異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第389話『フィオナちゃんと二人旅(極秘依頼)21』

 フィオナちゃんの中に生まれていたわだかまりは……まぁ、おそらく全然解消されていないだろうけど。

 ひとまず依頼に集中する事が出来るくらいには、自分を取り戻している様だった。

 良い事である。

 

 という訳で、ノンビリとピクニック気分で街道を進み、今日一日でそれなりに歩いて、まぁ、それなりに進んだ。

 

「はぁー。疲れました。もう足が動きません……!」

「お疲れ様です」

「はい……! でも、思っていたよりも旅って大変なんですね」

「やっぱり転移にしますか? ミーシャさん」

「いえいえ! この程度の事で甘える事は出来ません! 頑張ります!」

 

 むん! と気合を入れているミーシャ様に苦笑しながら、俺はひとまずお風呂の準備をする事にした。

 こんな事もあろうかと!

 準備しておいた、それなりに大きな移動用の風呂である。

 

 それなりに高かったが、まぁ大した出費じゃない。

 今回の依頼料を考えれば、大量のおつりが返ってくるくらいだ。

 

「じゃあ、フィオナちゃん。後はお願いね。俺は外の事やってるから」

「はいはい。じゃあミーシャさん。お風呂に入りましょうか」

「え? お風呂? ハッ! わかりました! 本で見ました。湖で水浴びという物ですね! 私もやってみたいと思っていたんです!」

「そんなリスクのある方法で入浴はしません」

「え? そうなのですか?」

「そう。リョウさんは頭のおかしい高位冒険者ですからね」

「頭がおかしいは余計だよ」

 

 俺はフィオナちゃんに注意をしつつ、テントを立て始めた。

 こちらは……まぁ、いつも通りのサイズだ。

 

 本当はもっと大きなテントもあるのだけれど……。

 たぶん、ミーシャ様は旅を楽しみたいだろうし。

 そうなったら広いテントよりも、フィオナちゃんと隣で並んで眠る方が楽しいだろう。

 

 まぁ、もしも狭いからどうにかして欲しいみたいな要望があれば、その時大きくすれば良いしな。

 ひとまずは冒険者らしい旅を楽しんで貰おうと思う。

 

 風呂を出している時点で、冒険者らしい旅も何も無いだろう。と言えば、まぁその通りな訳だが。

 

「さて……夕食はどうするかな」

 

 俺はテントを作り終わって、たき火の準備をしながら鍋を取り出し……考える。

 お姫様はどういう料理を食べるのだろうか。という思考だ。

 

「……まぁ、とりあえずは、肉か」

 

 魔物の肉は貴重だと言っていたし。

 とりあえず肉があって困ることは無いだろうと思う。

 

 しかし、問題は他の食材だ。

 肉だけで調理というワケには流石にいかないだろうし……うーん。

 

「何、悩んでるの? リョウさん」

「あぁ。夕ご飯をね。どうするかと覆って」

「それで肉を積み上げて唸ってたの?」

「そう。何はともあれ肉だなと思って」

「ハァー。リョウさんって、突然アホの人になるよね。まぁ、良いけど」

 

 はいはい。どいてどいて。と俺を火の前からどかしたフィオナちゃんはサクサクと夕ご飯の準備を始める。

 その手際は本当に素晴らしく、何の迷いもなく完璧に進められていった。

 

「あ、リョウ様。お風呂いただきました」

「どうでしたか? ミーシャ様」

「はい。とても良いお風呂でした。普段のお風呂とそれほど変わりがなく、旅先でこの様なお風呂に入る事も出来るのだなと驚きました」

「喜んでもらえて良かったです。今、フィオナちゃんが夕ご飯の準備をしていますので……」

「あら。何から何まで申し訳ございません。私も何かお手伝いを……」

「いえいえ。ミーシャ様はお客様ですから。それよりも……こちらへ」

 

 俺はミーシャ様に用意しておいた綺麗で柔らかい椅子に座って貰い、一言断ってから髪を弄らせていただく。

 

「濡れたまま寝ると良くないですからね。それに、長い髪は丁寧に手入れをしないと、宝石の様な髪が輝きを失ってしまいますから」

「あ……あぁ、ありがとうございます」

 

