異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第401話『お姫様の旅路(新しい世界)11』

 パメラちゃんと共に夕食の準備を終わらせて、地下へと運んだ俺たちであったが、まだ皆は風呂から出てきていない様で、少しばかり待つことになってしまう。

 とは言ってもまぁ、正確な時間は分からないから新しく出来る事もないわけなのだが。

 さて、どうしたものかな。

 

「……お兄さんは、お風呂に入らないんですか?」

「俺も入るよ。ただ、みんなが出てきた後にね」

「……? 別に今、入っても良いのでは?」

「そういうワケにはいかないでしょ。さっきも言ったけど異性同士でお風呂って言うのは」

「あ、いえ。そうではなく……地下のお風呂は男女で別れております」

「え」

「はい。男女別々です」

 

 そう……だったのか。

 いや、まぁどっちにしても夕食の準備はしたかったから別に良いけど。

 しかし、そうだと判明したのなら、いつまでもここに居る事は無いだろう。

 

「なら、俺も風呂に入ってくるよ」

「はい。分かりました」

「うん。あ、そうそう、みんなが来たら先に食べててって言っておいて」

「分かりました」

 

 俺はパメラちゃんに後の事をお願いし、風呂へ向かう事にする。

 何だかんだかなり疲れているし。ゆっくりと体を休める事にしよう。

 

 そして、俺は代わりの服とかを用意しつつお風呂へ向かおうとした……が。

 

「そういえば、お兄さん。着替えは」

「旅の荷物の中に入ってるよ」

「それなら私が取ってきましょうか?」

「え? いや、悪いし。自分で取りに行くよ」

「いえ。今月の支払いがありますから」

 

 そういえばそんな話もあったなぁ、と俺は思い出しながら、ふむと口にする。

 そして、まぁこの程度なら良いかと口を開いた。

 

「じゃあお願いしようかな」

「はい。では今月はお兄さんの入浴をお手伝いします」

「よろしくね」

 

 まぁまぁ気楽に頷いてからパメラちゃんと別れ、俺はお風呂があるという場所に向かったのだが。

 森の中にあるソレはまぁ、温泉であった。

 

 いや、別に温泉が湧き出ているというワケではなく……その、なんというかな。見た目の話だ。

 見た目が完全に温泉なのだ。

 木造建築の温泉宿という様な佇まいをしていた。

 

「凄いな」

 

 俺は独り言を呟きながら入口となっている木造の門を抜け、男女の入口が別れている事を確認して男の方へと入ってゆく。

 が、一応中を覗く前に声をかけ、さらに中へ踏み込んでから大量にある着替えの置き場を確認し、服とか諸々がない事も確認した。

 

 これだけ確認すれば良いだろう。というだけ確認し、男湯に人が居ない事を確認し、一応お湯があるであろう浴槽の方へ続く扉を軽く開き、今から中に入るよ! と声をかけた。

 一応ね。

 もしかしたら、服を別の場所に置いて……という可能性もゼロではないから。

 

 そして、徹底的に様々な場所を確認し、何もないことを確認してから俺は深く息を吐いて服を脱ぐ。

 脱衣所にある適当な籠に脱いだ服を入れて……着替えの事を一瞬考えたが、まぁパメラちゃんが持ってきてくれるというし。

 ここで俺が自分で用意する行為は信頼に反する行為だろうと考え、何もしないまま風呂に向かう。

 

 中に入ると……もう完全に温泉そのもので、少しだけデコボコした岩に囲まれた中にお湯が入っており、湯気が空気を白く染めている。

 入って右側には体を洗う場所もあり、そのすぐ近くには体を洗う用のタオルやら何やらも置いてあった。

 髭剃り用のナイフと薬液もあるというのは何というか……凄いな。という感じだ。

 貴族の風呂にしかこんな物無いだろうに。

 

 というか、男の事情も知っているのは、やはりそういう仕事をしていたからという事なのか。

 もしくは単純に知識が広かったのか。

 まぁ、それはどちらでも良いか。

 

 俺はタオルを一つ借りて……これまた高価そうな洗髪剤を手に取り、お湯で軽く髪を濡らしてから髪を洗うべく洗髪剤を……。

 

