俺という人間の評価が様々な場所で、様々な人の間で酷い事になっているが。
細かいことを気にしてはいけない。
評価が悪いのなら上げれば良いのだ。
むしろ、底辺からスタートした方が後は上がるだけだし、良い事ばかりだろう。
うん。間違いない。
というワケで、俺は色々な評価を貰いつつも、仕事を優先するべくデパルダム王国に生まれた双子の妹姫。
ミーシャ様をシーメル王国の地下施設へとご案内することにした。
姫であるという事がバレてしまうと、色々と面倒な事になる為、適当な身分で向かう事にしたのだが……。
「じゃあ、リョウさんの新しい妹候補という事で」
「いやいや。不敬でしょ」
「今更……。凄く今更な話をするね。リョウさんは」
「えぇ!?」
「今までもジューブン不敬だったよ? 正直」
「まさか! いや、これは申し訳ございません! ミーシャ様!」
「あ、いえいえ。私は全然。何も気にしておりませんから」
「ほら。本来なら気にするような事態だけど、今回は大目に見ますね。っていう話をされていうじゃない」
「なんてこったい」
「あ、あの! 本当に。本当に気にしておりませんから! お兄様で慣れていると言いますか。お兄様よりは落ち着いていらっしゃるというか」
あわあわと必死に言葉を並べているミーシャ様に俺は大変申し訳ない気持ちになった。
心の底から謝罪をしなければと、とりあえず土下座をする事にする。
このまま首を刎ねられても文句はないというポーズである。
「りょ、リョウ様ー!? お顔を上げて下さいー! リョウ様―!!」
というワケで。
ミーシャ様へと命がけの謝罪を行ってから、俺はミーシャ様、フィオナちゃんと共に、また街道を逆走する事になった。
無論、ミーシャ様には姫君と分からない様にお贈りした庶民の服で庶民だと思わせている。
まぁ、溢れ出るオーラは一切隠せていないが。
その辺りは仕方がないだろう。
俺が今までに出会ってきた方々全てがそうであったが、王族というのは輝いているモノなのだ。
「わぁ……ここが外の世界」
「でも、良かったんですか? ミーシャさん。転移で移動するっていう方法もありましたけど」
「そうですね。確かに。その方が確実だとは思うのですが……せっかくですから、私も自分の足で歩きたいと思いまして」
「まぁ……ミーシャさんがそう仰るのなら良いですけど」
「まぁまぁ。良いじゃないの。ノンビリした旅にしようじゃないか」
フィオナちゃんのどこか呆れた様な声に、俺はまぁまぁと声を掛ける。
だが、フィオナちゃんは俺の方にキッと強い視線を向けると、小声で言葉をぶつけて来た。
「まぁまぁ。じゃないよ! 何かあったらどうするのさ!」
「何も無いでしょ」
「分かんないじゃない! 魔物だって、盗賊だって突然やってくるんだよ!?」
「だとしても、基本的には俺が解決出来るし。出来なくてもジーナちゃんを呼べば解決。何も問題は無いね」
「うぅ~! そうやって、いっつも、いっつも」
フィオナちゃんはプンプンと怒りながら足を鳴らして歩く。
そんな事をしているモノだから、ミーシャ様がどこか心配そうな顔でこちらを見てきてしまった。
「あの……やっぱりよくない我儘でしたでしょうか」
「いえいえ。その様な事は」
「でも、フィオナさんが……」
「まぁ、フィオナちゃんが怒っているのは、ミーシャ様に対してというよりは、俺に対してだと思いますので」
「そうなのですか?」
「俺がいい加減な人間ですからね。しっかり者のフィオナちゃんは俺のいい加減な所が気になるんですよ」
「あら……」
ミーシャ様は驚いたとでもいう様に目を見開きながら声を漏らす。
そんなミーシャ様に苦笑しながら、良い子なんですよと言葉を返したのだが。
フィオナちゃんにドスっと拳をぶつけられてしまった。
恥ずかしかったのだろうか。
