色々な失言を重ねながらも、俺は冒険者とは何か……というよりは自己紹介の様な物を終わらせた。
過大評価はあまり好きではないが、まぁある程度は正当な評価を得られるような話が出来たと思う。
というワケで、俺は王様と姫様の安心も得られただろうという事で、サクサクと帰宅する事にした。
何やら姫君の秘密を知ってしまった様であるが、内緒にすると約束すれば問題ないだろう。
あるかもしれないが、そこは冒険者組合長を呼ぶか、エルネストさんに協力して貰って信用を得るしかない。
まぁ、俺としては良く来る国でもないし。秘密を知ったからと言って何かをしようってワケでも無いのだ。
最悪の場合は俺が残り、フィオナちゃんにセオストへ向かってもらおうと考える。
が、事態はもっと早く……そして嫌な方へと進んでしまっていた。
「では……そろそろ私は」
「いや、すまないが、少し待ってもらおうか」
「姫君の秘密を知ってしまった件については! 絶対に誰にも口外しませんので! ご安心を! どうしても不安だという事でしたら、セオストの冒険者組合長か、エルネストさんを……」
「いや、その件ではない」
「そうなのですか?」
「あぁ。もし貴殿が秘密を明かそう物なら、エルネスト老が貴殿を処理するだろうからな」
「なるほど。エルネストさんもご存知の話でしたか」
俺は話に納得しつつ頷く。
そして、一応話を聞いてみるかと王様の言葉に耳を傾けるのだった。
「では……お話。聞かせていただきましょう」
「うむ。すまんな」
「いえ」
まぁ、正直拒否権は無かったけど、俺はそんな感情は一切表に出すことなく頷く。
そして、王様は大きなため息を吐いてから語り始めた。
「実はな。私の娘。ミーシャはな。我が息子ディルクの双子の妹なのだ」
「なるほど」
「……?」
「……うん?」
何だろうか。
話し始めたなと思ったら止まってしまった。
何? 何か重要な情報を聞き逃しただろうか。
「えと、申し訳ございません。ちゃんと聞くことが出来ていなかったかもしれません。もう一度伺っても良いですか?」
「あぁ。そうだな。急な話であるし。貴殿が驚くのも分かる。もう一度しっかりと話そう」
「えぇ。お願いします」
「実はな」
「はい」
「ミーシャは」
「ミーシャさん。同席して下さっている美しい姫君ですね。はい」
「我が息子であるディルクの双子の妹なのだ」
「ディルクさん。つまりは陛下のご子息。王子様ですね。その王子様の双子の妹。はい。なるほど」
「……双子の妹なのだ」
「はい。双子の妹、なんですよね?」
俺は陛下と視線を交わし合う。
まるで時が止まったかのような静寂だ。
本当に時間が止まっているんじゃないかと思うほどに、俺も陛下も動かない。
なに……?
「もしかして……もしかして何ですが、双子が問題なのでしょうか? もしくは妹? でも、妹っていうのは可愛くて、大切で、守らなきゃいけない物で、「落ち着いて。リョウさん」うぐっ」
俺は妹という言葉に思わず走り出してしまったが、隣に座っていたフィオナちゃんにより止まる。
冷静になろう。冷静に。
妹という存在が害されるかもしれないという衝撃に自分を抑えるのが大変だった。
落ち着け。落ち着けー。小峰亮。
「失礼。妹という存在が害されるかもしれないという現実に少々自分を見失っておりました」
「そ、そうか」
「それで……問題なのは、双子という事でしょうか」
「うむ。そうなのだ」
やっぱりそうなんだ。
しかし、なぜだ? 双子だと何かマズいのだろうか。
「その……双子だと何か不都合があるのですか? 貴族的には?」
「うぅむ。いや……そうか。リョウ殿は……いや、セオストではあまり馴染みの無い文化であったか」
「あ、いえ。リョウさんはセオストの出身ではなく、ヤマトの出身だからだと思います。セオストでも双子を忌諱する考えはありますよ」
「そうか!」
「えと、フィオナちゃん。その話。本当?」
「えぇ。結構有名な話です」
「そうなんだ」
どうやら双子がどうのという話はフィオナちゃんが話してくれるらしく、俺はフィオナちゃんの説明を待つ。
見てください! 皆さん! この子! 可愛いですよね! 俺の妹なんですよ!
