはりというべきか。別々の拠点で住む事を俺に求めていた。
まぁ、そうだろうな。という気持ちである。
「分かってるよ」
「っ! お、お兄さん……!」
「うん?」
「来て早々に……言い争いなんて、してしまったのは、申し訳ないのですが、追い出されるのは……! 私は良いですが、この子達だけは」
何の話だろうか、と一瞬考えたが……あぁ、この家しか拠点が無いと思われているのかと俺は理解する。
まぁ、どこの家が良いか選んでもらうという話もあるし……説明するかと口を開こうとしたが、その前に桜が喋り始めた。
「あのさ。お兄ちゃんを悪者みたいに言うの、やめて貰える?」
「……それは」
「お兄ちゃんがわざわざここまであなた達を連れてきて、捨てるワケ無いじゃん。そういう人に見えてるって言うんならそっちの方を謝って欲しいんだけど」
「桜」
「良いから。お兄ちゃんは黙ってて」
桜は俺の言葉を払いのけて、更にドロシーさんへと言葉を向けた。
確かな怒りと共に。
「お兄ちゃんは、貴女の体になんか興味ないし。あなた達を利用してお金を稼ごうとかも考えてないの。だって、お兄ちゃんは凄いから、そんな事しなくても冒険者で凄い稼いでるもん。でも、凄いお人好しで妹狂いだから、カワイソウなあなた達に何か助けをってやってるんだよ。それが気に入らないのなら出て行けば良いじゃん。別にこっちは困ってないし。お兄ちゃんも貴女の体になんか興味ないから何も困らないんだよ」
色々と言いたい放題言っているが、まぁ割と正解なので特に俺は口を挟まない。
恩着せがましくするつもりは無いが、まぁ確かに助けを必要としていないのなら俺が何かをする事は無いだろうと考えているからだ。
体を売る方が楽だと考えるのなら、このままセオストに送って終わりでも良い。
あそこは冒険者の町だからかなり稼げるだろうし。
フィオナちゃんやリリィちゃんへの反応を見ていれば、美しく、かわいらしいドロシーさん達に危害を加える者は少ないだろう。
もし居たとしても、他の冒険者に袋叩きにされるに違いない。
だから、安全に稼ぐ事は出来る。
でも……本当はそういうのは嫌だというのなら……俺は別の道を示す。
ただそれだけの話なのだ。
自分の人生は自分で選ぶ。
俺が彼女たちに求めているのは、あくまでソレだ。
「あー。ドロシーさん。桜が色々と言っていたんだけど。一応ね。家はいくつかあるんですよ」
「そう、なんですか……?」
「うん。今のところ、セオストとシーメル王国に一つずつ。後は、まぁスタンロイツ帝国と、リメディア王国にも一個ずつ作ろうかなって考えてます」
「……そんなに」
「桜が言ってたんですけど。お金がいっぱいありますので」
「お兄さんは……どちらに住むのですか?」
「俺は……まぁ、冒険者の仕事で飛び回ってるから、どこか一つの家って事はないですね。でも転移が出来るから、どこの家でも行ける。だからまぁ……好きな場所を拠点にして欲しいかなとは思ってるんですけど」
「私はセオストとシーメル王国の家によくいるから、その二つは嫌」
「……と、まぁ桜が言ってまして。でも、同じ町にもう一個家を作る事も」
「いえ。私も同じ町に住んでいるのは嫌な気持ちになるので、別の町が良いですね」
「あー、なるほど」
やっぱり仲悪そうだなぁと思いながら俺はドロシーさんの言葉に頷いた。
とりあえず二人は別々の拠点で生活した方が良さそうである。
いやぁ、何だかんだ別の家を作る計画を立てておいて良かったなぁと、俺は心の中で安堵した。
しかし、そうなるとどこに家を作るかという所だが……。
「ちなみに、希望の国とかってありますか?」
「いえ。特には」
「そうなると……」
「姉さん。なら私はスタンロイツ帝国が良いと思います」
「あら、パメラ。何か理由があるのかしら」
「はい。スタンロイツ帝国は強大な国ですから。アルルンネ帝国から追手が来たとしても、国民と認められていれば、守られる可能性が高いです」
「なるほど」
「それに、姉さんの事を何も知らない甘えた女が偉そうな事を言っているのが、気に入らないので、まだお兄さんが拠点を作っていないスタンロイツ帝国で成果を上げ、姉さんの凄さを認めさせたいと思ってます」
「ふふ。良い子ね。パメラ。ありがとう。そうね。確かに。貰いっぱなしっていうのは私もあまり好きでは無い物ね。良いわ。それでいきましょう」
「はい!」
ドロシーさんとパメラちゃんのやり取りに、桜がぴくっと肩を震わせていたが、見なかった事……には出来ないよな。
一応そちらも気にしつつ、俺はスタンロイツ帝国に決まったという事でジーナちゃんに目線を向ける。
「なぁに?」
「アイス一か月分でどうだろう?」
「アイスはもう飽きちゃったからなぁ」
「なるほど? じゃあ何が欲しいのかな」
「次の旅はジーナちゃんも一緒ね」
「分かった。了解だ。そこで美味しい物を見つけたらご馳走するよ」
「うん。よろしくー!」
ニコニコと微笑むジーナちゃんとの交渉も成功し、俺はひとまずジーナちゃんと共にスタンロイツ帝国へと転移しようとした。
しかし、ドロシーさんがそれに待ったをかける。
「お兄さん。どちらへ?」
「えっと、とりあえずスタンロイツ帝国へ行って皇帝に家を作る許可を貰おうかと。あぁ、家の外観とか内装はドロシーさん達を含めて決めるので……」
「皇帝陛下にお会いするのなら、私もご一緒しても?」
「まぁ、それは構いませんけど。初対面だと結構怖い人ですよ? 皇帝陛下」
「はい。大丈夫です。アルルンネ帝国では皇帝と何度かコトをしておりますから」
「……なるほど」
アルルンネ帝国の皇帝とやらには会った事がないが、スタンロイツ帝国の皇帝陛下と同じ様な存在とは考えにくい。
だから、多分、ドロシーさんの経験が活きる気はしないけど……。
まぁ、皇帝陛下は悪い人じゃないだろうし。いきなり罰したりはしないだろう。
……。
駄目そうならさっさと離脱すれば良いしな! 何とかなるなる!
「分かりました。じゃあ、一緒に行きましょうか」
俺はドロシーさんと共にジーナちゃんの魔法でスタンロイツ帝国の帝都へと転移し……城門の前で皇帝陛下に会いに来たと伝える。
面会の約束など一切していない為、通るとは思えないのだが……何故かアッサリと通され、皇帝陛下と俺達三人の四人だけで面会する事となった。
不用心にもほどがあるのでは?
「よく来たな。リョウ。私に何か用という事だが」
「えぇ、まぁ。以前話をしていた家を作ろうかと思いまして」
「なるほど。では土地を用意しよう。良い場所が偶然空いていてな。そこを使うと良い」
「……偶然ですか」
「そう。偶然だ」
家を作ったら面倒ごとに巻き込まれそうだなと思いながら、まぁ金が増えるなら良いかと俺は頷く。
そして、俺の話はサクサクと終わったので、ドロシーさんへと俺は視線を向けた。
ドロシーさんは、やはりというか。
アルルンネ帝国の皇帝とは違う空気を纏う皇帝陛下に緊張していた様だったが、勇気を振り絞り、皇帝陛下に向かって口を開いた。