異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第392話『お姫様の旅路(新しい世界)2』

 ゴミを掃除した次の日の朝。

 俺は一応明るくなった場所で周囲を見渡した。

 地面は少し赤く汚れていたが、気になるほどではない。

 

 どうやら夜の間に小型の魔物たちが綺麗に掃除をしてくれたようだ。

 こういう時に魔物は便利だなと思う。

 

 まぁ、汚い物をフィオナちゃんやミーシャ様に見せるワケにはいかないし。

 俺だけで処理出来て良かった。という物である。

 

「さて。今日の朝食はどうするかな……」

 

 昨日はサンドイチ。その前はスープと、俺たちの冒険飯定番セットみたいになっているが。

 そんな状況で今日どうするか。これが問題である。

 

 いつもなら、またスープを飲むか……もしくは肉を焼いて、そのまま食べる。なんていう適当なメニューを作ったりもするのだけれど。

 今回はお姫様も一緒であるし、そういう適当さは駄目だろう。

 しかも、ミーシャ様はその人生の殆どを城の中で過ごされている御方だ。

 俺が作った、手抜き料理などを出して良いはずがない。

 

 ハズが無い……が。

 逆に、だ。

 逆に……ただ肉を焼いただけというメニューを食べたことは無いだろうし。

 新鮮な気持ちになる可能性もあるのではないだろうか。

 

 分からないけど。

 そんな訳ないだろと言われれば、確かにその通りだと思うのだけれど。

 試してみる前から、違うというのも……また違う様な気がする。

 

「……試してみるか。肉を焼いただけ料理」

「やめた方が良いんじゃない?」

「うおっ、フィオナちゃん。もう起きたんだ?」

「うん。一昨日はあんまり眠れなかったけど、昨日は結構ぐっすり眠れたからね」

「なるほど」

「それで? 肉を焼いただけの料理とは言えない何かをミーシャさんに出すって話?」

「うん。逆に面白いんじゃないかって思ったんだけど」

「まぁ、気持ちは分かるけどさ。多分、やめた方が良いと思うよ?」

「そう?」

 

「どうせリョウさんの事だから。高級で丁寧な料理しか食べたことが無いであろうミーシャさんに、野性味たっぷりの野蛮なメニューは新鮮なんじゃないか。とか考えたんだろうけどさ」

「……よく、分かりますね」

「分かるよ。何だかんだリョウさんって、単純だし」

「否定はできないね」

「そうでしょ? って、それは良いよ。それで、さ。リョウさん的には、それは新鮮だーって感じるかもしれないんだけど。ミーシャさんって、多分繊細な味ばっかり食べてるから、大雑把な味はよくわ分からないと思うんだよね」

「……なるほど?」

 

「だから、そのまま庶民の料理……というか、食べ物を出しても意味は無いんだよ。やるならアレンジしないと駄目ってこと」

「はい」

 

「じゃあ、私が見本を見せてあげましょう」

 

 フィオナちゃんは、ふふんと笑いながらいつもの様に調理器具を用意して、調理を始めるのだった。

 

 

 それから。

 それなりに時間をかけてフィオナちゃんが作った料理は、見た目だけ肉をただ焼いた料理にそっくりな。

 まったく別物の料理であった。

 

「はい。完成」

「おぉ……見た目は殆ど同じなのが凄い。手順はまるで違ったのに」

「当然だよ。さっきリョウさんが考えてたけど、やっぱり未知の料理っていうのは、大事だと思うワケ。私も」

「ふむふむ」

「だから、この丸焼きにしている肉! という見た目はそのままに、味をしみ込ませて、さらに肉をとことんまで柔らかくして、食べた時の感覚も特上の状態に仕上げたんだよ。これで、見た目だけ野蛮な料理だけど、中身は手の込んだ料理が完成したってワケだ」

「なるほどなぁ」

 

 そして、フィオナちゃんは料理をそのままに、テントの方へと向かってミーシャ様を起こしに行った。

 

 今日は昨日とは違い、目を覚ましているらしいミーシャ様は、焼いただけの肉……の見た目をした別料理を見て、驚きの声を上げた。

 