「集中して……!」
「うぐっ……! ごめんごめん。集中するから」
「ハァ……。まったく」
フィオナちゃんはしょうがないなぁという様にため息を吐いてから俺、王様姫様の順で見てから再び俺に視線を戻す。
そして、話を続けた。
「いつからある文化かは分からないんだけど。私たち庶民の間でも双子は禁忌なんだよ」
「何か具体的にある感じ? 悪影響みたいな」
「うーん。具体的にって言われると困っちゃうんだけど……よくは思われてないねって感じ」
「なるほど。そうなると、今、姫君も良くない状況って事かぁ。王位継承は王太子殿下がする以上、王太子殿下を排除は出来ないし。なら姫君を排除する? でも王族だし、そんな事出来ないよねって感じかな」
「中々に察しが良いな」
「多少は、そうですね……しかし、そうなると王太子殿下のフリをしていたのは、姫君の存在を隠すためで……依頼にあった服は姫君が外出して楽しむ用という事ですかね?」
「いえ。私が城の外へ出る事はありません。この服は、場内で楽しむ用ですね」
「なんと。しかし苦しくは無いのですか?」
「確かに苦しいこともありますが、お父様も、お兄様も、私の事を気にかけて下さっていますから。それだけで私は満足なんです」
少しだけ胸の内で燻る思いがあった。
彼女は妹だ。
良いのか? このままで。
こんな寂しい笑顔を浮かべているのに。本当に良いのか!? このままで!!
「リョウさん。言っておくけど、双子が災いを呼ぶのは本当だよ。具体的にどうこう、は言えないけど……確かに呪いはあるんだよ」
「まぁ、確かにな。今、ここで姫君が悲しんでいる。この様な苦しい生活を受け入れざるを得ない状況になっている。これは、確かに呪いだ」
「いや、そういう話じゃなくて! 本当に危険な事が起きるんだよ。セオストでだって、双子を双子として同じ家で過ごした家が大変な目にあったんだから!」
「具体的には?」
「え? そりゃ、大変な事だよ。大型の魔物に襲われたり」
「俺なら殺せる」
「盗賊に襲われたり!」
「俺なら守れる」
「お店が赤字になってつぶれたり!!」
「今ある金と、知名度を考えれば行き倒れになる事はない」
「結婚相手に逃げられたりー!!!」
「こんなに美しいんだ。結婚相手なんて列が出来るくらい来るさ」
「きぃぃいいー!! もう! ホントにもう!」
フィオナちゃんが色々な例を言ったが、全て何とかなる問題ばかりだった。
いや問題ですらない。
この程度の障害で、悲しんでいる妹を見捨てるなど、兄ではない!!
「えと……先ほどから何の話を」
「妹狂いの暴走を止めようとしているんです……まぁ、失敗しましたが」
「え?」
「姫君!」
「は、はい……!」
「外の世界へ行ってみたいとは思いませんか!?」
「え……」
姫君に俺の想いを訴えると、姫君は酷く驚いた様な顔で俺を見た。
陛下も同じだ。
「俺は、俺の最も好きな事は! 妹の笑顔を見る事なんです。」:{_それは俺の妹だけじゃない! あなたも、ディルク殿下の妹君なのでしょう!? であれば妹だ!」
「え? え?」
「彼は何を言っているんだ?」
「気にしないで下さい。頭がおかしいんです」
フィオナちゃんの呆れた様な声が聞こえるが、気にしている場合じゃない。余裕もない。
大切なのは姫君の……いや、妹の気持ちだ!!
そう、それ以外に大切な物などない!!
「俺は姫君を、この全身全霊をもってお守りしましょう! そして、私は遠方に家を持っています! 噂が立つ様な事も無いでしょう! どうか! 私の手を取ってください」
「……っ!」
「共に世界の美しさを見に行きましょう!!」
そう!
そうなのだ!
世界中の妹には、幸せになる義務がある!
俺は常に、そう考えているのだ。