「どうしたの。フィオナちゃん」
「別に。何でもない」
「そう? なら良いけど。フィオナちゃんが色々気にしてるみたいだったからさ。何かあるなら話を聞きますよって感じなんだけどね?」
「……別に」
何かありますよ。と全力で言っているフィオナちゃんに、俺はどうした物かと一瞬考え。
良い方法も思いつかなかった為、とりあえず核心を突いてみる事にした。
「やっぱり気になる? いきなり外に出たから」
「……気になる」
「だろうねぇ。まぁ、最初は慣らす為に家の地下って話だったけど、いきなり外だもんねぇ。フィオナちゃんも不安になっちゃったか」
「……本当に、大丈夫なの?」
「さて、どうかな」
「どうかなって」
俺は少し後ろをゆっくりと歩いているミーシャ様を見ながら、ふむと考える。
双子の呪いにしても。
デパルダム王国の箱入りお姫様を突然外に連れ出した事にしても。
あまり良くは無いだろう。
よくは無いだろうが……ミーシャ様は外に行けると分かって、気持ちが抑えられない様子だったのだ。
我慢など出来ないと全身で感情を爆発させていた。
そんなミーシャ様にやっぱり家の地下で数日、数か月過ごして下さいとは言えないだろう。
だから。
「……選んだのは、ミーシャ様だ。俺はその意思を尊重したい」
「リョウさんはさ。いつもそうだよね」
「フィオナちゃん?」
「強くって。誰かの願いを簡単に叶えちゃう」
「……」
「そういうのを見てるとさ。私って何だろうってよく思うんだよ」
どこか遠くを見ながら呟くフィオナちゃんに、俺はふむと声を漏らしながら考え……言葉を向けた。
「さて。なんだろうね。俺にも分からないかな」
「ちょっとー。そういう時は、私の良さを語ってくれるもんじゃないの?」
「それをお望みならそうしますけどね。でも、フィオナちゃんが欲しいのはそういう表面的な言葉じゃないでしょ」
「まぁ……そうだね。なんか、見透かされているみたいで嫌だけど」
「妹の事は何でも分かるのが兄という物ですよ。お嬢さん」
「へー。キモチワル」
「グサッ」
あまりにも鋭い言葉が飛んできてしまった為、俺は胸を押さえながらうめき声と共によろめいた。
おそらくは妹から言われたくない言葉ナンバーワンであっただろうソレは、十分な殺意と鋭さをもって、俺の体を貫くのだった。
「ハァー。じゃあ、何でも分かるお兄様に質問なんですけど。私の良い所ってなぁーに?」
「そりゃいっぱいあるけどね」
「そういうのは良いから。具体的に言って。具体的に」
「ふむ。なら……一番は。まぁ、強い事じゃないかな?」
「はいー?」
何バカ言ってんだコイツ。
とでも言う様な目を向けて来るフィオナちゃんに俺はクスリと笑う。
「ほら。言っちゃあなんだけど。セオストでそんな目を俺に向けてくる子は、そう居ないよ?」
「……でも、それは私がリョウさんに甘えてるからじゃないの?」
「いやいや。それだけじゃない。それはフィオナちゃんが強いから出来る事だよ」
「どういう意味さ」
「俺に甘えている人はさ。俺が居なくならない様に神経をとがらせてるんだけど……フィオナちゃんは俺が居なくなっても、何とも思わないでしょ?」
「何とも思わないワケ無いじゃん。色々思うよ。特にサクラちゃんとかココちゃんの件ね」
「ふふっ」
「なーにを笑ってるのさ」
「いや、本当に強いなと思って。笑ってるだけ」
「ハァー?」
「フィオナちゃんは困難な状況にもくじけない覚悟がある。強さがある。だから、俺は君を信頼しているんだ。桜達を任せられるってね」
「意味が分からないけど」
「今は、ね。いつか……うん。もしかしたら、そんな未来は無いかもしれないけど。いつか分かる日が来るよ。いつかね」
俺はどこか納得できないという様な顔をしているフィオナちゃんに笑いかけ、言葉を向けるのだった。