デパルダム王国にて心の友ならぬ、魂の親友を得た俺は、湧き上がる情動のままに動き始めた。
親友の妹を救うべく、俺に出来る事を行うのだ。
「という訳で、俺はミーシャ様を外に連れ出したいと考えている訳ですが」
「願ってもないことだ」
「お兄様! 勝手に話を進めないで下さい!」
「ミーシャ。外へ出たくはないのか?」
「出たくないワケではありませんが……その、出会ったばかりの方と国を離れるというのは」
「実に聡明な方だ。ミーシャ様の仰る事は非常に正しいと思いますよ」
「流石は我が妹……」
「もう! そういう話をしているワケじゃないんですよ! 私は」
「少し落ち着け。ミーシャ」
「お兄様が興奮させているのではありませんか!」
とても淑やかな女性だと思っていたが、どうやら大変元気のある御方でもある様だ。
まぁ、妹は元気な方が良いからな。
これもまた素晴らしい光景である。
「リョウさんさ」
「うん?」
「ニコニコしながら、うんうん頷いてるけど、アレ。うちじゃ見慣れた光景だからね?」
「まぁ、みんな元気があって良いね。って話だよね? まぁ分かるよ」
「そうじゃなくて! お兄さんが勝手に暴走して妹が苦労してるって話!!」
「なるほど」
「分かった!?」
「まぁ、分かったけど。本当に嫌だったら言って欲しい。俺は妹の悲しむ顔は見たくないんだ」
「いや……それは……その」
「リョウ殿の言う通りだ。私も妹の嫌がる事はしたくない。言ってくれ。ミーシャ」
「嫌がる、という程ではないんですが……」
「「ハァ」」
フィオナちゃんとミーシャ様が顔を見合わせてからため息を吐く。
そして、それぞれの兄の服を掴みながら下に引っ張った。
座れ。という事だろう。
妹のお願いをきかない兄など居ないので、俺たちは大人しく椅子に座り二人の話を聞く。
「私は、お兄様の事が嫌いではありませんし。私を思って色々と気を配って下さる事も大変ありがたく思っています」
「でもね。やり過ぎなんだよ。後、勢い。凄すぎて、こっちが疲れちゃうの。分かる?」
「なるほど」
「分かるつもりだよ」
「ならさ。一回落ち着いて。狂人仲間が見つかったのが嬉しいのは分かるからさ。ひとまずゆっくりしながら話を聞いてくれる?」
「はい」
「リョウ殿の妹君がいう事だ。従おう」
フィオナちゃんは深い深いため息を吐いてから、ミーシャ様を見て、ペコリと頭を下げた。
ミーシャ様はあわあわとしながらフィオナちゃんの頭を上げさせようとする。
「ウチのおバカな兄が申し訳ございません」
「いえいえ。私のお兄様も、かなりご迷惑をおかけしておりますから」
フィオナちゃんとミーシャ様は互いにペコペコと頭を下げてから俺たちを見て、ため息を吐いた。
なんと、ここまで二人に迷惑をかけていたとは……!