 ミーシャ様は恐縮した様子でカチコチに固まっていた。

 やっぱり異性に髪を触られるのは、気分が悪いのだろうか。

 

「ミーシャ様? 俺が髪を触る事に不快感があれば……」

「いえ! 不快感などはありません! むしろ……自分で出来なくて申し訳ないなぁ……と。フィオナさんは一人で行ってましたのに」

「私は慣れてますからね。それに、旅ではあまり手入れをしませんから」

「そうなのですか? 旅では簡易に済ませる事がマナーという事でしょうか」

「そういう事も無いですよ。私の友達の魔術師の子は、結構丁寧に時間を掛けて手入れをしてますし」

 

 そうなんだ。

 と思いながら俺はフィオナちゃんの話を聞いていた。

 

 フィオナちゃんの友達の魔術師というと……やはりリリィちゃんだろうか。

 

「言っておくけど。リリィの話じゃないからね」

「あ、そうなんだ」

「そう。リリィも流石に外じゃあ軽くしかやらないよ。私と一緒。外じゃ何があるか分からないしさ」

「まぁ、それはそうだね」

 

 フィオナちゃんはフッと笑って、再び話を続ける。

 

「セオストの冒険者にも、貴族の出身っていう人は居るんだよ。で、そういう人たちの冒険者仕事っていうのは、まぁ護衛とかがメインになるからさ」

「それなりに余裕が出来るって事かな」

「そういう事だね」

 

「ですが、そう考えると、私が今、リョウ様のお手を借りている状況は良くないのでは?」

「良くないと言えば良くないですけど。正直ここで何か怖い物に襲われるっていう事は無いですからね。何かあってもリョウさんが凄い速さで気づきますし。ね? リョウさん」

「あぁ。今、周囲に危険な物は何も居ないよ」

「まぁ! そんな事まで分かるのですか!?」

「この程度は容易く」

 

「ハァー。嫌味っぽい」

「別にそういう意図で言った訳じゃないんだけど……まぁ、この辺りなら特に心配はしなくても大丈夫ですよ。余裕をもって十分に迎撃可能ですから」

「はい……! 安心しました」

 

 ふわりと微笑むミーシャ様に、俺はうんと頷いて、既にいい匂いをさせ始めているフィオナちゃんの夕食へと意識を向けた。

 そして、ミーシャ様にもそれを知らせる。

 

「ミーシャ様。どうやら既に料理が出来始めている様ですよ」

「まぁ! いい匂いがしていると思っていました。なんて、そんな事を言っていては、食いしん坊みたいで恥ずかしいのですが」

「では、俺も恥ずかしい人間になってしまいますね」

「まぁ。ではリョウ様も?」

「はい。すっかりお腹が減ってまして。どの様な味なのかとワクワクが止まりません」

「それは素敵ですね」

 

 子供の様な笑顔で楽しそうにはしゃぐミーシャ様に笑い返し、俺はある程度終わったと、ミーシャ様に告げて隣に座る。

 

 それから。

 準備が出来たというフィオナちゃんから夕食のスープとパンを受け取って、ミーシャ様に手渡すのだった。

 

「はい。お待たせしました。腹ペコさん達。今日のお夕飯ですよ」

「ありがとうございます」

 

 ミーシャ様は嬉しそうに夕食を受け取り、ニコニコとしながら俺達を見ていた。

 

「うん? どうしました?」

「はい。皆さまの準備を待っております」

「いや、先に食べてしまって良いですよ。冷めてしまいますし」

「それでも。ご一緒したいですから」

「なるほど……わかりました。では、サクサクと用意しちゃいますね」

 

 フィオナちゃんはミーシャ様の言葉にクスリと笑って、俺の分とフィオナちゃんの分を用意する。

 本来なら、軽く片付けも先にやるのだが……まぁ、今日は先にご飯だ。

 

 というワケで、俺もフィオナちゃんも自分の食べる分を用意し、楽しそうなミーシャ様と共にご飯を食べるのだった。

 いよいよ、遠足みたいな雰囲気があるが……一応依頼である。

 

 俺は和やかな雰囲気の中でも、一応周囲の気配を探り続けるのだった。

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