 ガラガラ

 

 何か、分からないが……入口の方から誰かが入ってきた気配を感じて俺はそちらへと視線を向ける。

 すると、そこには……おそらく大きなシャツだけしか着ていないパメラちゃんが立っていた。

 

「えと……? どうしたのかな?」

「はい。入浴のお手伝いに来ました」

「うん?」

 

 意味が分からない。

 意味は分からないが、パメラちゃんは俺の居る方にズンズン来ると俺の様子を見ながら、ふむと頷いた。

 何が理解できたのだろうか。

 

「これから洗髪でしょうか」

「まぁ……そうだね」

「では私が」

「……何故?」

「入浴のお手伝いをすると言いました」

 

 パメラちゃんはそう言うと俺が持っていた洗髪剤を奪い取り、自らの手に出して座っている俺の後ろに立った。

 ある程度身長差があるからか、パメラちゃんは座っている俺の頭がちょうど良い高さにあるらしく、そのまま無理のない体勢で洗い始める。

 

「いや、パメラちゃん?」

「どうしたんですか?」

「髪くらいは自分で洗えるのだけれど」

「それは分かります。お兄さんは大人ですからね」

「うん」

「ですが、これは今月のお支払いですから。はい。大人しくしてください。前向いて」

「う、うん……分かったよ」

 

 この状況ではどうしようもないか、と俺は大人しく前を向き、パメラちゃんの小さな手が頭を洗うのをゆっくりと待っていた。

 しかし、手のサイズが非常に小さい為、やはりというか洗うのには時間が掛かっているようだ。

 まぁ、それはそうか。という所ではあるが。

 

「……」

 

 中々に気持ちが良いのは確かだ。

 こういう経験はあまりないから、中々にうれしくもあるなぁ。

 実に良い。

 

「……あの」

「うん?」

「その……どうですか?」

「とても気持ち良いよ」

「そうなの?」

「あぁ。可愛い妹に頭を洗ってもらっているんだ。これ以上に嬉しい事は無いだろうさ」

 

 俺はビクビクとしていたパメラちゃんに笑いかけて、パメラちゃんの仕事がこれ以上ないほどの成果であった事を伝える。

 それが嬉しかったのか。

 パメラちゃんは僅かに笑みを落としながら俺の髪を柔らかい手でかき回した。

 

「……ありがとう」

「うん」

 

 そして、髪を洗い終わってから体も洗おうとしたパメラちゃんを止めて、逆にパメラちゃんの体を洗おうかと提案する。

 その提案にパメラちゃんは驚いた様な顔をしていたが、そういう目的で俺が触ろうとしているのだと勘違いし、了承してくれた。

 

 まぁ、そういった気持ちは欠片も無いんですけどね。

 

「じゃあ俺が体を洗っている間に準備をしてきてね」

「う、うん……! 分かった……!」

「まぁ、ゆっくりで良いから」

 

 酷く緊張しているパメラちゃんに苦笑しながら俺はさっさと体を洗う。

 とは言っても適当には洗わず徹底的に綺麗にはするが……しかし、良い物買ってるなぁ。

 コレ、セオストとかシーメル王国の家にも置くかぁ。

 

 と、俺は液体石鹸の瓶を見ながら考えるのだった。

 

 そして、そうこうしている間にパメラちゃんの準備も終わったらしく、タオルで体を隠しながら戻ってきた。

 そんなパメラちゃんを迎え入れて、俺はまずパメラちゃんの髪から洗い始めたのだが……。

 

「思っていたよりも、手入れがされているね」

「まぁ……うん。ドロシー姉さんが髪は女の命だから大切に扱えって」

「なるほど。じゃあ、丁寧に洗わないとね」

 

 俺はかつて桜にやっていた様に。

 そして、つい先日フィオナちゃんにやった様にパメラちゃんの長く綺麗な髪を洗い始めるのだった。

 洗い場もかなり温かいし、風邪を引くことも無さそうだから、とことん丁寧にやる事にしよう。

 

「少し長くなるから、目を閉じて寄りかかってね」

「……うん」

 

 パメラちゃんは緊張しているのか、体を少し硬くしたままおずおずと寄りかかるのだった。

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