俺はディルク殿下へと視線を送りながら頷いた。
そして、ディルク殿下も同じ気持であったようで、俺の視線に頷く。
「すまない。二人とも。私たちは少々興奮しすぎていた様だ」
「二人に迷惑をかけるつもりは無かったんだよ」
「おぉ……ディルクが、あのディルクがミーシャを前にして、まともな事を言っているとは」
「どういう意味ですか。父上」
「どうも何も、そのままの意味だろうが」
「……」
「まぁ良い。お前の暴走が抑えられるのであれば、私がここに居る理由は無いだろう。後の事はミーシャとフィオナ殿に任せるとしよう」
「はい。お父様」
「お任せください!」
「ハハハ。何と頼もしい事よ。では頼んだよ。小さな勇者たち」
陛下は優しい雰囲気で笑うと、そのまま部屋を出て行った。
そして、残された俺とディルク殿下は主導権をミーシャ様とフィオナちゃんに託し、話し合いに参加する。
「では改めて聞きたいのですが……ミーシャさんは、外に興味があるのでしょうか?」
「……正直なところ。憧れはあります。あの蒼穹の彼方へ行ってみたいとか。自分が解放出来る場所へゆきたいと」
俺とディルク殿下はミーシャ様の言葉にガタッと立ち上がろうとしたが、二人にジロッと目を向けられ、大人しく椅子に座る。
ステイステイ。という奴だ。
「それでも、外へ出たい気持ちと同じくらい怖さもあるのです」
「怖さ?」
「はい……。私は呪われた双子の子ですから」
「呪いなど……!」
「お兄様!」
「う、うむ……すまない」
俯きながら語る悲しい言葉に、ディルク殿下は一瞬反応するが、諫められ再び椅子に座る。
そして、フィオナちゃんがミーシャ様に語り掛けた。
「それに関してなのですが、正直な所。リョウさんはかなり強いので、多分そこまで心配は要らないですよ?」
「でも……」
ミーシャ様に目を向けられ、俺は落ち着いた顔のまま静かに頷く。
俺、やれます。というアピールだ。
まずは、信頼を得ることが大切だからね。
「もしも、リョウさんの人格が心配という事でしたら、そちらもおそらく心配は要らないですよ。この人。妹狂いなので、妹という属性の人が傷つく様な行為は絶対にしません」
「……それは、まぁ。お兄様と同じような方という事で何となくわかります」
ミーシャ様は、クスリと苦笑しながら俺を見やった。
そんなミーシャ様に俺は大きく頷いたのだが、ミーシャ様は笑うばかりだ。
「……そうですね。確かに。このまま私だけが駄々をこねているというのも、格好がつきませんね」
「ミーシャさん?」
「せっかくお兄様も、リョウ様も私の為にと考えて下さっておりますし。フィオナさんとも、もっとお話がしたいですから……リョウ様の提案を受け入れさせてください」
「分かりました。では、私も全力でフォローさせていただきますね!」
フィオナちゃんがミーシャ様の言葉に大きく頷き、俺たちと同じ様にミーシャ様と手を交わし合うのだった。
そして、そんな二人の美しい友情を見ていた俺とディルク殿下も彼女たちと同じ様に視線をかわし、頷き合う。
「では、任せたぞ。リョウ殿」
「えぇ。お任せください。傷一つ付けずに、夢をかなえて見せましょう」
それから。
ミーシャ様が世界中にある美しいモノに興味があるという事で、俺は改めてミーシャ様が世界を楽しめる様にするにはどうすれば良いか考えたのだが……。
「まぁ、まずは外の世界になれる必要があると思うんだ。家の中で」
「……最初はそうだろうね。私もなんとなく察してたよ」
「えと……? 家の中で、外の世界を?」
ミーシャ様は大変困惑した様子であったが、ひとまず俺は詳細を説明する事にした。
まぁ、詳細と言っても家の地下に外と同じ風景の施設を作ったというだけの話ではあるのだが……。
とりあえずそれをそのまま説明してみる。
「えっ!? 家の地下に、外と同じ風景を楽しめる施設を……? 何故、その様な事を」
「まぁ、外は危ないですからね。妹たちが危険が無いようにと」
「お兄様と同じような考えをされる方だとは思っていましたが……まさかそこまで同じ事をしているとは……いえ。お兄様でも家の地下に外の様な施設を作る事はありませんでしたから……お兄様以上……?」
「まぁ、リョウさんはかなりの異常者である事は確かですね」
「フィオナちゃん!?」
「事実じゃないですか」
そっけないフィオナちゃんによって追い打ちを受けた俺は項垂れてしまうが……こんな事で落ち込んでいる事は出来ないと自分を持ち直す。
そして、せっかくだから見て見ませんか? とミーシャ様を誘うのだった。
そう。
評価はテーブルの上で行う物ではないだろう。
実際に見て貰うのが一番だ。
まぁ、俺の評価が下がっているのは、施設の完成度がどうのではなく、地下にそんな物を作っている事自体なんだろうけど。
とりあえず細かいことを気にするのは後だ!