「まぁ! これは、本で見たことがあります! 冒険者の方が食べる料理ですね」

「めんどくさがりの人だけですけどね。こんな料理を食べるのは」

 

 フィオナちゃんはやや呆れた様な顔で俺の方を見ながらため息と共にそんな事を言った。

 俺はそんなフィオナちゃんの言葉に、何も言い返すことはないと静かに頷き、そしてミーシャ様と共に見た目だけ、焼いた肉を食べるのだった。

 味は言うまでもない。

 

 どう考えても、いつも俺が食べている焼いただけの肉とは違い、まるでどこかの店で食べる様な高級料理の様であった。

 流石はフィオナちゃん。

 フィオナちゃんサマサマである。

 

 

 そして、朝食を食べ終わってからは、またのんびりと旅を再開し。

 夜となればテントで寝て、朝起きて、再び旅をする。

 

 そんな生活をそれなりに続けて……俺たちはようやく長い旅路の果てに、スタンロイツ帝国へとたどり着くのだった。

 長い。本当に長い旅であった。

 

「ここが、スタンロイツ帝国ですね」

「おぉ……ここが、東の果てにあるというスタンロイツ帝国!」

 

 ミーシャ様がとても感動しながら大きな声を上げた事で、周囲の者たちからチラチラと見られてしまう。

 恥ずかしいという思いもあるが、ミーシャ様の存在がバレるとマズいため、俺はミーシャ様が周囲から見えないようにと隠しながら、ミーシャ様に話しかけた。

 

「では、スタンロイツ帝国でちょっと宿屋に泊まっていきますか……もしうまく出来ていれば、俺の家があるので、そこに泊まるというのもアリですね」

「そういえば複数の家があると仰ってましたものね。その家がスタンロイツ帝国にもあるのですね」

「まぁ、まだ建築途中なんですけどね……どの程度完成しているか。俺も把握はしてなくて」

「そうですか。では、楽しみですね」

 

 ふわりとミーシャ様は微笑んで、壁の向こうへと視線を向けた。

 俺はフィオナちゃんと視線を交わしながら、そうですね。と頷き、スタンロイツ帝国へ入るための手続きを終わらせるのだった。

 

 

 そして、手続きも無事に終わり、スタンロイツ帝国へと入った俺たちは、既に一階部分が完成しているスタンロイツ帝国に建てる予定の家の前に立っていた。

 

「さて。どうしたものかな」

「入らないのですか?」

「入りたいのは山々なんですけど……ちょっと悩ましい所なんですよね」

「……?」

 

 ミーシャ様はよく分からないとでも言うように首を傾げていた。

 しかし、ここで説明する事も出来ないため、俺はミーシャ様の事をフィオナちゃんに託して、先にスタンロイツ帝国の家に入る事にした。

 

「……もしもしー? 誰かいるかい?」

『はぁーい。どなたですかー?』

「あぁ、すまない。急に来て」

「え? あっ! リョウさん! 依頼に行ったんじゃなかったんですかぁー?」

「行ったよ。それで今、ちょうどこっちに帰ってきててね。寄ったんだ」

「そうなんですかぁー。それはそれは。ドロシー姉さんも喜びますよぉー」

「あぁ。うん。それは嬉しいんだけど。ドロシーさんにちょっと話があってさ」

「お話?」

「うん。結構大事な話」

「はい! じゃあ、姉さんを呼んできますね!」

 

 バッと、凄い勢いで家の中に飛び込んでいったドロシーさんの妹さんを見送りつつ、俺は何と説明するかしばし考えていた。

 そして、ドロシーさんが来てから、頭の中でまとめていた話をドロシーさんに伝える。

 

「リョウさん。お久しぶりですね」

「えぇ。本当に。急に来ちゃって申し訳ないです」

「いえ。ここはリョウさんのお家なのですから。自由に来てください。ずっと居て下さるのが、一番嬉しいのですけれど」

「はは。そうですね。それはその内」

「それで、私に用事というのは……」

「実は、今、お忍びでとある国のお姫様と一緒に旅をしているんだけれど……」

「なるほど?」

 

 ドロシーさんは笑顔のまま小さく頷いて、俺の話を聞いてくれるのだった。

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